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第53話

「司くん。えっと、間違い探しだよ。私たちが初めて彼に会った時と今……何か違う点は無いかな? 私は……うん、やっぱりそうだ……もう分かったよ!」


 司と同じく振り向いてあの時の男性ディーラーを観察したテトラは、その違いに早くも気付いたようだ。これで彼女は完璧に自分の考えは合っていると自信を持った。


「え、ちょっと早いよ……待ってね……うーんと……」


 必死に司は脳内の記憶上の男性ディーラーと今の彼を比較する。服装に変わった様子はなく、別の所に注目しようとした矢先、偶然にも彼の指輪が目に入った。


「……あ……! 指輪の位置が違う……」


「そう。私たちが初めて会った時、あの人は両手の人差し指と中指にそれぞれ指輪をしていた。右手には赤褐色の指輪を、左手には黒色の指輪をね。でも今は左右逆になっているし、はめている指も違う。……ところで司くん。あの指輪の色……赤と黒って何か思い当たる節はない?」


 テトラのこの質問に司は特に時間を掛ける事なく答える事ができた。


「トランプのマークの色……」


「その通り! 彼は後ろからプレイヤーBとCの手札を覗き見して、指輪の位置を調整する事でカード情報をゲーテさんに知らせてたんだよ。えっと、そうだね……赤い指輪はトランプのハートとダイヤ、黒い指輪はクラブとスペードを表しているのは何となく想像がつくでしょ? これに加えて右手はハートかクラブ、左手はダイヤかスペードっていう風に、左右の手で同じ色のマークを区別していたんだと思う。ついでに言うと指輪をはめる位置も重要なんだ。人間の手の指の関節は14個。これってトランプの数字の種類数+一だから、数字を割り当てる事もできる。余った一つの箇所はそのマークは手札に無いっていう意味にしておけば完璧!」


「……」


 ここで司はテトラの説明通りにいくなら、と脳内で指輪の位置を組み立てる。さすがに正確な割り当てまでは分からない為、そこは仮割り当てにはなるが、何とかそれらしい伝え方の導きに成功した司はそれを口にした。


「つまり僕の手札……スペードのKとハートの七を表現したかったら……。仮に右はハートとクラブ、左がダイヤとスペード、小指の第三関節から数字を若い順番に割り当てていくとすれば……左手親指の第一関節に赤、第二関節に黒、右手中指の第三関節に赤、親指の第一関節に黒の指輪をそれぞれはめれば良いって事だね」


 司の回答にテトラは一回頷いて肯定の意を示した。


 最初は情報を伝える側も受け取る側も混乱しそうだが、事前準備を行ってきた彼らであればスムーズにそのやり取りを行える事だろう。


 トリックが解明された事で司とテトラはスッキリした気持ちと表情で、二人揃って再び前を向いた。


「これで分かったでしょ? このテーブルではゲーテさんとプレイヤーDの女性が向かい合って座り、私たちがその間に、そして私たちの正面にディーラーが立つ形を取っているよね。もしもプレイヤーDの後ろに彼が立って指輪のはめる位置とかを調整していたら私か司くんに気付かれちゃう可能性があるでしょ? だからプレイヤーDのカードの中身は把握できないけど、私たちのカードは把握できるって訳」


「「……」」


 ゲーテとプレイヤーDは一切の反論をせず黙ってテトラの答えを聞いていた。


「えっと、何か反論はあるかな? 後ろに居た男性ディーラーの存在、プレイヤーDのカードは適当に言って司くんのは正確に当てた事、そして適当に言われただけなのにプレイヤーDの図星を突かれたかのような過剰反応、コールでも良さそうな場面でわざわざ私の残高上限ピッタリになるようなレイズ、その後のゲーテさんのコール宣言、今まともに反論して来ない二人の態度……そう思っちゃうには十分だと思わない?」


 ゲーテたちを追い詰めるテトラの姿に、司はWPUの片鱗を見た気がした。

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