第25話
「でも凄いね。だってアルカナ・ヘヴンの人間が受ける試験な訳だし、手続きとかどうしたの? あ、まさか経歴詐称とか……」
その質問にテトラは首を振って否定する。
「違う違う! この試験の開催元のエンペル・ギア総帥が、WPU内で実績一位のチームのリーダーでね。その人に頭下げて便宜を図ってもらったんだ。あ、もちろん、試験内容については一切教えてもらってないよ? 『せっかく参加するのであれば、お前も本気で挑んでみるが良い』って言われたしね。普段から圧が凄いし、緊張したよ~本当に」
「なるほどね。 (五大機関の各トップで構成されたWPUのチームがあるって話だったけど、まさか実績一位とは……。あの人の実力って世界に通用するものだったんだ) 」
司はテトラの話を聞いて一人の女性が頭を過った。その女性はアルカナ・ヘヴンに居る者ならば大多数の人が知っており、圧が凄いという情報とも一致している人物であった。
ここでその女性についてもっと深掘りしても良かったのだが、その質問は話の本筋から逸れそうと考え、司は特に言及しなかった。
「とにかくね? えっと、私はWPUの人間としてここに来ているの。だから私は内通者じゃ無いし、仁さんのおかげで私は天賀谷司くんという男の子の事を知っているから、あなたが内通者じゃ無い事も知ってる」
「……」
「それにね? 仮にあなたが内通者だったとしても私には関係無いの。この試験に合格する事が私の目的じゃないし……まぁ不合格だったらそれはそれで悔しいけど……」
これまでの話を聞いて司は確かにその通りだと思っていた。
テトラには司の事を騙す理由は無いし、逆に彼女視点では万が一司に騙されてリバーシ加入試験に落ちたとしても、残念だったねくらいで終わるのだ。
過去の内通者事情をエンペル・ギアの関係者から聞いているから知っているという発言も、エンペル・ギアのトップがWPUの人間であれば有り得ない話ではない。
シュレフォルンの仲間としてセレーナに転移し、敵に戦力を誤認させる為に一緒には行動していない少女、テトラ。彼女を疑う理由は司の中には無かった。
最悪裏切者だったとしても、最終的には合格するまでの途中で気付ければ良いだけの話だ。今は一旦テトラを信じて協力体制に入っても問題無さそうである。WPUの仲間ができるなどこれ以上に心強い事は無いだろう。
「分かったよ。僕も正直一人で臨むには心細いし、仲間ができるんだったら嬉しい」
「……! 司くん!」
テトラは自分の事を信じてくれた事が余程嬉しかったのか、司の手を両手で包み込むように握った。
「信じてくれてありがとう。私、えっと、とにかく頑張るね! 絶対に足は引っ張らないから安心して!」
「う、うん。 (テトラの手、あったかい……) あ、あのさ、協力について僕から一つお願いがあるんだけど……」
照れ隠しから司は彼女の目を見れずにいた。結果よく分からない場所を見ながら司は話を続ける。
「テトラってWPUの人間だし、僕なんかとは比較対象にするのも失礼なレベルで優秀だと思うんだ。だから、僕よりも先に色んな事に気付くだろうけど、助け舟を出し過ぎるのはちょっと遠慮してもらえると助かるかな~って。ごめん。テトラの力だけで合格……みたいな展開だけは避けたいんだ」
「ふふ。大丈夫だよ。仁さんに似たような事言われたし。それに、えっと、仁さんも司くんも、私の事過大評価し過ぎ。私が誇れるものなんて來冥力くらいで、観察力とか推理力とかは並だよ並! だからそこは期待しないでね! 司くんって頭良さそうだし私より先に手掛かり掴んじゃう気がする!」
「そう、かな……? 別に過大評価してる感じはしないけど……あと、そろそろ手を離してもらえると……」
「え? あ、ごめん! 馴れ馴れしかったよね!」
そう言ってテトラは慌てたように司から手を離した。




