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第68話

 猿ぐつわをしている時のようなくぐもった声を出しながら九尾猫は体を横方向に一回転させ、クオリネの剣を口から放す。


 回転力を活かしながら行った事により、クオリネは後方へと吹き飛ばされてしまった。


 だが彼女を動揺させるだけの決定打にはならず、クオリネは地に足を着けた瞬間にそのまま蹴り上げて前方へと高速で駆け出す。


 猛獣が自分目掛けて一目散に迫って来るかのような迫力があった。


 このままでは再び高速斬撃の嵐が九尾猫を襲いそうだが、その結末を素直に受け入れるつもりは九尾猫には毛頭無かった。


 何の為に一旦クオリネを遠ざけたのか。それはこれから行う攻撃の準備時間を作る為であった。


 クオリネの斬撃に対する防御を強いられていた九尾猫は、反撃したくてもできなかった状況であったのだが、今は違う。


「……」


 九尾猫が何かを仕掛けて来るであろう事は、クオリネには筒抜けだった。しかしクオリネはそんな事意に介さず、無言で九尾猫へと迫る。


 そしてクオリネの剣による斬撃が九尾猫に命中する、まさにその瞬間、九尾猫は瞬間移動したのかと思う速度で真上へと高く跳躍した。


 普通ならば彼女がどこに消えたのかとキョロキョロして探しそうな場面であるが、そこはさすがのクオリネだ。九尾猫が真上に跳び上がったと同時に顔をその方向へと向け、位置は追えている事を無言でアピールしてくる。


「はああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 自身に気合いを注入した九尾猫は九つの尻尾の先端に、線香花火が消える直前かのような小さな丸い火を灯す。そしてそれらは尻尾から放たれ空中で巨大な炎へと変化した。


 その見た目はまるで灼熱の炎で覆われた巨大な隕石。広範囲を一瞬かつ容易に木っ端微塵に吹き飛ばすエネルギーが集約されている事は一目瞭然である。


 先ほどまではクオリネの作った氷の地面、壁、天井の影響で戦場内部が冷気で満たされていたが、九尾猫の放ったこの大技によって若干気温が上がりつつあった。


 夜の火事現場を間近で見ている時のような明るい橙色の光が周囲を照らし、太陽が九つあるかのような光景は壮観と言わざるを得ないだろう。


「驚きだね。原異生物って、お爺ちゃん以外は大した事無いと思ってたけど……そんな事無いみたい。あなた凄いよ、本当に」


 視界に広がる九尾猫と巨大な炎隕石を見たクオリネは、剣に相当量の來冥力を集約させた。その結果、クオリネの剣が思わず目を瞑りたくなる程に青白く発光し、更に彼女を中心として猛吹雪が発生した。


 彼女の服や髪が強風で靡き、氷雪と冷気が容赦なく体を痛めつける。一般人ならばまず満足に動く事ができず、立っている事すら厳しい環境だろう。


 だがクオリネは極寒であればあるほど強く戦える來冥者だ。氷雪や冷気といった概念はエネルギー源と同等であり、この地獄のような世界こそクオリネにとっては有利な環境と言える。


 上は橙色の光と灼熱の世界、下は青白い光と極寒の世界――そんな相反する性質を持つ二つの世界が、見事に共存していた。


「クオリネ! これであなたを、焼きつくすッ!」


 九尾猫は咆哮と共に九つの炎隕石全てをクオリネに向けて発射した。真下以外のほぼ全方向からクオリネに向かっていくそれは、近付くだけで塵になってしまいそうだ。


「……」


 ほぼ全方向から脅威が迫ってくる中、クオリネはスッと静かに目を閉じた。それは精神統一のようなものであり、彼女を極限の集中状態にさせる。


 やがて後少しで彼女の全身に九尾猫の放った炎の塊が命中する――そんなタイミングでクオリネは目を見開いてから剣の切っ先を真下に向けて一気に突き刺し、その莫大な來冥力で構成された冷気を放出した。

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