第45話
「 (確かゲーテさん……司くんの手札をマークだけとか数字だけとかじゃなくて、完璧に言い当てたよね? その前の彼女のスーテッドコネクターに関してもマークと数字を把握できたからこそ言えた訳だし……だとしたら私の今の手札も……) 」
そう心の中で言ったテトラは伏せていた自分のカードを改めて捲ってからババ抜きの最後の二枚の時のように持ち、マークと数字を確認した。
彼女の瞳に映るのはクラブの七とJであった。
驚く事にテトラは七~Jのクラブのストレートフラッシュを作れそうな状況にあった。これで後はターンかリバーのタイミングでクラブの九が来たら完璧だ。そこまでいかずともストレートやフラッシュを作れる可能性はあり、賭けに出ても良い場面である。
「 (私がクラブのストレートフラッシュを作れるかも知れない……この状況をゲーテさんが把握していたとしたら、確かにどう勝負に出たら良いか迷うのも納得かも。うーん、私としては早く司くんにドヤりたいからさっさと動いて欲しいんだけどなぁ) 」
無意識にテトラは司の方を見た。彼はテトラの今日の運の良さをあまり信じているようには見えなかった。故に早くストレートかフラッシュか、ストレートフラッシュで勝って証明したいと思っていたのだ。
「……? (何か視線を感じるような……) 」
ゲーテに熱い視線を送っていた司は思わず左を向く。すると同じく司の方を見ていたテトラと目が合った。テトラは司と目が合った事に気付くと、ニコッと可愛らしく微笑み、見事彼をドキッとさせる事に成功した。
「 (もう、だから……急にそういう事するの止めてって……) 」
反射的に司は顔を再びゲーテの方へと戻す。
「 (どうしたんだろ、司くん。あんなに慌てて) 」
相変わらず鈍いテトラは司の心情など知る由も無く、頭上にハテナマークを浮かべるだけで終わってしまった。
そんな時である。ゲーテがついにベットかフォールドの判断を下したのだ。チップを置き、不敵な笑みを浮かべながらハッキリと口にした。
「……。決めました。勝負に出ましょう。……『100』でお願いします」
「「「……ッ!」」」
ゲーテの宣言は三人に衝撃を与えるには十分過ぎるものだった。
「ほぉ。良いのですか? 今ならまだ取り消しを認めますが、いかがなさいましょう」
面白い展開になりそうだと表情が語っている男性ディーラーは、上辺だけでもゲーテを心配するフリをして己の仕事を全うする。
だがゲーテはそんな心配をあっさりと蹴った。
「そんな確認は不要です。何度言われようと僕の気持ちは変わりません。もう一度言いましょう……『100』でお願いします」
ゲーテの口調は力強く、自身の勝ちを確信しているかのようだ。
「かしこまりました。それでは次、あなたの番で御座います」
「……フォールドで……」
「かしこまりました。それでは次は……」
「あの。えっと、少し時間をください」
「あ、あたしも……」
「かしこまりました。最大で五分待ちましょう」
そもそも最初からフォールドしようと思っていた司は別として、プレイヤーDの女性とテトラは明らかに動揺を見せていた。落ち着く為の時間兼、どうアクションを起こすべきかの思考の時間は必要だろう。
十数秒後、二人の様子には明確な差が出ていた。
プレイヤーDはビビりな性格である事から、当たり前と言うか予想通りの動揺反応が以降も継続され、正常な思考能力を奪われたようだ。
テトラは即座にゲーテが何を思ってその賭けに出たのかを冷静に考え始めていた。
「 (どういう事? そんなに強い役を作れる確信があるの? 取り敢えずゲーテさんが自分以外の手札も把握している前提で考えると……) 」
テトラはフロップによって中央に開示された三枚の共通カードを見る。




