第27話
「その神、ネイルは開花適応レベル五なの。つまりレベル五まで到達できる來冥者がもしも居たとしたら、その人は神と同等の來冥者って言えるかな」
「……」
最終到達点と言うだけあって、その力が神クラスなのは納得度が高い。司はいよいよ現実味の湧かない存在に、おとぎ話でも聞いているのではないかと思い始めてきた。
「えっとね……監獄異世界はネイルの來冥力によって世界そのものを檻にする事ができているの。開花適応レベル五はあまりにも非現実的で、私たちWPUや界庭羅船ですら到達できない領域と言われていてね。その絶大な來冥力によって統治されている世界では、例え開花適応レベル四の來冥者であっても、脱出不可能なんだ。万が一レベル五が他にも現れたらどうなるか分からないけれど、まぁそんな事有り得ないし、その辺は別に心配しなくても良いかな」
テトラの話を聞いて司は思った。界庭羅船のメンバーをそれぞれ倒したとして、その後の収容は大丈夫なのだろうかと不安だったが、その監獄異世界ならば確かに安全そうだ。
だがここで一つの疑問が浮かび、司はそれを口にする。
「ならさ。そのネイルって神様が界庭羅船を捕まえれば良いんじゃないの? レベル五の開花適応者が協力してくれるなら、楽勝とまではいかないと思うけど界庭羅船だってきっと……」
「……って思うでしょ? 残念ながらそれは無理。ネイルが界庭羅船を追って色んな世界に行ってたら、監獄異世界の収容効果は消えちゃうんだ。その世界はネイルが居てこそ監獄としての力を発揮するんだから」
「そう……なんだ」
やはりそう上手くいかないのが現実である。
もしも界庭羅船を優先して監獄異世界から離れてしまったら、その世界でただ死を待つだけの存在になってしまった凶悪犯たちに、一斉脱獄の機会を与えてしまう。
そうなってしまっては本末転倒だろう。界庭羅船問題解決は大事だが、監獄異世界の機能を殺す事は絶対にあってはならないのだ。
「あ、それでね……えっと、話を戻すけど、この建物の扉……監獄異世界で使われているものと似ているんだ」
「え!?」
司は思わず大きな声を上げてしまった。
その声に反応して周りに居る他受験者たちの視線が司に集中するが、司は何でも無い風を装い、わざとらしく咳払いをしてからテトラに質問する。
「それってつまり、來冥力による破壊は実質不可能って事?」
「そ。まぁ似ているってだけであって一致しているかどうかまでは分からないけどね。ただもしも本当にそうだったら、レベル五の神様クラスじゃないと破壊による強引な突破は無理だよ。まぁ私たちは活動の内容的に監獄異世界に行く事もあるしね。その時に拝借したんじゃないかな。どのみちさっき司くんが言ったように、試験中の來冥力使用タイミングには気を配らないといけないし、ここで來冥力を使わなかった判断は正しいと言えるね」
「……」
テトラは七割、八割くらいの確信度でこの扉の性質を判断したが、その見極めは恐らく正しい。
ルール説明の時に釘を刺されたとは言え、思わず來冥力を行使して扉の破壊を企てる者が絶対に現れないとは言い切れない。仮にそんな輩が現れたとしたら、その者の不合格だけで済む話ではなく試験の継続ができなくなるだろう。
そんな事態を避けるべく、この扉は一般的な來冥力を使ってもどうにもならないようになっている必要があるのだ。
強硬手段は現実的では無い。その事実が分かっただけでも一歩前進である。だが脱出への糸口が何も掴めていない点は変わりなく、司は小さく溜め息を吐いた後に次に自分たちがどうすべきかの提案をした。
「結局無理やりの脱出は不可能って事だね。それなら次に僕たちがやる事は、各階層の具体的な調査ってところかな。多分他参加者も似たような事していると思うし」
「うん! 賛成~!」
「何か随分と楽しそうだね」
「えへへ。だって脱出ゲームみたいで面白そうなんだもん! ……あ、ご、ごめんね。えっと、気を引き締めないといけないよね。相棒がこんなだと司くんも不安だろうし……」
シュンとなったテトラを見て司は微笑みながら言葉を返した。




