第39話
この②~⑥の過程で一人を残して全員がフォールドした時、役関係無しにその者の一人勝ちである。その時点での全累積残高がその者に加算される。
「最後に。役を作る時、最初の二枚は絶対選出とします。またプレイヤーB~Dの方々は基本的にフォールドかコール、レイズしかできません。プレイヤーAの方は最初の為、様子見の『1』賭けが可能ですが、もしも最初から『10』だった場合、以降の三名は最低でも『10』賭けないといけない……という事ですね。ご理解いただけましたか?」
司にポーカー勝負の流れの説明を行った男性ディーラーはその言葉で締めくくる。先ほどの若い男性ディーラーとは異なり、こちらは30代後半といったところだった。体格は良く筋骨隆々だ。着ている制服もパツパツであり、何とかサイズがギリギリ合うものを着ている感が出ている。
「はい。大丈夫です。ありがとうございます」
「おい! 早く始めよーぜ! ったく……ガキがカジノなんて来んじゃねーよ……」
貴重な勝負時間が他者への説明のせいで失われた事により、プレイヤーCの位置 (司の左隣) に座っている乱暴そうな20代後半程の男性がイラつきを隠さず態度に表す。
「ひっ……」
そんな彼の様子を見た25歳前後の女性――プレイヤーDが、小さく声を漏らす。
彼女は黒のロングヘアが綺麗な女性で、丸眼鏡をかけている。ナチュラルメイクをしているのか、自然な素肌感が出ている女性だった。
デフォルトが怯え顔なのかと思うレベルで常時ビクビクした様子をしている。
未来の司が見たら更生前のムイとユエルが頭を過りそうだ。
「リバーシは感情制御力が重要とされる集団……この程度でそんなにイライラしていてはどのみちあなたは不合格になりそうですね。見るからに才能が無さそうですし。ふふ」
落ち着きを感じさせる声で楽しそうに火に油を注いだのは偶然同じテーブルに居たゲーテであった。プレイヤーAの席に座り、司とテトラに会った時と変わらずフードを被っている。
その顔はこの状況を楽しんでいる人のそれであり、余裕すら感じさせる。
「あ? おい兄ちゃん。今なんつった?」
「リバーシになれそうな才能が無さそうですし、どのみちあなたは不合格になりそうですね、と言いました。今回は聞こえましたか? 人生一発逆転をかけて今回の試験に挑んだんでしょうけれど……ハッキリ言って身の程知らずってやつです。ここは場違いな猿が来る場所ではありません。もう少し肉体と精神年齢を一致させ、現実を見れる目と頭を作る努力をしたらどうでしょうか。以降のあなたの人生が豊かなものになる事を願って、僕からのアドバイスです。ああ、授業料は結構です。特別ですよ?」
明らかに言い過ぎなゲーテに怯えている様子は全く無い。
荒い男性はその発言にピキッと来たようだ。立ち上がるとそのままゲーテの席まで向かい、何の躊躇いもなく彼の胸ぐらを掴み上げた。
「いい度胸じゃねぇか。あ?」
「おやおや。すぐ暴力に走るとは。……ディーラーさん」
驚くほど冷静なゲーテはこのテーブルの男性ディーラーに目配せした。彼の言いたい事を察したディーラーは二人の元まで歩み寄る。そしてプレイヤーCの男性の肩にポンと手を置くと、あっさりとその言葉を口にした。
「受験者名――ソルヴァ。現時刻をもってあなたをリバーシ加入試験不合格とします」
「……は……?」
「「……!」」
衝撃すぎる宣告に司とプレイヤーDの女性は二人して息を呑み、思わず彼らの方を凝視してしまった。
確かに試験中に不適と判断されればその場で不合格を通達されたりもするだろう。だが試験が開始されてまだ数時間しか経過しておらず、今日という一日すら終わっていない。
こんなにも早く、そしてあまりにも簡単に脱落者が出てしまった事に驚きを隠せずにはいられなかったのだ。




