第18話
「名前は天賀谷司。年齢は13歳。性別は男性。住所は……」
まるで履歴書に記載するかのような本当に基本的な事をE5は確認していった。司もエンペル・ギアなら間違いなんて起こらないだろうとは思わず、寧ろ粗を探す気持ちで自分の情報に誤りがないか集中して聞く。
「……以上です。どこか間違いはありませんか?」
「ありません」
「それならば次は本題です。此度のリバーシ加入試験の内容を説明します。質問は受け付けますが回答可能と判断した質問に限り、最後にまとめてお答えいたします」
「はい、お願いします! (いよいよか……一体どんな試験なんだろう……) 」
司はE5の機械的な声に必死に耳を傾けて全神経を集中させる。少しでも説明を聞き逃したら終わりだと自分に言い聞かせて。
「――と言うのが今回の試験の内容です。これより五分間の情報整理タイムを設けますので、質問がある場合はこの間にお願いします」
「……。 (なんなんだよ、この試験内容……) 」
意味不明過ぎるその内容に、司は思わず自分の中で何かしらの認識相違が発生しているのではないかと思ってしまった。
E5がした試験内容の説明をまとめるとこうだ。
各受験者の以降セレーナにおける衣食住は二週間担保され、各位説明を受けた部屋をそのまま宿部屋とする事。
そしてこの建物内から外へ、二週間以内に脱出できた先着五名の者をリバーシ候補生とし、その後四年の試用期間を経て本メンバーとして登録する。
なお試験中に他受験者たちと交流する事は可能であるが、その行動により理不尽な結末を迎える可能性もある。
試験中に來冥力を使用しての破壊や暴力は禁止。ただし緊急時や自己防衛の時に限り、その使用を許可する。暴力的な行為目的で來冥力を使用する場合、適切なタイミングか否かの判断は各自に委ねられる。
司がE5から受けた説明はこれが全てであった。もっと長く複雑な内容を想像していたが故に、何か聞き逃していた部分があるのではと不安になってくる。
そんな不安を解消する為に司は確認目的で口を開いた。ちょうど今は質問可能タイムであり、確認をするなら今しかない。
「あの……良いですか? 質問」
「どうぞ。先程も申し上げた通り、質問はお答えできる範囲での回答となりますが」
「えっと……脱出するだけで良いんですか?」
「はい」
「何か強大な敵を倒すとか、受験者同士による來冥力大乱闘とかではなく……?」
「はい。脱出だけでございます。先着五名とはなりますが」
「……」
やはり何度聞いても今回の試験テーマは『脱出』のようだ。
脱出ゲームのようなものなのだろうかとも考える事ができるが、仮にそうだとしたら随分と平和的である。來冥力を使った血生臭い大乱闘やそれに近しい試験になると司は予想しており、大怪我を負う事も覚悟していたのだ。
それなのにいざ話を聞いてみれば、ただこの建物から脱出すれば良いだけだと言う。確かに先着五名なのは競争感が出ているが、逆に言えば『リバーシ加入試験感』を感じるポイントはそこだけである。
拍子抜け。今の司の心情を最も的確に表す言葉はこれだろう。
「 (まぁリバーシ加入試験って言うんだから、簡単には脱出できないんだろうし、何かハプニングとかも発生するんだろうけど……。そう言えばこの建物って……) あ、あの」
「何でしょう?」
「この建物って『普通の建物』なんですか?」
この質問に対してE5は今日初めて言葉に詰まった。
「申し訳ありません。あなたの中における『普通』の定義が不明な為、質問にお答えする事はできません」
至極真っ当な返しをもらった司は、自分の中の気になっている事や明らかにしたい事をどう言語化しようかと少し考えた後に質問し直した。




