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第32話

 この階に居る司とテトラ以外の参加者も彼らと同じ目的でこの会場内を調査しているようだが、恐らく同じ結論に達しているのだろう。


 調査に飽きたり落胆している姿がちらほらと窺える。


 少しでもヒントになりそうなものや怪しげな要素が見当たれば良かったのだが、誰一人としてそのようなものは見つけられなかったみたいだ。


 二階はあくまでも食事をする為の憩いの場であり、脱出ルートを示す何かは存在していないと結論付けて問題は無いだろう。


「うーん、そっか……。まだ始まったばかりだしそんなすぐ見つかりはしないよね」


「あのさ、テトラ。一旦ここの調査は切り上げて三階に行こうよ」


「そうだね。三階って確か……」


「うん。カジノだよ」


 次の目的地が決まった二人は続いて三階のカジノへと辿り着いた。


 司が五階から一階に向かうまでの間にこの階は通過点として通った訳だが、その時はまだ準備中といった感じで静まり返っていた。人も参加者の何人かがうろうろしていたり、ディーラーと思わしき人が準備に勤しんでいる様子しか確認できなかった。


 だが今はどうだ。いつの間にか営業を開始していたのか、今は結構な盛り上がりを見せている。司とテトラを含めた先ほどまで二階に居た人たち以外の全参加者がここに集結しているのではという盛り上がりようだ。


 数にすると40人近くは居るだろう。元々リバーシの加入試験に挑戦しようとする人が少ない事もあって、全参加者と表現しても大体このくらいに収まってしまう。


 二階とは比べ物にならないレベルの熱を感じた二人は、少々呆気に取られてしまった。


「えっと……す、凄い盛り上がりだね。司くんってカジノで遊んだ事とかあるの?」


「僕まだ13歳だよ。遊ぶどころか入った事すら無いよ。そう言うテトラは?」


「え? 私はWPUでの潜入捜査で何回かね! 知らない事があったらお姉ちゃんに何でも聞きなさい!」


「凄い自信だね」


 会話をしながらも司は辺りの様子や人の観察を怠らずに行っていた。先ほどのレストランと違って情報屋のような存在が居るとすればこの階が一番雰囲気として似合っている。


 他参加者がカジノに参加しながらも何か情報収集に勤しんでいないかなど、注意深く観察しているがそれらしい様子は見受けられない。


 一人の例外もなく皆カジノに夢中になっており、勝利した者は喜び、敗北した者は崩れ落ちるという当たり前の光景が広がっていた。


「 (ここもさっきのレストランと同じくただのカジノなのかな? さっきの場所と比べたらまだ何かありそうな感じはするけど……) 」


 司が考え込んでいる中、テトラが何かに気付いたようで司の肩をポンポンと叩く。


「ねぇねぇ司くん」


「ん? どうしたの?」


「思ったんだけどここに居るみんなはどうやってチップを交換してるんだろう? えっと、確かお金は事前にエンペル・ギアの人たちに預けてたでしょ? 変にお金を用いて争いや有利不利が発生しないように」


「あー確かに……」


 彼女に言われて司も気付く。


 司はセレーナに来る前に、現金を含めた貴重品の類をエンペル・ギアに預けている。そしてそれは他の参加者も同じだろう。


 カジノは普通現金でチップを購入し、そのチップを用いて賭けを行う。


 だがそのチップを買う為の現金が手元に無い今、一見チップの購入手段は無いように見える。


 それだけではない。エンペル・ギアに金を預けなければならなかった理由を考えると別の疑問が浮上する。司はそれに気付き、口にした。


「と言うか、ここでのチップって賭けに使える以外に何の役に立つのかな。このカジノで勝ってもチップを現金に換える事はできないよね?」


「うーん……」


 司の気付きにテトラは声を漏らした。

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