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第43話

 誰一人として本当に強いカードが来たのかハッタリなのか分からない状態である。


 見るだけ無駄だったか、と思った矢先、ゲーテが突然楽しそうに真正面に居るプレイヤーDの女性に向かって話し掛けた。


「そこのあなた。最初からスーテッドコネクターですか……確率にして約3.9%。かなりの強運ですねぇ……」


「え……」


 プレイヤーDの女性はビクッと肩を震わせ、明らかに動揺をする。元々極度のビビりである事が容易に想像がつく彼女だが、それにしたって狼狽え方が尋常では無い。もしやゲーテの発言は本当に合っているのかと思ってしまうくらいだ。


「ねね、司くん」


 テトラが体を近付けて小声で司に話し掛けた。


「スーテッドコネクターって何?」


「スーテッドは二枚のカードが同じマークである状態で、コネクターは数字が連続している状態だよ。つまりスーテッドコネクターっていうのはダイヤの34みたいな、ストレートフラッシュを狙えそうな手札って事だね」


 司は同じくヒソヒソ声でテトラに返答した。


 この状態を作れる確率はかなり低く、確率は実際ゲーテの言う通り全体の約3.9%しかない。狙えない訳では無いが、確かに強運と呼んで差し支えないだろう。


「あ、あの……その……ち、違います……!」


 怯え顔が今にも泣きそうな顔に進化したプレイヤーDの女性は、自信の無さそうな小さく儚い声で最低限の否定をした。彼女に人を騙そうとしている様子は皆無であり、核心を突かれた事で素の反応が出ているようにしか見えない。


「 (めちゃくちゃビビってるなぁ、あの人。ソルヴァさんとは別の意味で不合格にされても別に驚かないかも……) 」


 声にこそ出さなかったが司は内心そう思った。ゲーテの言う事がハッタリか、それとも何かタネがあって本当に言い当てたかは不明だが、どちらにせよプレイヤーDの女性はもう少し感情と表情を殺す能力を身に着けるべきであろう。


「おや。違うのですか? それは残念ですね。これまで僕は相手の手札を見破る事で勝利を掴んできましたが、今回その手は通じなさそうですね」


 不安を煽るような微笑みを浮かべるゲーテの目に耐えられなくなったのか、プレイヤーDの女性は目線を下げ、分かりやすいくらいに目を合わせないようにした。


「……。ゲーテさん。人の手札を見破れるの? それなら僕のはどう? 分かる?」


 そう言って司は自分の手札を二枚、裏面でゲーテに挑発的に見せた。


「つ、司くん! 大丈夫なの? えっと、もしも本当にゲーテさんが見破ったら……」


 テトラは司の手札が簡単にバレてしまう心配からか、慌てて止めに入ろうとする。


「……」


 だが司は特に返答はせず無言でゲーテを見つめる。


「ふふふ。良いんですか? 当てても」


「どうぞご自由に。耳打ちとかもしなくて良いから」


「では。スペードのKとハートの七。どうです? 当たっているでしょう?」


「……さてね」


 そう言って司は口角を上げて余裕の笑みを見せる。


 先ほどの女性と異なり、本当に当ててくる場合もしっかり考慮していた司は、特に動揺を見せる事は無かった。実際彼のスターティングハンドを当てた訳だが、來冥力以外の超人的な能力を信じていない司は、何かタネがあるはずだと切り替えるだけで済んでいた。


「おやおや。司くんはポーカーフェイスが上手いですね。本当に当たったかどうか、これは分かりませんよ」


 自分のカード見破りは絶対に当たっているという確信が彼にあるのは見え見えであり、言葉一つ一つが白々しい事この上ない。


「ふむふむ……さてどうしましょうか。まぁ最初ですしね。僕は『10』でいきます」


 場を一方的に乱したゲーテは早くも賭け残高を宣言し、チップを置いた。


 間違いなく今この瞬間、誰よりも余裕があって誰よりも状況を楽しんでいるのはこの男だろう。

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