第17話
せっかくWPUの知り合いができたのだ。次に会う時は成長した自分を見てもらいたい気持ちが働くのは当然と言える。
界庭羅船の話題で一時的に司を覆った不安はもう消え去っている。勝利を目標にここまで諦めずに戦い続けて来たWPUが、あと少しで実力差をより縮められるかも知れないと言っているのだ。
その言葉は司にかなりの安心感と希望を与えた。
司が嬉しそうに未来の約束を三人とした時、彼が今日セレーナにやって来た目的を思い出させてくれる瞬間が訪れた。
「受験者『天賀谷司』。試験の時間です。五階個室、520号室へ移動を行ってください」
扉の外から聞こえてきた機械的な声は、明らかに人間が発するそれとは違っていた。
「……! は、はい! すぐに行きます!」
「お。そんな時間か。じゃあな司。リバーシ加入試験、頑張れよ」
「司くんの事は仁さんにしっかりと伝えておきますから。とても立派だったと」
「じゃね~司くん! またいつか会おうね!」
「うん! またいつか……」
司がそう言うと三人はその場で消えた。WPUは環境操作ができるレベルの來冥者では無いかも知れないが、異世界間の転移は自由に行えるのだろう。
「えっと……520……520……ここか……僕の部屋は」
クオリネとレイクネスを追ってセレーナの別地点にシュレフォルンたちが転移した直後に、司は部屋を出て五階に向かう。どうやら先程まで居た階層は四階だったようで、一階分階段で上るだけで済んだ。
五階には個室がホテルのように並んでおり、各部屋のドアにプレートが立て掛けられていた。そのプレートに書かれている数字で彼ら受験者は自分の部屋を把握するのだ。
司も数多ある個室ドアの中から自分の部屋を見つけ、中に入った。
他受験者との交流断絶を徹底しているが故に、説明部屋への移動時間は各受験者でずらしており、説明を受ける時も一人であるように調整している。
そんなエンペル・ギアの意思を伝えるが如く、室内には一体の説明用ロボのみが待機しており他に人は居なかった。
部屋の広さは先程の待機部屋に比べると広い。テーブルとイス、時計、休息用のベッド程度の物しか置かれていない。一応トイレや浴室がある分、部屋としての機能は果たしていると言える。
「……」
司は無言状態を維持したままイスの近くまで歩み寄る。
テーブルを隔てて司の真正面にはタンブラー型のロボが居る。大きさは一メートルあるか無いかくらいだ。司の事を認識した説明用ロボはマニュアル通りの言葉を投げ掛ける。
「受験者『天賀谷司』ですね。私はあなたの担当AIです。便宜上私の事はE5とお呼びください。立ったまま説明を聞くのは辛いでしょうし、お掛けになっていただいて結構ですよ」
「……はい。失礼します」
相手がロボであってもエンペル・ギアの使いである事に変わりはない。司は軽く会釈した後に言われた通りイスに座った。
やはりシュレフォルンたちとの会話は彼の緊張を緩和するのに役立ったのだろう。今彼は最大のパフォーマンスを発揮できる程良い緊張感で包まれていた。
「それではまず、軽くあなた自身についての確認を行いますので、何か間違いや認識齟齬があった場合は遠慮なく指摘してください」
「分かりました」
司の返事を聞いたE5は一拍間を空けてから司に関する情報を口にした。




