第21話
「でっか……」
語彙力皆無の感想をポツリと漏らした司はダメ元でドアノブに手を掛け、渾身の力で押したり引いたりしてみる。
だが案の定扉はビクともしない。もっとも、今の司は非力な13歳の少年だ。仮に力づくで開閉できるオチだったとしても、圧倒的に腕力が不足していると言える。
「來冥力は……使っちゃだめだよね……」
司は來冥力を解放しそうになったが、直前で思い止まった。試験中に來冥力を使って破壊行為に出る事は緊急時を除いて禁止されている。その使い所を考えないとそれだけで落とされてしまう可能性が高い。もしも今がその使い所では無かった場合、司は早くも不合格になってしまうかも知れないのだ。
司は改めてルールを脳内で確認する。しかしその確認は突如後ろから聞こえてきた声によって中断された。
「えっと……あの!」
「うわぁ!」
司の体がビクッと震える。
ゆっくりと声のした方へと体を向けた司は、そこに一人の少女が立っている事に気付いた。ここまで小走りでやって来たのだろう。膝に両手を付き、肩で息をしている。
身長は150センチ後半ほどであり、年齢は15歳くらい。司より少しだけ歳上に見える。
クリーム色の髪はおさげになっていて耳付近から胸までの長さだ。
白いシャツに黒のサスペンダースカートという出で立ちで、青のネクタイをしている。
どこか穏やかでのんびりとした印象を与えるのはタレ目のせいだろう。
「き、君は?」
司に問い掛けられた少女はようやく呼吸が落ち着いてきたのか、姿勢を正してから深呼吸を一度挟み自己紹介をする。
「急に話し掛けてごめんね。えっと、私の名前はテトラ。よろしくね」
耳が幸せになるくらいの可愛らしい声だった。彼女ならば仮にリバーシ加入試験に落ちたとしても、その声を活かした道に進めそうである。
「よ、よろしく。僕は天賀谷司…… (いや、待て。よく分かっていないこの状況下で他受験者と交流するのって危険なんじゃ……) 」
反射的に自己紹介をした司だが、不用意に他受験者とコミュニケーションを取る行為は褒められたものとは言えないのではないかと考えた。
何がどうしてそうなるかは不明だが他受験者と交流した結果不合格になってしまう可能性があるのであれば、問題となる『何がどうして』の部分を突き止めるまではヘタに接触しない方が良いだろう。
「……。 (失礼な態度になっちゃうけど、無視するのが正解かも) 」
「……?」
テトラは急に態度を変えた司に違和感を覚える。だが少ししてから彼が何を思っているのかピンときたようで「あ」と声を上げた。
「もしかして他受験者と交流したらまずいとか考えてる?」
「え!? いや、その……」
図星を突かれた事で反射的に司は否定の姿勢を取る。特にここで否定する必要は全く無いのだが。
「ごめんね。私の配慮不足だった。まずはそこの疑問点を解消してあげないといけないよね。えっと……」
口ごもったテトラは意を決したかのように司の元へと歩み寄り、自分の口を司の耳に近付けた。まるで今から内緒話をしようかという雰囲気だ。
急に接近された事で司は赤面し動揺する。リバーシ加入試験に挑もうとしているとは言え、中身は普通の少年だ。この状況に思わずドキドキしてしまっても不思議ではない。
「ちょ、ちょっと……!」
「ごめんね。一応周りに聞こえないように話したいんだ。司くんも相槌とか質問とかは無しにして私の話を聞いて」




