第19話
「ええっと、例えば至る所に罠が仕掛けられていたり、時間の経過と共に來冥力が徐々に奪われてそれが体力の消耗に繋がる仕組みが組み込まれていたりとか……」
「一言で言えばギミックのようなものが存在する舞台になっているのではないか、と?」
「は、はい!」
まるで人間と話しているかのような錯覚に陥った司はエンペル・ギアの技術力に驚きつつも、E5の返答に集中する。
「その定義からいきますと普通に生活する分には普通の建物と感じるかも知れない。ただし脱出を考えた場合はその限りでは無い。お答えできるのはここまでです。どうかご理解いただけますと幸いです」
「……! 分かりました……ありがとうございます。 (つまり脱出の正解ルートの過程では、何かしらのギミックが存在するって事か) 」
司の中で生まれていた気の緩みが一気に弾け飛んだ。ただの脱出ゲームだと思って甘く見る事は絶対にできないと自分に言い聞かせる。
この建物はリバーシ加入試験の舞台として申し分無い場所である事は明白だ。大乱闘のようなものと方向性は違えど、一瞬の油断も許されないという点は揺るがないと言えるだろう。
司がセレーナにやって来た時、彼はシュレフォルンたちと出会ったあの待機部屋前に直に転移させられていた。
故にこの建物はどんな所なのか、どんな場所に建てられているのか、一体何階なのかなどの知識はゼロとなる。
当然と言えば当然だが一筋縄ではいかなさそうだ。
「さて。そろそろ終わりが近付いてきましたが、他にはございませんか?」
「あ! それじゃあ最後に。試験中は他受験者たちとの交流や情報交換は認めているとの事でしたが、それによって理不尽な結末を迎えるかも知れない……確かそういう話でしたよね?」
「認識に間違いは御座いません」
「この理不尽な結末と言うのは具体的に何を意味しますか?」
「具体的に言いますと『不合格』……そう伝えるのが正しいかと」
ある程度予想してはいたが、こうして実際にその三文字を聞くと身構えてしまう。交流は可能だが場合によってはその行動により不合格に繋がる恐れがある。
一体この発言はどういう意味なのだろうか。
「何故不合格に繋がるんですか?」
「お答えできません」
「……。では質問を変えます。結局他受験者と交流や情報交換をする事は得策ではないと思っていた方が良いんですか?」
「あなたの判断にお任せします」
事前に伝えられていた通り、都合が悪い質問には一切答える気が無いようだ。だが答えられないという事は、その謎を解く事も他受験者を出し抜くポイントになる可能性が高いと考えられる。
「 (……なるほど。どうやらこの試験には、ただ脱出するだけを考えて行動していてはダメな、言わば隠し要素的なのがあるって事か。それだけ分かれば十分……これ以上ヒントを要求するのは、リバーシを目指そうとしている人として傲慢ってやつかな。) 分かりました。質問は以上です。ありがとうございました」
「かしこまりました。では最後に。今回の試験では三階にあるカジノルームが重要なカギを握ります。余裕がありましたら覗いてみてください」
最後の最後に重要な話をぶち込んで来たE5に対してもっと早い段階で伝えてくれと言いそうになった司であったが、グッとその言葉を飲み込んだ。
「……! (カジノ会場があるのか。) 分かりました」
ここから先は自分にリバーシとしての素質があるかどうかが試される。この不安要素を抱えたままいかに謎を解き、本来の目的達成を目指せるかどうかが問われるのだ。
そう考えた時、司は今日一気持ちが燃えた。




