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第48話

 あらゆる可能性を考え、彼女の狙いは何が一番可能性として高いのかを考える。だが時間は無限ではなく、いつの間にかテトラの番にまわってきたようだ。


「……こえてます? テトラさん! 聞こえていますか?」


「……! は、はい!」


「何度もお呼びしたのですが、余程集中していたようですね。あなたの番ですよ。このフロップのターンでの一周目はプレイヤーAが『100』、プレイヤーBがフォールド、あなたが『100』、プレイヤーDが『140』と同数にはなりませんでしたからね。二周目に突入し、先ほどプレイヤーAがアクションを決定されました。プレイヤーBは飛ばされ、あなたの番になっております」


 察しの通り集中していたせいで状況を上手く呑み込んでいなかったテトラは、男性ディーラーによる丁寧すぎる状況説明に耳を傾け、何とか理解する。


「……ねぇ、ゲーテさんはどんな行動取ったの?」


 テトラはゲーテを見ながらその確認を取った。今のディーラーの説明にゲーテの行動内容は含まれていなかったからだ。


「僕ですか? ふふふ……コールしましたね。先ほどのレイズに対して。なので僕の現時点での賭けは彼女と同じく『140』です。故に……」


「フォールドかコールを選べばフロップの段階は終了……次のターンに移行するけど、レイズすれば三周目に突入って流れかな。あ、でもテトラって『140』賭けたらプリフロップでの賭け残高『10』と合わせて『150』になっちゃうから、全残高に達しちゃうのか……それならレイズの選択肢は無いね」


「その通りで御座います。その場合、以降のゲームにおいて賭けには参加できませんが、フォールドする事もできません。フォールドした時点で全残高を失いますからね。残ったお二人の賭けが終わり、役の勝負となった時にあなたも役を公開して勝負……という流れとなります。その勝負であなたが勝利した場合は現時点での賭け残高『150』×今時点での勝負人数『三人』の『450』を得ます。逆にあなたが負け、仮にプレイヤーAが勝利しましたとしましょう。その場合彼は勝負までの合計残高を獲得し、あなたは『150』失う事になります」


 ディーラーの説明にテトラの胸がドクンと波打った。


 もしもここでフォールドしなかった場合、テトラはもう祈る事しかできなくなる。勝てば『450』、負ければ『ゼロ』。まさに天国か地獄かの分かれ道だ。


 このチップ残高を具体的にどう使うのかは不明だが残高初期値が『100』である事を考えると、必要場面では最低でも『500』は要求されると見積もるべきだろう。


 つまり今回の勝負に勝てれば一気に必要数に近付けるという訳だ。そして今後の勝負においても持ち残高が多いのを武器に動ける機会が増えるかも知れない。


 そう考えると勝った時のメリットは想像以上である。だが負ければテトラはもうカジノで戦う事はできない。


 司はフォールドしているのでこの勝負での負けが確定しているが、失う残高は『10』で済んでいる。もしもテトラが負けた場合は残り『90』で今後戦っていかないといけないのだ。少なくともチップ残高面でテトラは何の役にも立てなくなってしまう。


 その未来を考えるとテトラはここで勝負に行くのは得策では無いと考えた。


 しかしテトラのその思考を読んで向こうが圧を掛けてきている可能性だってある。


「 (もうーーーッ! どーすれば良いのホントにぃ!) 」


 頭を抱えたテトラを楽しそうに見ているゲーテには随分と余裕がある。その態度に司は何とも言えないモヤモヤ感を感じていた。


 しばらく彼を観察し、司はようやくその正体に気付いた。


「ゲーテさん。プレイヤーDの手札分かるんだよね? 最初にスーテッドコネクタ―であるって言ってたし」


「ええ。僕には伏せたカードを見破れる能力がありますからね。その証拠に司くんに配られた最初の二枚を当てたじゃないですか。あの時あなたは肯定も否定もしませんでしたけれど、当たっているかどうかはあなた自身が一番知っているはずですよ。数字とマークをピンポイントで……それも二枚当てるなんて偶然で済ませられないと思いますがね」


「ならおかしいよ。ゲーテさんには誰がどんな役を作れるか、あるいは作ろうとしているか分かるって事になるでしょ? その手品みたいな力で自分以外のカード状況も把握できて、中央にはカードが段階を踏んで五枚まで開示されていく訳だからね」


 司の話にゲーテは黙って耳を傾けた。今のところ質問された時以外では口を開くつもりはない意思を感じる。

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