第113話
「ああ、もう、うるさいですね。とにかく。タイミングに関しては実際にカジノでゲームをプレイしている当人でないと掴みにくいでしょう。お2人とも報連相は常に意識しながら動いてください。どうしても判断に迷ってしまったらゲーテに気付かれないようこっそり私たちに相談するのも1つの手ですね。演技力に関しては……。……。……き、気合いで乗り越えましょう」
送れるアドバイスが何も思い付かなかったのか、氷雨は捻り出したかのようにそれだけを伝えた。
「気合いって……氷雨らしくない何の役にも立たないワードチョイスだな」
「むぅ。それならシュレくんには何かあるのですか? お2人の役に立てそうな現実的なアドバイスが」
「え!? そ、そりゃあお前……あれだよ……あー……その……何だ……」
「ふっ……一応言葉を送れた分、私の勝ちですね」
変な所で子どもっぽい一面を見せた氷雨は勝ち誇ったように口角を上げた。
「くっそ、何か腹立つ……」
「あはは。まぁその場の雰囲気と状況に合わせて何とか頑張って演技するよ。これもリバーシには必要な力だし、試練の1つだと思って乗り越えるからさ!」
自分からネガティブな方向に持っていってはならない。今はとにかくどんな事も前向きに捉える事が大切なはずだ。
結果的に司は転生協会での活動に役立てる事ができているのだから、彼の人生において無駄になる能力にならなかったのは間違いない。
「さて。ひとまず話はこれで終わりだ。司とテトラは本日より残高『1000』を目指し、達成後は地下へと向かう事でゲーテを誘き出せ。他3名は試験期間中、アルカナ・ヘヴンに滞在しろ。ゲーテに監視を止める事を伝える以上、お前らはこちらの世界に居た方が安全だろう。ただし、緊急時にはいつでも出動できるよう心の準備はしておけ。我々と連絡を取る時はゲーテに気付かれないよう厳重に警戒しろ」
その指示に不満を漏らす者は誰も居なかった。だが疑問点があった者は居たようで。
「はいはーい! 1つ質問でーす! 宿とかはどうすれば良いですか!」
バナナはおやつに入りますかのテンションでシアがそんな質問をした。
「私がホテルを手配してやる。そこそこ良い値段のやつをな。宿泊代も私が出してやるから安心しろ。せっかくだから経済を回してやる」
「えー本当!? レギュ姉、太っ腹だねっ! そうだひぃちゃん。後で私と一緒に温泉入ろうよ!」
「お断りします。以前あなたと一緒に入った時に遠慮なく私の体を触って来たのを覚えていますので。それにあなたのその猫耳は他のお客さんからの注目の的になるんですよ」
「いやぁごめんごめん。今回は我慢するから!」
「信じられませんね」
「え~! そこを何とかっ! あ、そだ。ねぇ司くん知ってる? ひぃちゃんって脱ぐと結構胸大きくて……」
「え」
「言わなくても良い事を言わないでくださいッ! 分かりましたよ、一緒に入れば良いんでしょう! 耳はタオルを頭に巻くなりして隠してくださいね!」
「うん! やったー!」
彼女たちの会話を間近で聞いていたシュレフォルンと司の間に気まずい空気が流れたのは言うまでもない。
「 (こいつらマジで……男が居る前でする話じゃないだろ、これ) 」
「 (何も聞いてない何も聞いてない僕は何も聞いてない!) 」
悶々としながら必死に自分にそう言い聞かせる司は誰か早く別の話題にしてくれる事を心の中で願った。
「ねぇ司くん」
「……! な、何?」
ぎゃあぎゃあとシアと氷雨が騒いでいる中、急にテトラに小声で話し掛けられた事で司はビクッと反応してしまった。
「氷雨さんって結構あるんだね。服の上からだとよく分かんないよね」
「お願いだからその話を広げようとしないで」




