第47話
スリーカードは役の強さ順で見たら下から数えた方が早いが、確率面から見れば十分に勝てる可能性のあるカードだ。勝負に出ても問題は無い役だろう。
「 (じゃあ逆に私は? 勝てそうな役として何が来たら良いの?) 」
テトラはゲーテの狙いに関する考察を中止し、自身の場合はどうかと切り替える。
今彼女が持っているのはクラブの七とJ。場にあるのはクラブの八と10、そしてスペードの二だ。
ターンとリバーではこれにあと二枚カードが加わる事になり、手持ちの二枚は絶対選出の五枚で勝負に出る必要がある。
「 (えーっと……私が狙えるのはまずはクラブのフラッシュ。七~Jのストレートとクラブのストレートフラッシュ。あとはスリーカード、ツーペア、ワンペアか……) 」
こうして改めて整理するとゲーテに負ける可能性は十分にあった。
クラブのストレートフラッシュが作れそうという気持ちで冷静な判断ができずにいたが、向こうはフォーカードやフルハウスを作れる可能性があるのだ。
対してテトラはこうして見ると数字被りが今のところゼロであり、フラッシュ以外に関しては七かJを引かなければハイカードで終わってしまう。
「ふふふ。テトラさん。そろそろ時間ですよ。今日は運が良いという話じゃありませんでしたっけ? なら勝負に出ても良いのでは? チラチラ司くんの方を見ていましたし、連勝する事で己の運の良さを証明したいのでしょう? であれば……」
「もう、うるさい。ちょっと静かにして」
「テトラ……」
心配そうにテトラを見つめる司はフォールドを促したりはしなかった。彼女の判断を信じてみようと思ったからだ。
「 (ああ、ダメダメ。落ち着いて。落ち着いて考えよう。まずゲーテさんがブラフである場合の彼の今の役はツーペア以下で、ブラフで無い場合はスリーカードって事になる。もしもスリーカードの場合、以降のターンとリバーでの二枚次第ではフォーカードやフルハウスだって有り得る。そしてその確率は……) 」
テトラは目を閉じて確率を暗算する。脳内が数字で満たされ、思わず叫びたくなるところをグッと我慢して冷静に計算を進めていく。
「 (現時点でスリーカードができている確率は約2.1%、リバーでフォーカードができる確率は0.16%、フルハウスは2.6%……ついでにストレートフラッシュは0.027%……えっと、つまりまだ私が現実的に作れそうなフラッシュを作れたとして、その役が負ける確率は約2.8%。それくらいなら、クラブが出る可能性に賭けて勝負に出ても良い……かも? 私がスリーカード以下で終わる可能性はもう考えない。今日の私はツイてるんだし、行けそうと思ったら行くしか……ないよね!) 」
テトラは自分の選択を決定した。
チップを置き、宣言する。
「……。……決めたよ。コールで」
「かしこまりました。最後はあなたですが、いかがなさいますか?」
男性ディーラーはプレイヤーDの女性に視線を送る。
その質問にビクッと肩を震わせた彼女は、声も震わせながら小さな声で確かに言った。
「れ、レイズ……! 『40』上乗せして『140』……か、賭けます……!」
「……! え、レイズ……?」
「ほう。これは面白くなってきましたね」
プレイヤーDの女性はその性格からは想像できないくらいに強気に出た。彼女のような人間がブラフで相手を降ろそうという思考に至るとは到底思えない。仮に至ったとしても行動に移そうとするかどうかとなれば話は別だろう。
そもそも大前提として彼女の手持ちはゲーテにバレている。テトラには通じてもゲーテにはブラフが通じないだろう。その部分も司がフォールドした理由の一部となっている。
特定のプレイヤーにはブラフが通じない。ポーカーにおいてこれほど厄介な事は無い。
これらの事から推察するに、プレイヤーDの女性には勝つ自信があるという事だろう。
だがそうなると不自然な点がある。
「 (何が起こってるの? ゲーテさんの話ではあの女の人の最初の二枚は、えっと、何て言うんだっけ……すー……すー……すー何とかコネクター? とにかく同じマークかつ連続した数字の組み合わせだったはず。連続性の時点でスリーカードはできてない。場に開示された共通カードはクラブとスペード。この状況でレイズするって事は少なくともハートやダイヤでは無い。ええ、でもクラブでのストレートフラッシュは私がこの二枚持っている以上、絶対に作れないし、となるとスペードで狙ってるって事? ターンとリバーで二枚引ける可能性に賭けてるの?) 」




