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第111話

 何か裏技的なものがあるのかと思った司とテトラはレギュラオンの次の言葉を期待して待った。現状、残高の増やし方は完全にギャンブルになっている。その残高を確定で増やす方法があるとすればそれは必勝法があると言っているようなものだ。


 昨夜一通りカジノのゲームを堪能した2人だが、心理戦や頭脳戦がテーマの作品にありがちな必勝法など存在するような感覚は憶えなかった。


 ハッタリやどこで大きく張るかといった嗅覚が試されている実感は湧いたが、確実に勝利へと繋げる何かがあるとは到底思えない。


 一体レギュラオンの言う考えとは何なのか。


 やがて彼女は一同が期待しているカジノ攻略法について語り始めた。


「そもそもの話としてお前らは、ああいった場所で確実に勝つとなった時に何をすれば良いか分かるか? ゲーム問わずだ。ポーカーだろうとルーレットだろうと関係無くな」


「え? えっと……何だろう……? 司くん、分かる?」


「いや、全然。特定のゲームじゃなくて色んなゲームに共通して存在している汎用的な勝ち方って事でしょ? ちょっと思い付かないかな……」


 ゲーテとのポーカー勝負を含む、昨日行ったカジノゲームを脳内で呼び起こした2人であったがこれといった回答は思い付かない。


 ここは素直にレギュラオンに答えを教えてもらおうという空気になったその時、氷雨がポツリと呟いた。


「イカサマですか……」


「え? イカサマ?」


 思わずテトラは氷雨に向かってオウム返しをする。


「正解だ、氷雨」


 セリフと表情が合っていないとはまさにこの事だ。レギュラオンの表情は厳かなままであり、自身が口にした問いに対する正解が出た時にする顔には全く見えない。


「テトラさん。確か昨夜あなたに連絡をした時に聞いたゲーテとのポーカー対決では、彼はイカサマをして勝負に挑んでいた……で、間違いはありませんよね?」


「うん。まぁ私が見事見抜いたんですけどね!」


 暴いた時の快感が相当だったのか、1日経った今でもその話になるとテトラは得意気な様子を見せる。


「ふふ、その話は落ち着いたらまたゆっくりと聞きますね。話を戻しますが、ゲーテ含む内通者の役割を担っている者たちは、カジノゲームで全員イカサマをして勝負しているのではないですか? あくまで私の予想ですが」


 氷雨の発言に対して一番最初に反応したのは実際に参加していた司でもテトラでもなくシアだった。


「ええええええ!? 何それ、ズルじゃん! 司くんやテトちゃんが真剣に運ゲーに挑んでるっていうのにさぁ!」


「私に言われても困ります。文句があるならレギュラオンさんに言ってください」


「うっ……」


 鬼より怖い表情と言っても過言では無いレギュラオンを前にし、彼女が実権を握っているリバーシ加入試験の文句を言える輩など恐らく1人も居ないだろう。


 シアもそう言われてしまっては大人しく引き下がるしかない。


「ズルと言われるのは心外だな。運だけで全てを決そうとする思考の方が浅はかではないか? 氷雨の予想通り、カジノゲームにおいて内通者は全ゲームでそれぞれイカサマを駆使して勝つよう命じている」


「本来イカサマをしている側が圧倒的に有利ですし、勝利が約束されているようなものですが、参加者からすれば逆に活路を見出すポイントという訳ですね」


 予想が当たっていた事を知った氷雨は、何故そのシステムを取っているのか確信を得たようだ。そして彼女の言葉を聞いた司はピンと来たのか声を漏らした。


「そっか……イカサマを必ずするって事は、どんなイカサマをしているかを把握すれば逆手に取る事もできるって事か」


「ただの運否天賦だと決めつけて早々に神頼みに走る奴などリバーシにはいらん。どんな状況下でも観察と思考を怠らず、その結果イカサマを見抜くような強かな逸材を私は求めているのでな」

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