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第112話

 今回のカジノの厄介な所は、司たちが挑んでいる舞台がリバーシ加入試験であるという点。


 これが裏カジノ等であれば店側が何か勝つ為の仕組みを取り入れているのではないかという疑いも出てくるかも知れないが、リバーシ加入試験であれば運の良さも求められるだろうと解釈し、それ以上の思考に至らなくなってしまうのだ。


 当然運が良ければ次のステージへ進めるが、大体の者は内通者の餌食になって敗北の味を知る事になるだろう。つまりただの運ゲーと思い込んでしまった時点で、その参加者の勝利への道は閉ざされたようなものである。


 ゲーテとのポーカー対決では流れで彼のイカサマを見破ったテトラであったが、内通者全員が全ゲームで同じような事をしているとは考えていなかった。よくよく考えれば辿り着きそうな結論だっただけに、少しだけ悔しい気持ちが湧いてしまう。


「つまり各ゲームでどんなイカサマが行われているかを把握して、それを逆に利用してやれば簡単に残高は稼げる……そういう事ですか?」


「ああ。内通者は全ゲームのイカサマ行為を脳内に叩き込み、かつ各ゲームに平等に配置されるよう動いている。1つのゲームに2人以上固まらないようにな。向こうがどんな事をしてくるかさえ事前に理解していれば、後は勝つ為の行動をお前らが取れば済む話という訳だ。まさかとは思うが、リバーシを目指そうとしている者と現役のWPU……そんな人間が種明かしをされた状態でも勝てないなどという戯言を口にするつもりじゃあるまいな?」


 失敗は許されない空気をいとも簡単に作り出され、司は心臓がキュッとなった。


 平常心なら簡単に対処できる事柄でもプレッシャーが掛かっている状態だと失敗する事は往々にしてあるだろう。まさに今、失敗できないという重圧が司に圧し掛かった瞬間であった。


 テトラは慣れているのか何でもないといった様子だが、司は緊張感が一気に高まる感覚を覚えるのだった。


「大丈夫だよ。任せて」


「……っ……ぼ、僕も大丈夫です!」


 改めてテトラと自分の間に聳え立つ壁の高さを司は実感する。


 司は平常心のテトラを目の当たりにした事で少し動揺してしまったが、何とか緊張交じりの声でレギュラオンに返答した。


「ならばカジノで行われている全ゲームのイカサマと、実際の動きをこれから説明する。同じ説明を2度するのは好かんのでな。よく聞き、頭に刻み込め」


 絶対に上司にしたくないと思わせるには十分すぎる言葉と共に、レギュラオンは司とテトラ向けに説明を始めた。


 彼女の説明を聞けば聞くほど、あのカジノでは参加者が確実に勝てる道筋を残しているのだと思えてくる。それくらいポーカーの時のゲーテのように、内通者たちはイカサマを駆使して参加者たちを負けに追い込もうとしているのだ。


「――以上だ。ああ、最後に1つ。勝ち方を知ったからと言って今日の夜からいきなりボロ勝ちしようとするな。なるべく自然に、ここぞというタイミングでエンペル・ギアの内通者を後ろから刺せ」


 勝ち負けを一定数繰り返し、時には運が味方してくれたからこそ勝ったかのような演出が必要になってくるという事だ。レギュラオンの言うようにイカサマを逆手に取って勝つ手法を取る場合、使用するタイミングが重要になってくるだろう。


 そうなった時に必要な力が何なのか。氷雨はその答えに行き着いており、司とテトラに伝えた。


「話を聞く限り、お2人には演技力と切り札を出すタイミングの見極め力が求められるという事ですね」


「うー……私、こういう頭使うの苦手~」


「まぁ得意そうなイメージはありませんね」


「遠回しに私の事頭悪いって言ってる? もしかして。ひぃちゃん。ねぇねぇねぇ」

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