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第105話

 レギュラオンは『妹』というワードに対して深く考え込んでしまった。もしかしたら彼女にも妹が居て、思わず考え込んでしまったのかも知れない。その事も相まって彼女は司が語った志望動機を褒める事もしなければ咎める事もしなかった。


「あの。何故急にそんな事を……?」


「ん……ああ。もしもお前の妹を殺害した犯人の護衛役として、界庭羅船のメンバーが背後に潜んでいたらどうする? 罪状は違えど今回のゲーテのようにな」


「え……?」


 唐突にレギュラオンは司にそんな質問をした。


 結果から言えば蒼を殺害した犯人のバックに界庭羅船は居なかった。もしも潜んでいたらキレた司が蓮をボコボコにするなどできるはずもなく、また蓮も口封じの為に動く事なんてしなかっただろう。


 だがこの時点では誰が犯人かもその犯人の背後に界庭羅船が潜んでいるかも分かっていないのだ。その可能性はゼロであると断言はできない。


「あくまで仮の話だ。それで、どうなんだ? そんな状況下であった場合、お前はどんな決断をし、どんな行動に出るんだ?」


「……」


 恐怖が勝って立ち竦むのか、それとも蒼を想う気持ちが勝って無我夢中で立ち向かうのか。


「もしもお前が本気でリバーシに入りたいと思うのなら、考えてみると良い。リバーシに最も求められる力は何なのかをな」


「リバーシに最も求められる力……」


 レギュラオンにそう言われた司はふと思い出した。


 それは昨日行ったポーカー勝負の時、脱落者となった男性に対してゲーテが放った言葉であった。


『リバーシは感情制御力が重要とされる集団……』


 一応エンペル・ギアに所属しているだけあってその辺の事情は理解しているのだろう。彼はその時ハッキリとそう口にしていたのだ。


「……リバーシに求められる力は感情を制御できる力ですか?」


「知っていたか。ならば分かるだろう? 私の言いたい事が」


「……」


 何故彼女はこのタイミングで志望動機を訊いてきたのか。そして何故リバーシに要求される力が何なのかを考えさせたのか。


 最初はただ質問されたからそれに答えただけの司であったが、確かに今なら分かる気がしていた。


「レギュラオン総帥、もしかして父さ……天賀谷仁経由で本当は知っていたんですか? 僕がどうしてリバーシに入りたいと思っているのかを」


 仁は司がリバーシになりたいと思っている事は司から聞いているが、その志望動機までは聞かされていない。だが司の父であるが故に、聞かずとも察していたのだろう。そして彼はレギュラオンに伝えたのだ。今度自分の息子が試験を受ける事を。


「『私の息子だからといって甘やかす必要は無い。適性が無いと判断したら容赦なく落とせ』だそうだ。厳しいと言うべきか優しいと言うべきか……初めてあいつの父親としての顔を見た気がする」


 やはりレギュラオンは知っていた。知った上で彼女は敢えて司に質問したのだ。蒼を殺害した犯人に界庭羅船が護衛についていた場合、どう判断するのか、その質問に繋げやすくする為に。


「意地悪ですね、レギュラオン総帥は。把握している上で質問するなんて」


「ふん。WPUの者からすれば私は意地悪なんて可愛い言葉で収まる人間では無いがな」


「 (自覚あんのがこの人のタチの悪いとこだよな) 」


 シュレフォルンは心の中で静かにそんな感想を漏らした。


 まるでこの場には司とレギュラオン以外の人は存在していないかのような空気を2人は出しているのだ。自然と他メンバーは何か思った事があっても心の中で言うだけになってしまう。

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