第24話
「やっぱりそうなんだ。この話の流れならそうじゃないかと思ってたよ。本当にWPUは小隊で動くんだね。本来なら父さんも来る予定だったんでしょ? まぁシュレの話ではどうしても外せない仕事があって来れないって事だったけど」
「そうだね。せっかくお父さんに会えるかも知れなかったのに……やっぱり残念?」
テトラの質問に司は首を横に振る。
「いや、そんな事無いよ。次父さんに会う時には、リバーシの一員になった自分を見てもらいたいって気持ちがあったから、寧ろ好都合だったかな」
その言葉は強がりなどではなく司の本心だった。
基本年に一回父親に会えるかどうかという司にとって、仁との時間は貴重なものだ。
どうせ次会うのであれば試験を前にしてガチガチに緊張している姿よりも、リバーシの一員になってエンペル・ギアの為に活動している立派な姿を見せたいと司は思った。
「そっか。今の司くんの言葉を聞いたら仁さんも喜ぶよ、きっと……あ、ご、ごめん。話が逸れちゃったよね。えっと、私が試験に参加している二つの目的だよね?」
テトラは少しあたふたしながらも何とか頑張って脳内で言葉を整理していく。
そんな彼女の姿を見て司は思った。本当に人は見かけで判断はできないと。どこか頼りなさげなテトラは、誰がどう見てもWPUの人間とは思えない。
だがどんなに雰囲気と正体のギャップがあろうとも、彼女は全世界の切り札と称される組織の一員なのだ。それは紛れも無い事実である。
やがて整理ができたのかテトラはゆっくりと自身の参加目的を告げた。
「えっと……一つは司くんに命の危機が迫った時は全力で守る盾の役割を担う為。そして二つ目は界庭羅船にこちら側の状況を誤認させる為」
テトラが語った目的を聞いた司だが、何一つとしてピンとは来なかった。
「ごめん。一つずつ解説お願い。全然どういう事か分からなかった」
「うん! 良いよ。一つ目は仁さんからのお願いなんだけどね。えっと、シュレくんたちから聞いたかも知れないけど、今この世界には界庭羅船の人たちが来てるの。大丈夫だとは思うけど何があるか分からないし、もしもの時は……ってこと」
「そっか……父さんが……」
父親との時間が無さ過ぎて普段はあまり実感できないが、こうして聞くと自分は息子として愛されているのだと安心する。
「まぁ普通はそういう個人のお願いで動くのは珍しいんだけど、他の任務が重なっていて同時に遂行できるなら問題無しって感じかな」
「シュレたちと同じだよね。彼らも本命の任務のついでに僕の様子を見に来たみたいだし、テトラの場合も二つ目の方が本命なんでしょ?」
「そう。えっと、私たちは界庭羅船の動向調査の為にこの世界にやって来た訳だけど、もしかしたら衝突に発展するかも知れないでしょ? その時にこちら側の戦力が三人だけだと勘違いさせる為に、私だけ一緒に行動してないの」
「なるほどね。テトラはシュレたちの近くにさえ居なければどこに居ても良いけど、どうせだったらって事で、父さんからこの試験に参加する事を指示されたのか」
司の言葉にテトラは頷いて返す。
彼女が取っている行動は司が好きな推理小説で実際にあった展開に似ており、理解もその分しやすかった。
その小説の中で扱われていたのは銀行強盗に関するもの。ストーリー内で銀行強盗の実行犯は二人のように見えたが、実は客の中に三人目の仲間が居て、その人は怪しい動きをしている人が客の中に居ないか後方から確認する役割を担っていたのだ。
テトラの役目はそれと似たようなものである。




