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第26話

「えっと、それじゃあそろそろ始める? 調査。さっきも言ったけど、私も挑戦するからにはWPUの人たちに笑われないよう合格したいし」


「そうだね。まずはお互い持ってる情報の交換をしよっか」


 司の提案にテトラは頷き、二人は試験開始からこの一階に辿り着くまでに得た情報を互いに開示し合う。


 だがその結果新しい情報が得られるといった事は無かった。


 五階が客室、四階が待機部屋、三階がカジノ、二階がレストラン、一階がフロントという、ここまで徒歩で来たのであれば誰がどう見ても分かりきっている事を確認し合っただけとなってしまった。


「うーん……特に調査らしい調査はお互いしなかったみたいだね。司くんは私以外の受験者と何か交流はあった? 私はしてないんだけど」


「僕もしてないよ。他受験者と交流する事に警戒してたからね」


「そっか。あ、そう言えばさ。司くんに話し掛けた時なんだけど、その扉開けようとしてたでしょ? それも來冥力を使って無理やり」


 そう言ってテトラは司の後ろで圧倒的な存在感を放っている鉄の扉を指差す。


 彼女に言われて司は思い出した。確かに最終的には思い止まったが、後少し判断が遅れていたら彼は來冥力を使って扉を力づくで開けようとしていた。


「え? あ、ああ。それは少し考えたけどルールを思い出してね。そんな事に使ったらその時点で不合格になると思って止めたんだよ」


「そうだったんだ。ちょっと勘違いしちゃったね。ちなみにだけどね? えっと、仮に來冥力を使って開けようとしても無理だよ。私がやってもね」


「え? でもテトラってWPUの人間なんだし、多分だけどレベルいくつかの開花適応者なんでしょ? そういう人が扱う來冥力だったらきっと……」


 司の発言にテトラは驚いたような表情になる。


 それもそのはずだ。リバーシ加入試験に挑戦しようとしているただの一般人が知り得る情報ではないのだから。


 だがすぐに司がどうやってその情報を得たのかピンと来たようだ。


「ああ、きっと氷雨さん辺りから聞いたのかな、それ。えっと、どこから話そうかな。司くんは監獄異世界『ネイル』については知ってるかな?」


「いや全然。シュレたちとの会話で一回だけ『監獄異世界』っていうのは出てきたけど、そういう世界があるんだ程度で終わらせちゃったよ」


 その時は特に触れず軽く流したが、ここでまた話題として再登場するのであれば詳しく聞いておけば良かったと司は後悔した。


「じゃあ軽く説明しておくね。監獄異世界は全世界の凶悪犯罪者たちを収監する世界の事だよ。えっと、世界そのものが監獄になっているってイメージでOKかな」


「それぞれの世界では手に負えないレベルの犯罪者たちを閉じ込める為の世界って事だよね。確かにそういう世界もありそう。その世界――ネイル? がどうかしたの?」


「ネイルにはね、監獄異世界と呼ばれるに相応しい個性がある世界なの。そこでは朝は訪れず永遠に夜の時間だけが流れる、世界レベルがゼロの世界……」


 司は記憶を辿って氷雨の話を思い出す。


「 (世界レベルゼロ……モデルNと同じ環境って事か……) 」


「その世界を統治している神が『ネイル』。世界の名前と同じだね。紛らわしいから私たちは世界の方を話す時は監獄異世界、神様の方を話す時はネイルって分けてるんだ」


 話の流れから区別は付きそうだがより誤解を生まないようにする為に、監獄異世界の存在を認知している者の中では暗黙の了解として出来上がっているルールなのだろう。

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