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第101話

「え、ええと……?」


 司は自分が何故今この場に居るのか、全く理解できずにいた。


「よ! 1日ぶりだな、司! 何が何やら全く分かんねぇって顔だな」


「無理もありませんよ。いきなりこんな所に連れて来られて、しかも周りは全員WPUの人なんですから」


「ねぇテトちゃん。ホントごめんね。助けに向かえなくて……」


「え? 良いんだよ、シアちゃん! 状況を考えると寧ろそれが正解! その気持ちだけで嬉しいから!」


「うう、何て良い子なんだテトちゃんは! こんな良い子に手を出したゲーテ、マジ許すまじ」


「静かにしろお前ら。遊びじゃないんだぞ」


「わーってるよ。でも司も居るんだし、殺伐とした空気で進行するのはさすがにこいつにとって居心地が悪すぎるだろ」


「いくら空気を良くしたところでこれから話す事を聞けば、一瞬で吹き飛ぶだろうがな」


「ったく、あんたって人は……」


 レギュラオンの発言を快く思わなかったシュレフォルンが、いつもの如く彼女に噛み付きそうになったまさにその時であった。


「ストーーーップ! 何この状況!? 何でこんな超人の集まりみたいな場所に僕呼ばれてるの!? 全然情報の処理が追い付かないんだけど!?」


 我慢できなくなった司がようやくツッコミを放った。


 あの後テトラと一緒に朝食を摂った司は5階から調査を行おうとテトラに提案し、朝食後に彼女と共に5階へと向かった。だが5階に着いた時、彼の自室の前に思いがけない人物が立っていたのだ。


 その人物――シュレフォルンは司とテトラが来た事に気付くと、ニッと笑ってから彼らに近付き、状況を説明する事なく問答無用で世界地図を使用する事でとある場所へと一緒に転移を果たした。


 シュレフォルンが転移先に設定した場所こそ、エンペル・ギア内にあるレギュラオン専用の執務室である。シュレフォルンたちがレギュラオンと一緒にあれやこれや話し合った場も、まさにここだ。


 基本的にレギュラオンはこの部屋をエンペル・ギア内での自室と定義しており、秘匿性を持たせる話し合いの場として、これ以上の適切な場所は存在しないだろう。


 状況を説明する為にまずは落ち着いて話し合える場へと転移するのはWPUではよく取られている手法なのか、司と同じく急に連れて来られたにも拘らずテトラはこの状況を何とも思っていないようだ。


 だが司は違う。急に自分の世界へ戻されただけでなく、周りにはWPUの人間が勢揃いし、その中の1人はアルカナ・ヘヴンの王なのだ。それに加え、今自分が立っている場所はその王の執務室ともなればキャパオーバーになってもおかしくはない。


「うるさいぞ、司。こんな朝早くからバカでかい声を出すな。耳に響く。まったく……仁は寡黙すぎるがお前はそうでもないみたいだな」


 アルカナ・ヘヴンではまだ寝ている人の割合の方が圧倒的に多い時間帯だ。いつもより早い時間帯に起きたであろうレギュラオンはどこか不機嫌なように見える。


「……! も、申し訳ありません。レギュラオン総帥……」


 目の前に自世界の王が居て更にその人物から睨まれながら注意を受けたのだ。必然的に司は一瞬にして体が固まってしまった。


 自世界のトップなど普通であれば一生に1度関われるか関われないかの存在だ。リバーシに入ればその限りでは無いのかも知れないが、今の司はただの試験参加者に過ぎない。


 初めての邂逅に委縮してしまうのは当然の反応だろう。


「もう~ダメじゃん、レギュ姉。そんな高圧的な態度取ったら、司くんが縮こまっちゃうでしょ? ここは優しくしなきゃ! ただでさえレギュ姉って普段から怖い印象を自世界の民に植え付けてるのに、そんなんじゃまともに話し合えないよ!」


 司相手にも態度を柔らかくする気が全くないレギュラオンにシアは苦笑する。


「私は喚く事しかできない子どもがきら……失礼。苦手なのでな。そこまで言うのであればシア。お前が司に状況を説明しろ」


「うげ……面倒くさい事押し付けたね」


 余計な事を言わなければ良かったという表情になったシアを見かねた氷雨は、小さく溜め息を吐いた後に司の方を向いてから口を開いた。

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