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第40話

 プレイヤーCの男性、ソルヴァもその衝撃と現実味の無さから怒りが吹き飛び、ゆっくりとゲーテから手を離すと放心状態になってしまった。


 リバーシの加入試験は人生で一度きりの挑戦。つまりこれでソルヴァはリバーシへの道が完全に閉ざされた訳だ。脳の処理が追い付くにはまだ時間が掛かりそうである。


 今このテーブル内で最も穏やかに時間を過ごしているのはゲーテであろう。


 上手く刺激すればソルヴァというあのプレイヤーCの男性は暴力に走り、勝手に脱落してくれるはずだと思ったのだろうか。上手く不合格にさせてやったと言わんばかりの表情で、どこか勝ち誇っているようにも見える。


「ははは」


 やがてゲーテは声を上げて笑い出した。


「ソルヴァさん……でしたっけ? ダメじゃないですか。隙を見せたら。あなたみたいな単細胞は、低レベルな幼稚な煽り一つで簡単に自滅してくれるから助かりますよ」


「ちょ、ちょっとゲーテさん。それ以上あまり刺激しない方が……」


 さすがに大乱闘は見たくなかった司は制止に入ろうとするが、その行動は一歩遅かったようだ。


「――っ! テメェッ!」


 完全にキレたソルヴァが右腕を引き、今まさにゲーテに殴りかかろうとした。ある意味当然の反応と言えるが、ここまで短気だと普段の生活でも大分生きづらそうである。


 本来であればこのままゲーテが殴り倒されそうなシーンではあったが、そのような結末にはならなかった。


 司たちが止めに入るよりも先に、ソルヴァの拳がゲーテに直撃するよりも先に。


 彼に不合格通達をした男性ディーラーとソルヴァの体がその場から消えたからだ。


「……」


 目の前で一体何が起きたのか、司には分からなかった。いや、冷静に考えればエンペル・ギア側の人間である男性ディーラーとソルヴァが転移したと考えるのが自然ではあるのだが、あまりの急展開にそんな思考ができる余裕が生まれなかったのだ。


 そしてそれは司だけではなく、この会場に居た他参加者も同じだった。他テーブルに居たプレイヤーや、他ゲームに挑戦している者までが手を止めて司たちのテーブルに注目している。


 痛いほどの沈黙が場を支配したが、その静寂は早くも破られる事に。


「ふー。やれやれ。暴れる成人男性は見ていて見苦しいものがあるな、やはり」


 不合格者を適切な場へと送り届けたであろう先ほどの男性ディーラーが早くも会場へと戻り、そんな感想を漏らした。


 やがて会場内の参加者が自分に注目している事に気付いた彼は、先ほど起きた事を全体に向けて説明した。


「皆さん。ご覧になったように、リバーシ加入試験では試験途中で我々が不適と判断した場合はその場で不合格通達を行い、アルカナ・ヘヴンへと送還します。ソルヴァという『元』受験者は最初の脱落者となりましたが、皆さんはそうならないよう、お気を付けください。以上です。時間が惜しいですし、どうぞ皆さん……カジノゲームを満喫なさってください!」


 それだけを言うと彼は司たちのテーブルへと歩き、定位置へと戻る。


 男性ディーラーの言葉によって場の緊張感が高まった事を司は感じた。目の前で簡単に一人脱落した光景を見た受験者たちは、大抵の者が明日は我が身と思った事だろう。


 試験の合格条件は明確な説明があったが、不合格になる条件は明瞭化されていない。


 ソルヴァはその短気ですぐ暴力に走る様子から不合格にされたのだと容易に想像できるが、他にどんな理由で落ちるのか、参加者たちは誰も把握していないのだ。


 どんな行動、どんな思考回路が不合格に繋がるのかを知らされない不安は相当なものとして圧し掛かる。合格の事だけを考えて突っ走る事は危険なのかも知れない。


 だがその程度のプレッシャーに押し潰されるようでは、どのみちリバーシには向いていないだろう。そしてそういった部分も採点されているのではないかという考えが参加者たちの間に生まれ、一人、また一人と先ほどまで自身がプレイしていたゲームを再開し始めていく。数分後には先ほどの事なんて無かったかのような熱気を取り戻していた。


 自分はそんな不安を微塵も感じていませんよ、とエンペル・ギア側にアピールしているかのようだ。正直司から見ても虚勢を張っているようにしか見えない為、試験官側の人間からはバレバレに違いない。

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