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第13話

「……え……」


 思わず司は固まる。


 確かに司は父親の職業を知らなかった。年に一度家に帰ってくれば良い方の多忙を極める父親であり、帰って来ても仕事の話はしない上に母親は司が幼い頃に亡くなっているせいで知る機会が訪れなかったのだ。


 とは言えまさか自分の父親が全世界で活躍する警察組織の人間だったとは夢にも思っていなかった司は、驚きのあまり一周回って薄いリアクションとなってしまう。


「その様子を見るにやはり知らなかったのですね。ご自身の父親がWPUに所属している事を」


「まぁ無理も無い。仁さんは子どもと話す時に仕事の話はしないって言ってたしな。そういう話にならない以上、司が知らないのは当然と言えるさ」


「変に心配掛けたくなかったのかもね。何せ各世界だけの力ではどうしようも無い犯罪者を毎日追って、日々危険と隣り合わせの生活を送っている訳だしね」


「起きているのなら体勢も戻してください。私の膝枕を堪能しながら喋らないように」


「は~い」


「……父さんが……WPUの……人間……」


 まさかこんな所で自分の父親に関する情報を得られるとは思っていなかった。本来であれば父親が世界的に有名な警察組織の一員である事実に喜ぶべきなのだが、それよりも驚きが勝ってしまった。


「WPUは何人かのチームで動く時が多くてな。普段俺が小隊を組む時は、仁さんも一緒なんだ。俺らが組む小隊の中では最年長者って事もあって、本当に頼りになる人だぜ?」


「そ……っか……。僕の知らない所で父さんは全世界から必要とされる人として活躍してたんだ。何だか嬉しいな。氷雨さんとシアさんも父さんと一緒に?」


「そうですね。ここに居る三人と、あと一人女性の方が居るのですが、その人と仁さんの計五人で隊を組み、一緒に行動する時が多いですね」


「あれ? そう言えばっさ!」


 シアは体を起こしながら何かを思い出したかのように言った。


「司くんの居るアルカナ・ヘヴンにさ、五大機関ってあるでしょ? 実はね……各五大機関のトップもWPUの人間で、しかもその五人で一つのチームなんだよ! 知ってた?」


「え……えええ!」


「はは、本当良い反応するな。WPUには色んな世界の出身者が居る。アルカナ・ヘヴンだって例外じゃ無いさ。WPUの仕事を専業でやってる人間も、副業でやってる人間も存在する。シアが言ったそいつらは普段は五大機関の仕事をメインにしているが、緊急時やどうしてもチームを組まなきゃいけない時とかはこっちを優先して活動してるんだ。もしお前がそいつらに会う機会があったら、こっそり俺らの事話題に出してみたらどうだ? きっと驚くぞ。どこからその情報を得たんだってな」


 シュレフォルンはニヤニヤしながらそう言うが、相手は五大機関の各トップだ。リバーシになれれば会う機会が訪れるかも知れないが、仮にそんな場面が訪れたとしても雑談をするような空気感になっている可能性は低い。


 そう考えた司は、自分には多分関係無い話だと判断して軽く流した。


「まぁとにかく話を戻すとだ。俺らは仁さんのお願いで司に会いに来たんだ。息子がリバーシ加入試験に挑戦しようとしているから、少し様子を見て来て欲しいって。仁さんはどうしても外せない仕事があったから代わりにな」


「僕が父さんに会った最後の日は、蒼……僕の妹が死んだ事を知らされた時だった。その時確かに話したんだ。リバーシの仲間入りを果たしたいって。父さんは特に否定する事無く『頑張れ』としか言わなかったけど……」


 ぶっきらぼうに振舞いつつも、やはりたった一人の息子が心配だったのだろう。仁は全世界で活躍する來冥者であると同時に司の父親なのだ。


 普段の仁を知っているシュレフォルンたちからすれば、彼のそんな一面は新鮮なものとして映った。

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