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第1話

 その日、アルカナ・ヘヴンは快晴であり、まさにお出かけ日和といった天候であった。


 ダブルラスボスによる評価対決開催から数週間の時が流れ、手錠双璧の二人は謹慎生活を終えていた。


 復帰後もダブルラスボス役として活動を続けており、相変わらず評価は高いようだ。


 司とユエルもその間それぞれがソロのラスボス役として同様に活躍し、一言で言えば日常を満喫していたと表現するのが正しいだろう。


 あの日以降新旗楼に関する話に進展は無い。


 牢政のボスである鴻仙は、リバーシと同等メンバーで構成されたチームを作る事をコハクに指示したが、そのチームのメンバー数条件をコハクは既に満たしている。


 コハク、カムリィ、司、ユエル、ムイ、ロアの六名が現状のメンバーであり、仮にムイとロアを二人で一人とカウントしても五名居る状況な訳だ。


 約三年間大きな壁として存在していた深刻なメンバー不足は解消され、そろそろ次のステップへと進めても良い頃合いだ。


 だがそう単純な話でも無い。コハクは転生協会会長、そして鴻仙は牢政のボスだ。本業以外の理由でお互いのスケジュールを合わせるのはなかなかに難しく、更にこの話はエンペル・ギア総帥をも交えて行う想定との事。


 ただでさえ調整が難しい中、そこに実質アルカナ・ヘヴンのトップも加わるともなればその難易度は跳ね上がる事だろう。


 それを理解しているからこそ他の新旗楼メンバーはコハクを急かしたりはしない。日常での活動を満喫しつつ、いつかは来るであろうその時を気長に待つだけである。


 そんな状況下に身を置いている彼らだが、今日は少しだけ特別な日になりそうだ。と言うのも、今日は休日という事もあり司、ユエル、ムイ、ロアの四人の予定が良い具合に噛み合ったのだ。そのおかげで司は以前ムイと交わしたある約束を果たせる訳だ。


 新旗楼のメンバーが揃ったあの日交わした二人の約束。


 司にはどうやら界庭羅船攻略に最も近しいと言っても良い人たちと出会った過去があるようだが、ムイはその話について詳しく聞きたいと思っていた。そしていつか都合がついたらその話を聞かせて欲しいと司に言ったのだ。


 司には断る理由がなく、当然オーケーの返事をした。そして今日がまさにその約束の日となっているのである。


 現在時刻はお昼を少し過ぎたくらいで、司とユエルがムイとロアの家にお邪魔する事になっていた。


「……」


 司とユエルは一緒に行く流れで話が進んでおり、待ち合わせ場所は駅前となっていた。先に待ち合わせ場所についていた司は、周囲の景色を見ながらワイヤレスイヤホンで音楽を聴いて時間を潰している。


 アルカナ・ヘヴンは六つの国で構成されている世界だが、司たちが住んでいるここメルトリアを一言で表現するならば近代的な都市。何度見てもこれがピッタリくる表現だ。


 司の周囲に散見されるのは高層ビルが多く、彼の背後に聳え立つ駅も周囲のビルに負けじと存在感を放っていた。普段から異世界に触れた生活を送っていると、改めてアルカナ・ヘヴンがいかに文明が栄えた世界なのかを実感してしまう。


 もしも新旗楼の件で司たちもエンペル・ギアに行く事になってしまったら、その時は異国に行く扱いになる訳だが、牢政やエンペル・ギアと関わりを持っていた司には分かる。


 五大機関の本部がある他国はメルトリアとは雰囲気が変わる事を。まるで別世界に来たかのような感覚を味わうのだ。もしもまた行く事になるのであればその感覚を懐かしむ事になるのかも知れない。


 ちなみにアルカナ・ヘヴン内には各所に転移装置が存在している。空久良と偶然の再会を果たした時に発生していた立てこもり事件の犯人は、転移部屋を使ってモデルNに逃亡したが、それとは別の代物だ。


 各国へすぐ転移する事が可能になっており、当然出費はそれなりにあるが便利な移動手段として重宝されている。


 マキナが手錠双璧を調べる為に牢政本部へ行った時も、この移動手段を使った訳だ。調査の為ならばその出費を惜しまない所は実にマキナらしい。

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