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第11話

「そしてこういった世界に身を置いて自身の限界値を引き上げる……それが開花適応の名前の由来の時に話した『環境に適応』するという事です」


 そう言って氷雨は七種類に分類する事ができる世界――その内訳について司に教えた。彼女曰く世界レベルは『N/A(設定不可)』『ゼロ』『一』『二』『三』『四』『五』の七つらしい。


 來冥力が使用不可の世界 (アルカナ・ヘヴン等) では、世界レベル『N/A』。設定不可として扱われている。


 次に世界レベル『ゼロ』。これは來冥力は使用可能だが開花適応は不可とされる世界を示す。


 そして世界レベル『一』~『五』の世界では、それぞれそのレベルに応じて來冥者の開花適応レベルが上がり、かつ放出可能な來冥力もその分増加する。非開花適応者が世界レベル一の世界に行くと、条件さえ満たせば念願の初開花適応を果たせる訳だ。


「ちなみにですがレベル五の世界では來冥力を100%出せるようになるんですよ。それとレベル一からレベル三への飛び級システムのようなものは存在しません。面倒ですが各世界で順序良く行っていく必要がありますね。余談ですが……ええっと、あの世界の名前は確か……」


 そう言った氷雨は人差し指を自分のこめかみ付近を押さえる。何かを思い出そうとしているようだ。やがて司に伝えたい情報の中に登場する世界の名前を思い出したのか、氷雨はスッキリしたような表情になった。


「あ。そうそう、モデルNです。大多数のアルカナ・ヘヴンの人間が唯一認知している世界ですね。司くんにとっても聞き馴染みのある世界かと思いますが、あの世界……実はかなり面白い世界なんですよ」


「 (氷雨さん、テンション上がってる……) 面白い世界?」


「はい。モデルNは世界レベルがゼロの世界なんですけど……」


 司は少しずつ氷雨という少女について分かってきた気がする。普段は冷めた印象を与えるが自分の知識を人に教える時は、目に見えて分かるレベルでウキウキしながら語り出すタイプだ。おまけに大体そういう時は早口になる。


 彼のその分析を裏付けるかのように氷雨は明らかに話すスピードが上がっている。


「世界レベルゼロってさっきの氷雨さんの説明通りだと、來冥力は使えるけど開花適応はできない世界だったよね。これ何か面白い所あるの?」


「まさにそこなんですよ」


 氷雨はニコッと微笑んでから答えた。


「ど、どういう事?」


「本来開花適応は、來冥漂渦に呼応する事で発生する現象と言われています。そして來冥力が使用可能な環境であるならば、その世界の來冥漂渦の量は最低でも世界レベル一はある事が調査の結果判明しているのですよ」


「え、でもレベルゼロの世界では來冥力が使えるのに開花適応はできないんでしょ? その調査結果と矛盾してない?」


 開花適応者への覚醒や限界突破こそ不可だが、來冥力は使用可能。これが事実なら確かに例外のような世界だ。


「その通りです。私の本業は異世界研究者なのですが、何故世界レベルゼロの世界ではこのようになっているのか――この難題を解き明かす為に日々頑張っているんですよ。過去の調査結果と矛盾した例外的な世界……ああ、なんて甘美な響きなんでしょう」


 氷雨は今日一のキラキラした眼差しを司に向ける。彼女の格好とその知識量からある程度予想はできていたが、やはり普段は研究者として時間を過ごしているようだ。


「ええっと……」


 最初はトゲトゲした印象を与えた氷雨だが、自分の好きな事を語らせた時のテンションの上がりようは見ていてどこか可愛らしい。


 本当に色んな人間がWPUには所属しているのだと司は思わされた。


 一人で熱くなっている彼女を前にして反応に困った司を見た氷雨は、自分が周りの人を置き去りにして盛り上がっている事に気付き、急に冷静さを取り戻したかのようになる。


「……あ……え、ええと……失礼しました。気を付けてはいるのですが自分の研究分野になるとつい興奮してしまいまして……。ひ、引きました……?」

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