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第109話

「ようするにだ。今回の作戦はゲーテの監視を行うと同時に、奴の動きを実質制限・誘導すると言った方が正確だな」


 最後にレギュラオンはそう締め括った。


 彼女の話に黙って耳を傾けていた一同はどこからどう反応して良いのか困っていた。作戦の事やゲーテの誘き出し方どうこうよりも、今回のリバーシ加入試験のクリア方法に驚きを隠し切れないようだ。


 実はWPUであるテトラたちは様々な世界に触れて来た経験上、アンデッドの存在は認知している。


 もしも今回の試験の参加者に彼らと同じくアンデッドに関する知識があればある程度冷静な判断力を持って対応できるかも知れないが、残念ながら司を含めたアルカナ・ヘヴン人は、基本的にその知識が皆無なのだ。


 完全初見でアンデッドの相手を強いられる事を考えると、アルカナ・ヘヴンの参加者たちには少し同情せざるを得ない。そして平然とそんな戦いを試験に組み込んでいるレギュラオンは相変わらず容赦無いという言葉がお似合いの女だ。


「もう少し具体的に指示を伝えるのであれば……司。お前は地下空間でアンデッドと戦いつつゲーテの動きを観察し、怪しい動きを奴がしないか見定めて欲しい」


「……」


「司」


「……! は、はい」


「大丈夫か? 先に言っておくが、話を聞いていませんでしたは通用しないぞ」


「わ、分かっています。ただ、その……試験突破方法をあっさり知れただけでなく、アンデッドとかいう聞いた事も見た事も無い異世界の生命体の話を急に聞かされたので……」


 昨日今日とこの短い時間で司は、WPU、原異生物、界庭羅船、世界地図、アンデッドといった、アルカナ・ヘヴンで過ごしていただけでは到底関われない存在を聞き、そしてWPUに至っては一緒に行動するようにまでなってしまった。


 異世界の存在という言葉をここまで実感した事は未だかつて無い。自分が知らないだけで外には無限に世界が広がっているのだと思えてくる。


「あの、本当に良かったんですか? 一応僕は試験の参加者です。そんな人間に対してクリア方法を教えるだなんて」


 どこかズルをしている気持ちになってしまい、司は申し訳無さそうにレギュラオンにそう訊いた。


「お前は今日から試験終了までの間、WPUの人間と行動を共にし、世界的犯罪組織の1人であるゲーテと、奴の背後に潜む界庭羅船のレイクネスを相手にするんだ。一般人であるお前を巻き込んだ事も加味すると、これくらい教えなければ割に合わんからな。それにだ。ゲーテの監視を行いやすくする為には、こちら側が適切な状況を作り出さなければならない」


 レギュラオンがそこまで言うとピンと来たのか、テトラが続きを話した。


「つまり私たちがいつまでも正解のルートに近付けずに四苦八苦しちゃったら、作戦に支障をきたすって事だよね」


「ああ、そうだ。作戦を円滑に進行させなければならない事を考えると、お前らには地下空間へさっさと辿り着いてもらわねば困るという訳だ」


「な、なるほど……」


 試験よりも作戦を優先したが故にレギュラオンはこの決断に至った。


 確かにゲーテの監視を十分に行える機会を窺っているままでは、いつまで経っても先には進めない。そういった事態を回避する為の判断なのだろう。


「だが司。答えそのものを教えてやった分、お前には今回の任務の出来具合をそのまま試験合否の判断材料にさせてもらうぞ。その上でアンデッドの巣とも言えるあの地下を見事脱出してみせろ。これが以降お前の――天賀谷司専用リバーシ加入試験内容だ」


 レギュラオンのその発言に、司は内心喜んだ。他参加者には与えられていない合格判断基準を別途設けられた方が公平感が生まれ、答えを聞いてしまった自分自身を納得させる事ができるのだから。

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