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第55話

「おめでとう、テトラ。……それと、ごめん」


「え? 何で司くんが謝るの?」


「僕全然役に立てなくて……ただ自分の残高を『10』減らしちゃっただけだし……」


 司は勝負の結果が反映された自分のチップを悲しそうに見つめながら話す。


 今回ゲーテたちの策を見破ったのは他でも無いテトラだ。自分は何も貢献できなかった無力さを司は感じていた。


「司くん……えっと…… (どうしよう……分かりやすいくらいに落ち込んでる。そう言えば私だけの力で合格したくないって言ってたし、ちょっと出しゃばり過ぎたかな……) 」


 自分の取った行動に対して色々考え始めるテトラだったが、そんな事必要無いくらいに司は即座に気持ちを切り替えた。


「いや、違うよね。こんな事言ってる暇なんて無い……よし、決めた!」


「……? 決めたって、何を?」


「次何かあった時は、絶対にテトラよりも先に解決策や突破口を見出すよ! テトラに負けたらマイナス一評価を自分に付けて、勝ったらプラス一評価を付ける。これを試験終了までずっと行って、終了時にマイナスだったら僕は合格してもリバーシを辞退する!」


 その宣言にテトラは驚き、反応が遅れてしまった。


 司の目は本気だ。仮に二人が力を合わせて合格しても、彼の採点の結果マイナスだった場合は本当に辞退する気なのだろう。


「そ、そこまでしなくても良いんじゃない?」


「いーや! する! テトラが仲間として協力してくれてるんだもん。それくらいの事しなくちゃダメだよ。それにテトラに負けられないっていうプレッシャーを常に自分に課す事でメンタルも鍛えられそうだし、リバーシとして必要な力が備わりそうじゃない?」


「備わりそうじゃない? って……もう~真面目なんだから、司くんは」


 司は自分の成長の為に敢えて厳しい設定を加えたが、冷静に考えて彼は今WPUの一人を相手にしようとしているのだ。


 確かに彼女が仲間に居る事は他の参加者と比べたら試験を簡単にさせているかも知れないが、最終的にテトラに勝っていないと辞退するというのは、逆に難易度を高めていると言えるだろう。


 テトラは司が半ば勢いで宣言しているように見え、少し心配になった。彼の性格を考えると後悔する事は無さそうだが、本当に大丈夫だろうかと思わずにはいられない。


「取り敢えずさっきはテトラがゲーテさんたちのタネを完全に見破って勝利した訳だし、早速僕にはマイナス一がついたって感じだね」


「え。さっきのも含めるの?」


「当然でしょ。ほらテトラ、次の勝負行こうよ。まだまだこれからだからね。僕、絶対に負けないから!」


 彼の燃えるような眼差しを受けたテトラは何となく分かってしまった。


 先ほどの件ですっかり自分が司にとって最も身近に感じるライバルになってしまった事に。


「 (こういうの慣れてないから何かくすぐったいな。でもまぁ悪い気はしないかも。自分が超えたい存在として見られるのって、やっぱり嬉しいし。うん! ここは司くんのその燃え滾る気持ちを尊重しますか~) 」


 未来ある少年のやる気を削ぐ事はしたくないと考えたテトラは、取り敢えず司の好きなようにやらせようと思考を切り替えた。


 WPUとして自分の実力はシュレフォルンたちには遠く及ばないと本気で思っているテトラは、自分程度であれば司が乗り越えるべき壁として丁度良いレベルになるはずだと結論付けたのだ。


 リバーシ加入試験はまだ始まったばかりだ。これから幾度となく司は自分に減点と加点を行っていく事になるのだろう。


 だが最終的には絶対にテトラに勝つ。そう意気込んだ司は席を立ち、次の勝負の場へと向かうのだった。

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