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第十九話 ヒーロー





男が馬乗りになり、愛麻羅にナイフを何度も何度も突き立てる。愛麻羅は必死に両腕で防御した。両腕や両肩を次々と刺され激痛が走る。もう‥もうダメだ‥‥。血塗れの愛麻羅の意識が朦朧としてきたその時

「愛麻羅!」

土方の声が聞こえた。

ドスンッ!

鈍い音が聞こえ、男が愛麻羅から離れる。愛麻羅が起き上がろうとすると、愛麻羅の前に土方が立っていて、男と向き合っていた。土方は警棒を両手で握り、竹刀のように構えている。挿絵(By みてみん)

愛麻羅達からの応援要請を受けて、近くを歩いて巡回していた土方ともう一人の警官が、廃工場近辺を捜索していたのだ。そして土方が愛麻羅達のパトカーを見つけ近寄り、声が聞こえたので見てみると、男が愛麻羅に馬乗りになってナイフを振りかざしているではないか。土方と一緒にいた警官は反対方向へ探しに行ったので近くにはいない。咄嗟に土方は男に体当たりをしたのだった。男は吹っ飛んで倒れ込むが、すぐさま起き上がる。

「‥‥佳乃」

血塗れの愛麻羅が右肩を押さえながら呟いた。すると土方達の背後から走ってくる足音が聞こえる。土方は応援が到着したと思い振り向くと、スーツ姿の中年男性が走ってくる所だった。見た事がない男性だ‥‥応援ではなさそうだ。

「‥‥遅かったか‥‥マズいな‥‥」

中年男性が呟く。

「下がってください!危ないですよ!」

土方が叫んでメガネを外した。夜で見え辛いが、やむを得ない‥。目を凝らして男の動きを注視する。

「うえぇぇぇおぉぉぉぉぉ!」

突然、男が変な奇声を発した。

「危ない!」

スーツ姿の中年男性が土方に覆い被さる。すると倒れ込む土方の頬を、大きな石が掠めて飛んできて、後ろのパトカーのフロントガラスに当たった。ドスンという音と共に、パトカーのフロントガラスには大きなヒビが入った。中年男性と共に地面に倒れ込んだ土方が見ると、ナイフを持った男の周囲には大きな石が何個も宙に浮かんでいる。

「‥タチの悪い霊体が取り憑いてる。説明は後でするから、とにかく気をつけろ!」

中年男性が素早く起き上がりながら言った。土方も起き上がる。霊体?一体、何を言ってるんだ?この人は何者だ?こんな時に変な事を言うなんて‥。だが、確かに大きな石が何個も宙に浮いてる‥。霊体の仕業‥?いや、そんな非科学的な事など‥‥。何かトリックがあるはずだ‥。すると中年男性が

「‥石は何とかする。男を取り押さえろ」

と言った。土方は戸惑いながらも頷く。中年男性は上着の内ポケットから数珠を取り出した。そして両手を合わせ、ブツブツと念仏のようなものを呟く。途端にナイフ男が奇声を上げた。周囲の石がグラグラと揺れている。何かの力でナイフ男を押さえつけているような感じだ。

「いけ!」

中年男性が叫ぶと、弾かれるように土方が飛び出す。

「ああぁぁぁぁぁぁ!」

ナイフ男が再度奇声を上げると、石が土方目掛けて飛んできた。だが、最初の時ほどスピードがない。土方は前に出ながら、両手で持った警棒で石を叩き落としていく。そしてすれ違いざまに、ナイフ男の腹を警棒で叩きつける。さながら剣道で胴を打つ感じだ。ナイフ男がくの字になって倒れ込こもうとした瞬間、右足で踏ん張って堪えるとナイフを土方に向けて振り上げたのだ。だが、土方は誰かに体当たりされて吹き飛んだ。体当たりしたのは愛麻羅だった。男が構わずナイフを振り下ろすと、愛麻羅の顔面が切り裂かれた。愛麻羅は土方を庇って顔面を斬られてしまった。愛麻羅の右目付近から大量の血が流れ出る。だが愛麻羅は怯まず警棒でナイフ男の顔面を叩きつけ、男を下がらせた。

「アタシの友達は傷つけさせない!」

制服が血で真っ赤に染まった愛麻羅が叫ぶ。愛麻羅は小さい頃から気が強かった。そのせいで周りの女友達と仲良くなれなかった。みんなはグループでいるのに、愛麻羅は一人でいる事が多かったのだ。『なんでみんなは言いたい事を言わないないんだろう?なんでみんなは面白くないのに笑っているんだろう?』と不思議だった。『空気が読めないヤツ』とも言われた。『空気が読めないって何?空気って読むもんなの?』愛麻羅は不思議でしょうがなかった。そしてその疑問を素直にぶつけると、みんな黙ってしまうのだ。目を合わせず、愛想笑いを浮かべ離れていく。愛麻羅はそうやって、突っぱねて生きてきた。するといつしか『面倒くさい人』として扱われるようになってしまった。別にどうでも良かった。自分自身を押さえてまで誰かに合わせて生きていく気など、サラサラなかったのだ。そして警察官になり土方と出会った。最初は友達になる気なんてなかった。だが、屈託のない笑顔で話しかけてくる土方に、次第に心を許すようになった。そしてある時、二人で非番の日に買い物に出掛けると、ひったくりの現場に偶然遭遇してしまう。愛麻羅と土方で犯人の若い男を取り押さえるが、土方が犯人の持っていた小型のナイフで手に怪我をしてしまった。

「‥佳乃、大丈夫?」

心配する愛麻羅に

「‥‥平気、平気。全然、余裕っす」

と、笑顔で答える土方に愛麻羅が

「だから『佳乃はそこで待ってて』って言ったじゃん!佳乃になんかあったら、アタシは‥‥」

と、声を荒げてしまった。キョトンとしている土方を見て、愛麻羅は後悔する。しまった‥‥またやってしまった‥。また面倒くさいヤツと思われてしまう‥。

「‥あ、ああ、ごめん‥‥アタシが斬られりゃ良かったと思ってさ‥」

と、愛麻羅は溜息混じりに苦笑いで呟く。すると土方が愛麻羅の両手を掴み

「愛麻羅、ありがとう。でも、そんな事言わないで。アタシは嫌だよ。愛麻羅が斬られたら、アタシは嫌だよ‥」

と、真っ直ぐ愛麻羅を見つめながら言う。愛麻羅は嬉しかった。初めてだったのだ。こんなに真っ直ぐに気持ちをぶつけてくれる人は。

「うらあぁぁ!」

愛麻羅は雄叫びを上げて、ナイフ男を再度警棒で叩きつける。すると起き上がった土方も、両手で警棒を握りしめてナイフ男の鳩尾を突いた。今度こそナイフ男が地面に崩れ落ち、愛麻羅も地面に倒れこんだ。土方が男の手からナイフを蹴り飛ばすのと同時に、中年男性が男の体にお札を貼り付けた。痙攣し出した男の体に、中年男性が何枚もお札を貼り付けていく。その内、男は動かなくなった。土方はそれを見届けると、愛麻羅に近づいて抱き起こす。愛麻羅は右目を切られ、両手や肩など複数箇所切られていた。パトカーのすぐ近くには男性警官も倒れている。土方が急いで無線で救急車の手配をしようとするが、無線が繋がらない。すると

「悪いが、無線は封鎖させてもらった。これより黄泉国保安局が来る。心配しなくても救護班も来るから安心しろ」

と、中年男性が言う。

「‥あなたは?」

土方が警戒しながら聞くと、中年男性は

「‥‥キイロノイズミの藤堂だ。それ以上は正式な説明を待て‥」

と言った。すると途端に周囲が騒がしくなる。複数の足音が聞こえ、スーツ姿の男女と黒い迷彩服姿の者達が大勢現れたのだ。先頭を歩いているのは黄泉国保安局の局長、神谷だった。

「‥神谷局長、キイロノイズミの藤堂です」

藤堂が内ポケットから出した手帳を見せ敬礼した。

「ご苦労だったな。こちらのミスで、悪質な霊体を現世に行かせてしまった。すまない‥」

神谷が敬礼で返しながら言う。

「こいつは保安局で捉えていた悪霊だったが、暴れて逃げ出したんだ。こちらで引き取って滅却処分とする」

神谷は藤堂にそう言うと、後ろの者達に

「警官が二名、重症だ!小太郎達を呼べ!」

と叫んだ。

「全員、警官か‥。雲寄による情報操作は出来ない。八尾室長のお力をお借りする事になるな‥」

神谷が土方を見ながら言う。土方は突然現れた周囲の大勢の人達に圧倒されてオロオロとしていた。

「どいてください!」

「後ろに下がっていてください!」

黒い迷彩服の者達が土方を下がらせ、愛麻羅を取り囲んだ。すると

「呼んだぁ?」

と言いながら男の子が二人現れた。二人共どう見ても小学校の高学年くらいで、坊主頭でフードのついた上着を着ている。二人は見た目や背格好、服装もそっくりだ。双子だろうか?挿絵(By みてみん)

「小太郎、小次郎。重症者が二名だ。男性の方が危険な状態だ。頼むぞ」

神谷が男の子達に言うと、男の子達が肩を竦めて見せた。そして一人が倒れている男性警官のそばに行き、両手をかざし始めた。

「‥背中から刺されて臓器も損傷してる‥。俺が臓器に呪力を当てるから、小次郎は体全体に呪力を流して回復の促進を頼む‥」

男の子がもう一人の男の子に言う。小次郎と呼ばれた男の子も両手をかざし始めた。

「彼らは少名毘古那神スクナビコナノカミの神人、小太郎と小次郎だ。よく喋る方が兄の小太郎で、大人しい方が弟の小次郎だ。二人共そっくりだから、見分けがつかんがな。ウチの救護班のエースだ」

神谷が土方に説明するが、土方には何の事だかわからない。

「‥今は何が何だかわからないだろうが、追ってキイロノイズミの方から説明するよ」

藤堂が土方に言う。土方は小太郎達が愛麻羅の治療に取り掛かったのを、立ったまま呆然と眺めていた。




「その後、八尾室長から黄泉国の説明を受けて、私はキイロノイズミに加わったんです。愛麻羅は実は神主だった事がわかり、この呪力研究所に配属されました」

土方が話し終えて紅茶を一口飲んだ。

「神主って気づかない事なんてあるんだねぇ」

天音が驚いたように言うと

「‥アタシの力は地味っていうか‥‥物を作り出す力だからね。ただ、手先が器用なだけだと思ってたから‥。そりゃあ、アタシだって時間軸変えたり、剣を振り回したりしたいよ」

愛麻羅がファイティングポーズをとって見せる。愛麻羅の守神、天目一箇神には戦闘能力はないようだ。

「さて、お腹いっぱいになったし、もう少し色々と案内するよ」

愛麻羅がトレーに食べ終わった皿を乗せながら言うと、みんなもテーブルから立ち上がった。その後、呪力そのものの解析や研究をしている部署や、呪力の活用などの研究をしている部署など色々と見て回った。すると

「‥あの子達、大丈夫かしら?」

と、奈美ちゃんが心配そうに言う。確かに見学エリアで別れたきりだ。

「じゃあ、子供達もいるし、そろそろ戻るね」

土方が愛麻羅に言うと

「あぁ、ごめん、ごめん。連れ回しちゃったね。また今度、連絡する。じゃね!」

と、愛麻羅が片手を上げた。みんなは愛麻羅に挨拶すると、土方に連れられ見学エリアに戻った。奈美ちゃんの心配をよそに、ひーちゃんと凪は案内係のお姉さん達と、見学エリア内にある軽食ショップのイートインで、楽しそうに昼ご飯を食べていた。

「あぁ!どこ行ってたんだよ?」

凪がタツと将吾に絡んでいく。アキ君と共にこの二人が気に入ったのだろう。ちなみにクッキーには近寄りもしない‥。ひーちゃんは、みんながどこに行ってたか全て知っているので、目線で何か言いたげだ。土方が案内係のお姉さん達にお礼を言うと、お姉さん達は自分の持ち場に戻っていった。すかさず、天音と双葉がひーちゃんを挟み込んで座り、頭をヨシヨシと撫でていたのだった。





「ありがとうございましたぁ」

双葉が言うと、ガラガラと扉を開けてお客が出ていった。ここは南雲双葉の実家、立野市にある町中華の店『南雲亭なんうんてい』だ。お昼のラッシュも終わり、客の勢いもだいぶペースダウンしてきた所だ。南雲亭は双葉の両親が切り盛りしていて、昔から評判の安くて美味しい町中華の店なのだ。二階部分は両親の自宅を兼ねていて、決して大きくない店内だが、昼時になればひっきりなしに客が訪れる。仕事を辞めた双葉は、ランチタイムの時だけ手伝いに来ているのだ。

「すいません。追加で餃子一つ‥」

タツが注文する。クッキー達は端っこのテーブルでラーメンを食べていた。今日は天音が休みだったので、クッキーとタツと将吾と天音で、双葉の実家の南雲亭に昼ご飯を食べに来たのだ。みんなで呪力研究所に行った日から、数日が経っていた。双葉は忙しそうに、空いた席のお皿を片付けて、テーブルを拭いている。

「チャーハン、ヤバいっすよ」

将吾がチャーハンをレンゲで口にかき込みながら言う。

「餃子もサイコー」

天音も餃子を頬張っている。今にもビールを頼みそうな勢いだ‥。タツは以前から南雲亭の常連客だったそうだ。双葉の実家と聞いて驚いていた。するとガラガラと扉が開く。また新たなお客さんが入ってきた。

「いらっしゃいませぇ‥‥あ、月臣つきおみ先輩‥‥」

双葉が声をかける。店に入ってきたのは、金髪の若い男性だった。双葉と同じくらいで二十代だろうか?カジュアルな服装で優しそうなイケメンだ。挿絵(By みてみん)

「うっす。え‥‥と‥日替わりランチで‥」

月臣と呼ばれた男性が注文しながら席につく。

「はい。餃子どうぞ」

双葉が先ほど注文した餃子を運んできた。

「なんだ?知り合いか?」

クッキーが双葉に尋ねると

「うん。月臣大牙つきおみたいが君って言って、私の一個上の先輩なの。小、中が一緒で高校が違うけど、バイト先が同じだったりしたから、仲が良いんだ‥」

と、双葉が答える。月臣がクッキー達を見て軽く会釈をした。クッキー達も会釈で返す。

「見た目はチャラそうだけど、良い人なんだ。キックボクシングをやってたから、意外と体育会系で礼儀正しいし。最近、毎日のように食べに来てくれるし‥‥兄とも同級生で仲良かったから‥」

双葉が言うと

「‥あれ?‥‥双葉さんって兄弟は‥‥」

と、タツが尋ねる。

「‥‥兄がいたんだけど‥‥小学生の時に病気で‥‥」

と、双葉が少し寂しそうに答えると

「‥あ、あぁ‥‥ごめん‥知らなくて‥‥」

慌ててタツが謝る。

「‥いえ。もう十五年も前の話しだから‥‥」

双葉が笑顔で返した。双葉は出会った頃より明るくなり、よく話してくれるようになった。あの頃は死を決意するぐらい、自分を追い込んで思い詰めていたのだ。最近はよく笑い、クッキーにもツッコむようになってきた。神主になり大きな力を得たのも関係あるのだろう。その後、クッキー達は一通り食べ終わると帰って行った。双葉は後片付けをしている。すると

「‥最近よく行く神社の人達?」

月臣が食べながら双葉に聞いてくる。

「うん。前の会社で色々あった時にね‥‥お世話になったんだ‥‥」

双葉がテーブルを拭きながら答えた。

「‥‥殺人事件があった神社でしょ?」

月臣が箸を止めて言うと、双葉も手を止めた。そして真っ直ぐ月臣を見て

「‥‥うん。でも、良い人達だよ。って言うか私にとっては、かけがえの無い人達だから‥」

と言う。自分の命を助けてくれたばかりか、酷い会社を辞めるきっかけをくれた。神主となり、人には言えない事も共有している。双葉にとって陰陽神社やキイロノイズミの人達はかけがえの無い人達になっていったのだ。月臣は双葉を見つめると

「‥そっか‥‥」

と言ってまた食べ始めた。月臣は食べ終わると、レジに向かう。

「おじさん、おばさん、ご馳走様でしたぁ。また、来ます」

月臣が厨房に声をかけた。双葉の両親が手を振って答える。双葉がレジを打ち

「900円です‥」

と言うと、月臣は千円札を渡しながら

「‥‥この前の話し‥‥考えてくれた?」

と言う。双葉の手が止まった。

「‥‥ごめんなさい‥‥‥私‥‥‥今は‥無理だと思う‥‥ごめんなさい‥‥」

双葉が俯きながら小声で言い、お釣りを渡した。

「‥‥そっか‥‥‥わかった‥‥」

月臣はお釣りを受け取るとガラガラと扉を開けて出ていった。実は数日前の事、双葉が観たかった映画の全国ロードショーが始まった。すると月臣が、一緒に観に行こうと誘ってくれたのだ。今までもそういう事はちょくちょくあったので、双葉は喜んで一緒に出掛けた。その帰り道、夜の公園で突然告白をされたのだ。『前から好きだったから、付き合って欲しい』と‥‥。月臣は小学校の時に一つ上の兄と同級生だった。兄は一仁かずひとと言い、学校ではヤンチャなガキ大将だった。一仁と月臣は仲が良く、いつも一緒だった。双葉は人見知りな所もあり、友達があまり出来なかった。一人で学校から帰っていると、一仁達が合流してきた。兄なりに妹を心配していたのだろう。なので双葉は同級生より、兄達一つ上の子達とばかり遊んでいた。そのせいか、大人しく引っ込み思案な双葉でも、学校でイジメられたりする事はなかった。だが、一仁が小学四年生の終わりに病気が見つかった。すぐに入院して手術が行われた。双葉はこの時、何の心配もしていなかった。大きな病院で大人達が大勢で手術したのだ。当たり前のように、良くなって兄がすぐに帰ってくると思っていた。だが数ヶ月後、病気の転移が見つかった。今度は手術では取り除きにくい箇所だという。すぐに薬での治療に切り替えられた。だがまたすぐに別の場所の転移が見つかった。兄は日に日に弱っていった。あんなに元気だったのに‥‥毎日、ドロドロになるまで走り回っていたのに‥‥。双葉の事を揶揄う友達には、本気で突っかかってくれた。運動神経も良くて足も速い兄。力も強くて何でも出来ちゃう兄。友達も多くて社交的な兄。自分とは全てが真逆な兄だった。双葉にとって兄はヒーローだったのだ。そんな兄が、どんどん痩せて小さくなっていった。とてもじゃないが、見ていられなかった。そして病気が見つかってから一年後、兄の一仁は他界した。今まで居た大きな存在がいなくなった‥。不思議な感覚だった。死んだ事はわかってはいるが、体全体がその事実を受け入れてくれないのだ。どこかに隠れてるんじゃないか?と本気で考えた事もある。何とも言えない、フラフラとした感覚で毎日を過ごしていた。そんな双葉に声をかけてくれたのが、月臣だった。ヤンチャな兄とクールな月臣というイメージだったが、兄のように面倒を見てくれるようになったのだ。そして中学、高校のバイト先などでも面倒を見てくれた。月臣はイケメンでモテた為、双葉の事を彼女じゃないか?と勘違いする女子もいた。だが、双葉にとっては月臣もまたヒーローだったのだ。月臣は運動神経抜群で、頭も良い成績優秀な優等生だった。強い兄と一緒にいた凄い人‥‥そんなイメージだったのだ。だから月臣の事を好きになるなどもってのほかで、雲の上の憧れの存在だったのだ。自分なんかが遠く及ばない、住む世界が違う人‥‥。双葉にとって、芸能人とかと大して変わらない存在なのだ。そんな人からの突然の告白‥‥。しかも、大人になってからのマジなやつ‥‥。嬉しい反面、驚きが勝っていた。それにキイロノイズミの事もある‥‥。今は神主としての自分を一番に考えたいし、何より月臣を巻き込む訳にはいかない。命の危険があるのだ。今すぐは無理だ‥。双葉は色々と考えた結果、お断りする事にしたのだ。双葉は軽い溜息をつくと、レジの引き出しを閉めた。そして皿を片付けに席に歩いていったのだった。


 


南雲亭を出た月臣は一人、住宅街を歩いている。そして立ち止まり振り向いた。

「‥双葉‥‥‥どうして‥‥」

そう呟く月臣の瞳は、赤く輝いていたのだった。








 


名前:一ノ瀬愛麻羅いちのせあまら

別名:愛麻羅

年齢:29歳

守神:天目一箇神あめのまひとつのかみ

能力:物を作ったり修理したりする事に特化

備考:元県警の防犯課に所属 今は呪力研究所の研究員

   土方佳乃とは同期で仲が良い

   ガントレットの生みの親

   その他、色々な武具や装置の開発に携わっている

   お喋りでイケメン好き

挿絵(By みてみん)

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