第十六話 守る者達
タツが病院に運ばれる一時間ほど前。タツはホームに立っていた。ホームではアナウンスが流れ、通過する電車が近づいてきている。それと同時に、須佐野が両刃刀で斬り込んできた。八岐大蛇は、またもや八本の宙を浮く剣に翻弄されている。須佐野の強烈な振り下ろしをタツが草薙の剣で防御した。
ガキィン!
鈍い金属音と共にタツがよろけながら退がる。衝撃が強すぎて抑えきれないのだ。電車がホームを通過する中、須佐野が再度斬り込む。タツは今度は右に避けた。防御すれば力負けするからだ。タツは大きく避けると、須佐野の後方へと回り込む。須佐野はゆっくりと振り向いた。いつまでも避けれるはずもない。こちらからも攻撃しなければ‥。タツが意を決して構え直した時だった。突然、タツの隣から老婆が現れたのだ。着物を着た老婆はタツの前に立ち、須佐野の前に立ちはだかったのだ。
「‥!‥‥ば、婆ちゃん?」
タツが驚いた声を出す。そう。その老婆は、数年前に亡くなったタツの母方のお婆ちゃんだったのだ。タツの両親は共働きで帰ってくるのが遅かった為、タツは婆ちゃんっ子だった。学校から帰ってくると、いつも婆ちゃんと過ごした。裏の畑で胡瓜やトマトを一緒に取ったり、秋になると栗の木を婆ちゃんが棒で突いて落ちた栗を拾ったり。厳しいがいつも一緒にいてくれるのが婆ちゃんだった。そんな婆ちゃんの口癖が『婆ちゃんが歩けなくなったら、辰巳がおんぶしてくれなぁ』だった。だが、それは叶えてあげられなかった。婆ちゃんは体を壊すと、病院で寝たきりになってしまったのだ。タツも仕事で忙しくなり、数えるぐらいしかお見舞いに行けなかった。そして数年前に、夜中に一人で息を引き取ったのだった。
「ダメだ、婆ちゃん!危ないから、退がって!」
タツが慌てて叫ぶ。なぜ突然、死んだ婆ちゃんが現れたのかはわからない。だが、この男の持つ剣は、将吾君の持つ布都御魂と同じだろう。生身の人間も攻撃できるし、霊体への攻撃もできるはずだ。もし婆ちゃんが斬られれば、滅却となり完全に消えてしまう。婆ちゃんだけでも守らなければ‥。
「‥‥婆ちゃん?‥お前の婆ちゃんなのか?‥‥泣ける話しだな。孫を守る為に、わざわざ黄泉国より現れたのか?」
須佐野が鼻で笑う。
「‥やめろ!お前はこの剣が欲しいんだろ?婆ちゃんは関係ない!」
タツが必死に叫ぶ。だがタツのお婆ちゃんは、一歩前へ出た。そしてタツの方を見て軽く微笑んだ。いつもそうだった。いつもタツの面倒を見てくれた。タツの世話をしてくれた。タツの心配をしてくれた。
だが、タツは成長するにつれ、その心配が煩わしくなっていった。時に心無い酷い言葉をぶつけてしまう事もあった。だがそれを謝る事も、今までの感謝の気持ちも伝える事なく、婆ちゃんは亡くなってしまった。おんぶして貰うという願いも叶う事なく‥。僕は婆ちゃんに何も返してあげられなかった‥。情けない孫だ‥‥僕なんかを孫に持ったばっかりに‥‥。ごめんね‥‥婆ちゃん‥‥。気づくとタツの頬には涙が伝っていた。
「ダメだ!婆ちゃん、退がれぇ!」
タツが泣きながら叫んだ瞬間、タツのお婆ちゃんが須佐野に向かって右手を差し出す。すると宙に浮かぶ八本の剣の動きが止まったのだ。一斉に八岐大蛇の八匹の蛇が、須佐野に襲いかかる。
「‥!‥こんのクソババア‥。何をした?」
須佐野が怒りをあらわにし、両刃刀を振り上げた。
「婆ちゃん!」
タツが叫びながら須佐野に草薙の剣で斬りかかる。須佐野はタツの攻撃を難なくかわすと、タツのお婆ちゃんを斬りつけた。お婆ちゃんが血飛沫をあげて倒れる中、タツはお婆ちゃんの声を聞いた。
『‥辰巳、生きるんだよ。難しく考えなくていい‥。ただただ、生きなさい‥‥生きるという事は、簡単な事じゃない‥‥とても大変で難しい事なんだよ‥‥だから生きているだけで、美しく素晴らしい事なんだからね‥‥醜くてもいい‥‥惨めでもいい‥‥ひたすらに生きなさい‥』
その瞬間、タツの中で何かが切れた。
「うわあぁぁぁぁぁ!」
絶叫しながら須佐野に連続で斬りかかる。だが、須佐野は受け太刀しながら後ろへ退がった。動くようになった八本の剣が、八岐大蛇を再度牽制する。そして落ち着いてタツの攻撃を捌ききると、斜め上から両刃刀を振り下ろす。タツは右肩から左脇腹のかけて大きく斬られた。タツは血飛沫を上げながら、ゆっくりと仰向けに倒れたのだった。
タツは暗闇の中を走っていた。少し前をお婆ちゃんが歩いてる。お婆ちゃんの背中を必死に追いかけていた。謝らなければ‥‥。僕のせいで婆ちゃんは消えてなくなってしまう‥‥。感謝を伝えるどころか、魂が完全に消滅してしまう。待って‥婆ちゃん‥‥待ってくれ‥‥。だが、走っても走っても追いつかない。お婆ちゃんの背中は少しづつ薄くなり消えてしまいそうだ。待ってよ‥婆ちゃん‥‥。すると突然、明るい所へ出た。気づけばいつの間にか、お婆ちゃんを追い越していた。背後からお婆ちゃんの声が聞こえる。
『‥ここまで来れば大丈夫。みんなが待ってるよ‥‥』
タツが振り向くと、お婆ちゃんが光となり消えゆく瞬間だった。
「‥婆ちゃん、ごめんね。色々と面倒見てくれたのに、酷い事言って。それに約束も守れなかったし‥‥それに‥それに‥‥」
タツが泣きながら跪く。
「‥‥ありがとね‥‥婆ちゃん‥‥」
タツが言い終わらない内に、光は消えてしまったのだった。
陰陽神社の境内からは、子供達の遊ぶ声が聞こえる。十年前の事件から、誰も近寄らなくなってしまった陰陽神社。近隣住民からは『幽霊神社』と呼ばれ、心霊スポットになってしまっていた。だが最近になって、ひーちゃんが同じ小学校の子供達を連れて遊びにくるようになったのだ。ひーちゃんにしてみれば、陰陽神社に来る口実にもなる。最初は子供達も嫌がったようだが、アキ君も一緒に遊んだりしてくれる為、来てくれる子供達も徐々に増えてきたのだ。タツや双葉も時間が合えば、一緒に遊んだりした。奈美ちゃんはひーちゃんにしか見えない為、近くで見守っていた。クッキーは淤加美から『絶対に姿を見せるな』と言われていた為、居住家屋から出ないようにしていた。子供達が怖がるから、という理由だ。クッキーはいつものように、居住家屋でテレビを見ているとスマホが鳴った。スマホの画面を見ると斎藤からだった。
「もしもし‥‥‥そうか‥‥わかった‥」
スマホを切ると、ちょうどアキ君が戻ってきた所だった。
「‥いやぁ‥子供達の相手も大変ですね‥‥体力が‥‥無尽蔵というか‥」
アキ君は息があがっている。
「‥今、斎藤から連絡があった。タツの意識が戻ったそうだ」
クッキーが言うと、アキ君が
「‥!‥そうですかぁ‥‥よかったぁ」
大きな溜息と共に座り込む。疲れと安心で力が抜けたのだろう。
「まだ両親が面倒見てるようだ。俺は少し経ってから見舞いに行く。みんなはすぐに行ってやってくれ‥」
と、クッキーが言う。タツの両親に、タツがクッキーのような人間と付き合いがあると思われたくないのだろう。クッキーなりの配慮だ。
「そんな事、気にしなくてイイと思いますけどねぇ‥」
アキ君がクッキーに言うと
「‥イイんだよ。変な誤解をされて困るのはタツだ‥。双葉と将吾を連れて行ってやってくれ。天音も、もう退院したんだろ?‥‥まぁ、自宅療養中だからすぐには行けねぇか‥」
と、クッキーが言いながら、部屋にある古い昔ながらの黒いダイヤル式の電話の所へ行き、受話器を取りダイヤルを回した。
「‥‥‥あぁ‥淤加美か?タツが意識を取り戻したそうだ‥‥‥‥‥うるせぇなぁ‥‥声のボリュームなんとかしろ‥」
この黒電話は、黄泉国へ繫がる電話なのだ。どうやら電話の向こうでは、淤加美が嬉しさのあまり発狂してるようだ。
「‥‥あぁ‥‥奈美を連れて、お見舞いに行ってやれ‥‥こっちはアキが双葉達を連れて行くから‥‥あぁ‥‥またな‥」
言い終わるとクッキーは受話器を置いた。
「‥じゃあ、双葉ちゃんや将吾君達と連絡とって、来週にでもお見舞いに行ってきますよ‥。ホントにしばらく行かないんですか?」
アキ君が聞くと、クッキーは頷いた。
「あぁ‥‥後で様子見て行きゃあイイ‥」
そう言うと、クッキーは陰陽神社のお社の方に向かって、ニ礼二拍手一拝して一礼した。きっとタツ君の無事をお願いしていたんだろうな‥。アキ君はその後ろ姿を見て、そう思ったのだった。
次の週、アキ君は双葉達とタツのお見舞いに出かけて行った。午前中は検査など色々とあった為、昼過ぎから行く事にしたらしい。クッキーは一人、陰陽神社で留守番する事になった。しばらくすると、神社の境内が騒がしくなった。今日も子供達が、学校が終わって遊びに来たようだ。
クッキーが窓からそっと境内を見ると、子供達が数人境内を走り回っている。しばらくするとバタバタと足音が縁側の方から聞こえてきた。誰かが縁側の方に回り込んできたようだ。そして縁側のガラスの引き戸がガラガラと開く。縁側から顔を見せたのはひーちゃんだった。
「‥あれ?アキ君は?」
ひーちゃんが家の中を見渡しながら聞いてくる。
「‥‥いねぇよ。出かけてる」
クッキーが答えると、ひーちゃんが
「クッキーだけ?」
と、聞いてくる。
「お前もクッキー呼ばわりかよ?」
すかさずクッキーが突っ込む。ひーちゃんは楽しそうに笑っている。
「‥笑いごっちゃねぇよ‥‥ったく‥‥みんなはタツのお見舞いだ」
クッキーが教えてあげると
「タツ君、元気になったの?」
と、ひーちゃんが再度聞いてくる。
「あぁ。しばらくすれば、また一緒に遊べるぞ?」
と、クッキーが言うと
「やった!」
ひーちゃんは小さく叫ぶと、ガラス戸を閉めて行ってしまった。
立野市立病院の中をアキ君と双葉と将吾が歩いている。
「あ、ここだ‥」
双葉が小声で病室の入り口に貼ってあるネームプレートを指差した。アキ君が部屋の中を覗き込むと、中はベッドが四つある相部屋だった。タツは左奥のベッドのようだ。カーテン越しに話し声が聞こえてくる。アキ君がそっとカーテンを開けると、タツがベッドで寝ていて傍らには土方と近藤が立っていた。淤加美と奈美ちゃんもいる。
「どうもぉ」
土方が片手を挙げて、アキ君達に挨拶する。近藤も軽く会釈をした。アキ君達も会釈で返す。
「ついさっき、所轄の刑事の事情聴取が終わったトコなんだって‥」
淤加美がアキ君達に説明してくれる。
「そうだったんだ‥」
アキ君はタツの顔を覗きこみながら返事をした。タツの顔は思いのほか元気そうだった。きっと奈美ちゃんが傷口を塞いでくれたからだろう。医師達は脅威的な生命力だ、と驚いていたようだ。
「‥ご心配をおかけしました」
タツが申し訳なさそうな顔で言う。
「いやいや‥元気になってよかったよ。でも今回は本当に双葉ちゃんと奈美ちゃんに感謝だね」
と、アキ君が言う。奈美ちゃんの力については、淤加美から説明を受けたようだ。タツが二人に
「‥奈美さん、双葉さん。本当にありがとうございました」
と言い、寝たまま軽く頭を下げた。二人はいえいえと謙遜している。
「‥あと、亡くなった婆ちゃんにも助けられました‥」
タツが続けて独り言のように言う。怪訝な顔をするアキ君と双葉と将吾に
「危ない所に、亡くなったお婆さんが出てきて助けてくれたんだって。その後、須佐之男に‥‥」
淤加美が説明する。しばらくの間、沈黙が流れた。
「‥‥タツ君のご両親は今は自宅に戻ってるの。比較的、早めに退院出来そうだし」
土方が努めて明るく言うと
「‥そうなんですね。なら、クッキーさんも連れてくればよかった。クッキーさん、自分の過去と見た目を気にしちゃって‥」
アキ君も明るい声で答える。
「あの人でも、見た目を気にするんですね‥」
と、将吾が言うと、全員が一斉に将吾を見る。
「‥‥うわぁ‥クッキーに言っておくわ」
淤加美が言うと
「‥ご愁傷様です」
と、アキ君が将吾に手を合わせ
「あえて誰も言わなかったのに‥」
と、双葉が言い
「知ぃらないよぉ‥」
と、奈美ちゃんが意地悪そうに笑った。するとタツが吹き出し、その場が笑いに包まれたのだった。
「ヘクシッ!」
陰陽神社の居住家屋でクッキーはくしゃみをしていた。ティッシュで鼻をかみながら、ふと外を見る。子供達の遊ぶ声はまだ聞こえていた。数人の男の子達がドッジボールをして遊んでいる。何気なくその様子を見ていたクッキーが、突如凍りついた。視線の先、陰陽神社の入り口付近に知ってる顔の男が立っていたのだ。関東水神會の五島だ。ヤツら、遂にココを嗅ぎつけやがったか‥。だが、俺がこの家の中にいる事は、まだ気づいてないだろう。クッキーは薄いレースのカーテン越しに、急いで外にいる子供達の人数を数える。ドッジボールで遊んでる男女が八人。その近くで縄跳びをしている、ひーちゃんと女の子達が三人。急いでどこかへ避難させないと‥。五島の事だ。部下を連れて暴れ出すに違いない。子供達に怪我をさせたり、怖い思いはさせたくない。クッキーは五島の様子を伺いながら、大きな窓の方へ移動する。五島の動き次第では、飛び出して子供達の安全を確保する為だ。五島はゆっくりと鳥居を潜り、神社の境内へ入ってきた。子供達はまだ五島の存在に気づいてないようだ。すると五島の背後から部下達も陰陽神社の中へと入ってくる。一人の男性が五島の部下達に両脇を抱えられながら、引きずられるように現れた。
「‥!‥あれは?」
思わずクッキーが呟く。抱えられているのは、フリーのジャーナリストの菅野だ。なるほどな‥。ここの場所がバレたのは、そういう事か‥。ぐったりしているが、大丈夫だろうか?きっと酷い拷問を受けたに違いない‥。子供達も突然入ってきたガラの悪そうな大人達に気づいたようだ。クッキーは棚の引き出しから何かの鍵を取り出すと、ポケットにしまい窓を静かに開けた。
「久喜ぃぃ!出てこい、コラァ!」
「こいつがどうなっても知らんぞぉ!」
五島の部下達が叫び出した。子供達は驚いて、遊ぶのを止め固まっている。その瞬間、クッキーは時間軸を変えた。窓から飛び出すと、菅野の所まで走る。そして両脇を抱えている五島の部下達を殴り飛ばすと、菅野を担ぎ上げた。クッキーが菅野を担いで走り出すと、時間軸が元に戻る。その瞬間、もう一度時間軸を変えた。クッキーは居住家屋まで走り、玄関に菅野を降ろした。そして今度は五島達に向かって走り出す。時間軸が元に戻り、殴り飛ばされた五島の部下達が地面に転がった。
「みんな裏にある蔵に行け!早く!」
クッキーは子供達に向かって叫ぶが、子供達はポカンとしている。状況を把握していないのだ。するとひーちゃんが
「急いで蔵に逃げよう!」
と、叫んで他の子供達を促す。子供達は一斉に居住家屋の裏手にある蔵に向かって走り出した。
「久喜ぃぃぃ!やぁっと見つけたぜ!」
五島が叫ぶと地面がボコボコと動き出した。
「‥!‥なんだぁ?」
クッキーは異変を感じ取り、慌てて立ち止まる。すると地面から大きな木の根っこが何本も飛び出したのだ。木の根っこは地面から何メートルも高く伸びると、先を槍のように尖らせた。
そして一斉にクッキーに向かって襲いかかってきたのだ。クッキーは真横に走り出し、空から突き刺してくる根っこの槍をかわしていく。根っこの槍は次々と地面に突き刺さっていった。これは‥?まさか、五島がやっているのか?五島の体の周りには、いつの間にか黒い煙のようなものが纏っていた。呪力を付加された奈美の時と同じだ。と、言うことは五島も呪力を付加されたのか‥?とにかく、どういう事かはわからないが、神主と同じような力を持っているようだ。すると地面からさらに何本も木の根っこが飛び出した。まずい!数が多い!だが突然、木の根っこの動きが止まった。クッキーが周りを見ると、ひーちゃんが両手を開いて木の根っこの動きを止めていたのだ。クッキーはひーちゃんに向かって走り出した。他の子供達は全員、蔵の方に向かったようだ。
「よくやった!ナイスだ妃瑠子!」
クッキーは走りながらひーちゃんを抱き抱える。そして時間軸を変えた。そして蔵を目掛けて走る。時間軸が元に戻る頃には、居住家屋の裏手に回る事ができた。ここなら五島達からは死角になってるはずだ。クッキーは急いで蔵へと向かう。蔵の前には子供達が集まっていた。クッキーはひーちゃんを降ろすと、ポケットから鍵を取り出す。さっき棚の引き出しから取り出したのは、蔵の鍵だったのだ。
「何?何?あの人たち?」
「木の根っこがブワァァァって!」
「メチャメチャ怖え!」
「早く逃げないと!やばいよ!」
子供達が口々に叫んでいる。クッキーは蔵の鍵を開けると、子供達に中に入るように言う。ここでしばらく隠れさせるつもりなのだ。蔵は壁が強固で窓などがない為、外部から侵入しづらいのだ。それに以前、アキ君から聞いた話しでは、陰陽神社の居住家屋には結界が貼られてあり、特殊な呪符を持っていないと霊体などは入れないらしい。淤加美や奈美ちゃん、小雪達は呪符を持っているので出入りが出来るのだそうだ。そして奥にある蔵はより強力な結界が貼られているんだとか‥。つまりこの陰陽神社自体が、霊体にとっては強固な要塞なのだそうだ。蔵の中にいれば結界の力によって、五島の呪力による攻撃は受けないはずだ。鍵をかけておけば生身の人間の部下達も侵入できない。あとは菅野を連れてくる事が出来れば‥‥。
「いいか?みんなこの中にいるんだ!ここなら安全だ!絶対に外に出るなよ!」
クッキーが子供達に言う。子供達が急いで蔵の中に入っていく。すると子供の一人が
「あれ?凪がいない!」
と、叫んだ。子供達がお互いの顔を見合わせている。どうやら子供の一人がいないようだ。
「わかった!おじさんが見つけてくっから!お前らは絶対に外に出るなよ!」
クッキーが子供達に言うと
「アタシもいく!」
ひーちゃんが叫んだ。
「ダメだ!危なすぎる!」
クッキーがすかさず答えると
「クッキーはもう何回も時間変えてるじゃん!凪くんと菅野のおじさんも連れてこないといけないんでしょ?一人じゃ無理だよ!」
ひーちゃんが負けじと叫ぶ。クッキーは溜息をつくと、しゃがんでひーちゃんと目線を合わせた。
「‥妃瑠子、心配すんな。クッキーさんは無敵だ。大人しく待ってろ‥」
クッキーがひーちゃんの頭に手を置きながら言う。嘘だ‥‥自分が囮になってでも、みんなを守るつもりなんだ‥。ひーちゃんは心の中でそう思い、クッキーを見つめる。だがクッキーに促されて、渋々蔵の中へと入っていった。そう‥子供達だけでも守らなければ‥。扉が閉まると、蔵の中は子供達が興奮冷めやらず、いまだ騒いでいる。そんな中、ひーちゃんだけが蔵の中をしきりに見渡していた。蔵はかなり大きく、荷物が雑然と置いてあり薄暗い。埃っぽく蜘蛛の巣もあちこちにある。上の方を見ていたひーちゃんが何かを見つけた。それは蔵の壁の天井付近にある、小さな小窓だった。方向的に居住家屋の方に向いている。ひーちゃんは荷物をよじ登り小窓に向かっていったのだった。
陰陽神社の入り口の車道には、黒い高級車がズラリと並んで停まっていた。そこから森に囲まれた階段を登って境内までいくのだ。
「あれぇ‥‥なんでこんなに高級車が?」
退院して自宅療養していた岬天音が、陰陽神社に向かいながら呟いた。
名前:神直毘神
別名:神谷直人神谷 神谷さん
年齢:不詳 見た目は三十代後半ぐらい
守神:なし
能力:不明
備考:神人 穢れを祓い、厄災を祓う神様
黄泉国保安局局長
天照の直属の部下
淤加美とは何かとモメる為、一方的に嫌われてる




