第4話
「おかげさんでな。謹慎生活中にロアと色々話したよ。昔話から始まって、評価対決の事やシルベルスでの戦い……それと後はこれからの事とかな」
そう言って話すムイの口調や声は穏やかそのもであった。この様子を見るに謹慎期間は彼らにとって必要な時間だったのだろう。
「そっか」
「そう言えばお前らの所にもコハクからの連絡は来てないんだろ?」
「そうだね。会長として忙しいだろうし、しかも牢政とエンペル・ギア……両方のトップを交えての会談になる訳でしょ? スケジュールの関係でなかなか進められてないだけだと思うよ」
「俺もそうだとは思うが、一体鴻仙が何を考えてコハクにあんな提案をしたのかさすがにそろそろ知りたくてよ」
「待てるっていうのも立派な力の一つだよ」
「分かってるって」
今は我慢すべき時だと頭では理解していても、こうしてただただ日常が過ぎていくだけではどうしてもソワソワしてしまう。そんな気持ちを紛らわす目的も今日の集まりには含まれているのかも知れない。
「そう言えばユエルちゃん。今日の格好気合入ってるね。いつもより可愛い」
「え! あ、ありがとうございます…… (そこは触れて欲しくなかった。やっぱり普段通りで来れば良かったかな) 」
ロアはユエルの気合の入り様に注目した後、更にユエルの耳元に口を近付けてから小声で言った。
「ここに来るまで司くんと二人きりだったしね。ちょっとしたデート気分だったんだ?」
「……っ! な、ななな何を言うんですか、急に! ち、違います!」
思わずユエルは大きな声で否定する。
実際ユエルがここまで準備に気合を入れた理由は、一緒に歩く司に恥をかいて欲しくなかったからであり、断じてデート気分では無かったのだが、その手の話に弱いユエルは図星と思われても仕方ないレベルの反応を見せる。
「照れちゃって。かーわいい」
「で、ですから! 違いますって!」
「先輩? どうかしましたか? 急に大きな声出して」
「な、何でもありま……」
「司くん聞いてよ。ユエルちゃんね……」
「……! ムイさんッ! 私もう緊張解れたので大丈夫です!」
あまりにも必死なユエルにムイは若干面食らう。そんな様子を見ていたロアは小さく微笑んでいた。今まではムイにしか見せなかった笑顔だが、司とユエルにも気を許したという事だ。そう考えると彼らと仲良くしようと一歩踏み出して食事に誘った司は間違った選択をしていなかったのである。
「お、おう。そうか? まぁお前がそう言うなら、早速司の話でも聞くか。飲みもんって今何が……」
「コーヒー、紅茶、フルーツ牛乳、お茶、ミネラルウォーターの五つ」
ムイの独り言が終わる前にロアは即答してみせる。一緒に生活しているんだろうという背景が見え、司は微笑ましい気持ちになった。
「だとよ。お前らオーダーは?」
「僕は紅茶で」
「わ、私はフルーツ牛乳でお願いします」
「りょーかい」
そう言ってムイは四人分の飲み物を用意しに冷蔵庫へと向かった。最低限の対応をしてくれる辺り、司とユエルの事を一応は客として見てくれているようだ。
「……でね司くん。ユエルちゃんね……」
「思い出したかのように言わないでください!」
どうしても司に言いたいロア対どうしても言わせたくないユエルの戦いは、ムイが飲み物を持ってくるまで続いた。司は何が何だか分からない状態に苦笑いする事しかできずにいた訳だが。
「 (にしてもロアの奴、今日は随分と楽しそうだな。口数も多いし、結構笑うし……。他の奴らと交流を深める……か。確かに大事かも知れないな。今の俺たちには特に) 」
明らかにいつもより楽しそうにしているロアを見たムイはふとそんな事を考えた。




