第62話
「本当に聞きたい? ゲーテさんが今どこに居るのか。あ、ちなみにだけど。ゲーテさんを護衛する担当はレイクネスで、彼に何かあったらいつでも仕事ができるように見守っているんだろうっていう予想は当たってるよ。ついでに話すとシャックスのボスは別世界に転移済みだよ」
クオリネの言葉に三人はようやく今の状況を正しく認識できた。
時系列としてはこうだ。
まずシャックスの現ボスが密かにこの世界で界庭羅船のクオリネとレイクネスに接触した。そしてそろそろ引退時だと考えていた彼は、次期ボスであるシャックスナンバー2のゲーテの為に、蓄えていた金を放出して彼の護衛を依頼したのだ。
同時刻、シャックスを追ってセレーナまで来ていたWPUの人間が、そのシーンを目撃する。依頼シーンを目撃した事でシャックスの案件は界庭羅船案件へと切り替わった事を確信したWPUの人間は、今回の件をシュレフォルンたちに引き継ぐ。
界庭羅船の情報を得たシュレフォルンたちは、早速彼らの動向調査の為にこの世界へとやって来た。この時自分たちの戦力を誤認させる為、そして司の身の安全を考えてテトラだけは彼が受けているリバーシ加入試験へと飛び入り参加したのだ。同じくWPUの人間であるエンペル・ギア総帥に無理を言って。
そして共有された情報通り、実際こうしてクオリネには会えた訳だが、今回ゲーテの護衛担当を引き受けたレイクネスと依頼人であるシャックスのボスの姿は無かった。
クオリネの話をそのまま信じるのであれば、ボスの方はどこか別の世界へと転移し、レイクネスは仕事をこなす為にゲーテの護衛へと向かった訳だ。
確かに情報共有を受けてからそれなりに時間は経過し、今やすっかり夜だ。いつまでもこの場に留まっている方がおかしいだろう。
「それにしてもまさかWPUの人間と鉢合わせするなんてね。あなたたちの事を相手にするのは簡単だけど、面倒な事に変わりは無いし。本当……セレーナに来たついでに來冥漂渦の調査でもしようかなって思って留まったのがダメだったんだね」
「 (來冥漂渦の調査……? まさか界庭羅船も私と同じく、様々な世界を調査して異世界に関する知識を深めようとしているという事でしょうか? 敵とは言えちょっと語り合いたい気持ちが湧いてしまいますね) 」
クオリネの発言に氷雨は不本意ながらもどこか親近感を覚えた。
この数年後、未だに謎に満ちたレベルゼロ環境のモデルNをベースとして人工異世界創世を行っている転生協会に目を付けた界庭羅船は、エマを送り付ける訳だ。どうやら彼女たちが異世界について研究のような事を行っている話は本当のようだ。
意外な部分で自身との共通点を見つけた氷雨は、つい研究者としての血が騒いで界庭羅船がどこまで研究・調査を進められているか聞きたかったが、シュレフォルンの言葉で今はそんな時では無いと現実に引き戻される。
「はぁー。おいコラ、ガキ。もったいぶらないで言え。ゲーテとレイクネスはどこに居るんだ。さすがに同じ質問を何回も口にするのはこっちも飽きるんだよ」
イライラが勝って来たのか、シュレフォルンの口調が変わる。
「ガキ……? 私とあなたって二、三歳くらいしか違わないと思うんだけど。まぁ別に良いや。それなら教えてあげるよ。……二人が居るのはね……」
ようやく聞ける彼らの居場所。必然、シュレフォルンたちの表情に真剣さが増した。
クオリネはそんな彼らがどんな反応をするのか期待に胸を膨らませながら、ついにその情報を口にする。
「リバーシ加入試験会場だよ。ゲーテさんはエンペル・ギアの職員として、今まさにお仕事中ってところだね。まぁレイクネスが彼の護衛に就いたのはもう何時間も前の話だけど」
「「「……」」」
その発言に三人は時が止まったような感覚を覚えた。
驚愕でも動揺でも無い。本当に衝撃的な情報は、逆にリアクションを遅らせる。




