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第29話

 テトラと一緒に行動していると別の意味で心臓に負担が掛かりそうだと思った司は、この時点で少し疲れてきた気がしていた。


「あー! 何だ、居るじゃん。居るなら返事してよ~」


 あまりにも反応が無いからかテトラは四つん這いのまま後ろに下がり、テーブルクロスの中から出て来た。そして立ち上がってから司の顔を見る。


「……? どうかした? えっと、目を逸らしているように見えるけど」


 小首を傾げるテトラは全く気付いていないようだ。これは言うべきかどうかと悩んだ司であったが、これ以上無防備に接して来られても困るという気持ちが勝ち、言いにくそうに彼は口を開いた。


「い、いや、何て言うかその……もうちょっと周囲の目を気にしてくれると助かるかな~って」


「……? ……。……!」


 司が何を言いたいのか分かったようで、テトラは顔を赤らめながら両手を尻に当ててスカートを抑える。今そんな事をする理由はなく仮にするとしても今更過ぎる訳だが。


「ご、ごめん」


「いや、分かってくれれば良いよ、分かってくれれば、うん」


「……」


「……」


 気まず過ぎる空気が流れたが、これで彼女が少しは気を付けてくれるだろうと考えると司が取った選択は間違っていないはずだ。


 だがいつまでも無言状態が続くのはさすがに地獄である。


 そう思った司は無理やりにでも先程のテトラの質問を話題に戻す事で空気をリセットしようとした。


「それで何だっけ?」


「え? あ、はい! えっと、私が一つ目のテーブルの下を探し終えた後に司くん何か言いかけてなかった?」


 正直先ほどの件で全て吹き飛んだ気がしなくもないが、改めて言われた事で司は自分が何を言おうとしていたのかを思い出し、それを口にした。


「ああ、それなんだけど。闇雲に調査するよりも前に、一度考えておいた方が良いと思う事があって。今回の試験における脱出って素直にこの建物から外への脱出って事で良いのかな」


 司が何を言いたいのかピンと来なかったテトラは疑問顔だ。


「どういう事?」


「一階にあった例の扉さ、來冥力による破壊突破は現実的じゃなくて、普通に開けるとしたら鍵が必要になってくるでしょ? でも僕がさっき見た限りだと鍵穴も無ければカードキーを翳すような所も無かった。もしかしてだけどあの扉、外側からしか開閉できないんじゃないの?」


 彼の推測にテトラは何かを思い出したかのように声を漏らした。


「そう言えば……えっと、監獄異世界で使われている収容所の扉も外側からしか開けれないようになってるよ! 囚人たちが自由に出入りできないようにする為に」


「それならやっぱり今回の扉もそうである可能性は高いよね」


「あれ? でもそうだとすると私たちはどうやって外に出れば良いんだろう? だってここには窓の類は無いし、五階より上には上がれないし、外に出る為の出入り口がもう無いんじゃ……もしかして隠し通路とかあったり……?」


 テトラが抱いたその疑問は司も同様に感じていた。だからこそ彼はこの疑問を共有しようと思ったのだ。


 一人で考えるよりも二人で相談し合った方が先に進みやすくなる。それに加え、この時彼の中にはこの疑問に対する自分なりの答えが既に存在していたのだが、テトラの知識と経験からそれが正解である可能性はどれくらいなのか判断して欲しかったのだ。


 司が思い付いたその脱出方法は、WPUに所属している人間からすれば馴染み深いはずであるのだから。

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