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第十話:根本対策

 白崎家での夕食終わり、俺は一人、帰路についていた。

 結局、すっかり遅い時間になってしまった。

 ……これまでの人生で、同世代の人間とこれだけ長い時間、一緒に過ごした過去もないから、なんだかいつも以上に疲弊した気がするな。


『倉本君は、単独ファッションショーの審査員をお願いね』


 ただ、疲弊はしたものの、先週はやつれにやつれ切っていた白崎に少しは元気が出たなら、まあ良かった。

 成り行きで単独ファッションショーなるものを今後も継続的に付き合わさせられることにもなったが、それには目を瞑ろう。


「しかし、どうしたものか……」


 帰路にて、俺が腕組をしながら頭を悩ませていたのは、やはり白崎の今後の行く末について。


 ……本人の前では焦りを生む可能性があるから絶対に言わないが、俺の本音は、一日でも早く白崎にファッション系インフルエンサーの活動を再開してほしいと思っていた。


 ……そんなの当然じゃないか。


 白崎はファッションにおいて、インフルエンサーという地位を確立している。確立出来るだけの才能がある。才能を伸ばすだけの胆力もある。


 ……そんな彼女の類まれなる才能が、他人の醜い嫉妬で潰されるだなんて、やるせなくて仕方がないではないか。


 だから……本音では、逆境にめげることなく、白崎には心を強く持ち、早く活動を再開してほしいと思っているのだ。


 しかし、現状のままだとインフルエンサーの活動を再開しても、彼女を余計苦しめるかもしれない。

 彼女の才能を完全に潰す結果になるかもしれない。


 ……そんなことも当然、俺は望んじゃいないんだ。


 つまり、俺の願いはただ一つ。

 白崎が炎上騒動を何とか無事に乗り越えて、インフルエンサーの活動を再開させること。


 たったそれだけだった。


「でも、そんな難しいことを実現することは可能なんだろうか……?」


 電車の中、誰にも聞こえないような小さな声で俺は呟いた。


 正直、俺の願いは叶えることがとても難しいことに思えてならない。


 ……ふと思った。


 本当にそうなのだろうか?

 本当に、今の白崎の状況は……解決が難しい問題なのだろうか?


 いや勿論、人の感情が絡む問題なのだから、確実に解決出来る問題ではないことはわかっている。


 しかし……俺は自分が望む願いを、随分と漠然と考えていやしないだろうか。


 一つ一つ紐解いていかず、全体で見る対処しようとしているから……随分と大きく複雑な問題に見えてくるのではないだろうか?


 そもそも俺はこの問題にぶち合ってから一度たりとも、根本的な問題を考えてこなかった。

 多分、だから答えが見えてこなかったんだ。


 一度、冷静に紐解いてみるべきだ。


 白崎が炎上騒動を無事に乗り越えてインフルエンサーの活動を再開させるためには何をする必要があるのか。

 白崎が炎上騒動を無事に乗り越えてインフルエンサーの活動を再開させる時、障害になりそうな問題はなんなのか。


 しばらく俺は頭を悩ませた。

 ……そして、白崎の活動再開のためには、三つの問題があることに気が付いた。


 一つ目は、炎上騒動を起こした彼女が活動再開することで大衆が非難する可能性。

 この可能性は……限りなく低いと思える。

 そもそも今回の炎上は、何度も言うが白崎には一切の非がない。

 炎上後に相手を非難するようなこともせず、感情的になる間もなくひたすら投稿を控えている。

 もしかしたら……その対応が功を奏して、同情票も集まって、活動再開した時には非難どころか賞賛や労いの声が多数を占めるかもしれない。


 二つ目は、再び炎上する可能性。

 白崎に嫉妬し彼女を炎上させたフェミニストは既にSNS界隈から逃亡済み。しかし、そのフェミニストが残した置き土産か……今現在、白崎のアンチは大多数がフェミニストだ。

 元々、フェミニスト界隈は癖が強いことで有名だ。そんな癖が強い集団が、打ち倒された仲間の好敵手の再開を無言で見送るはずもない。

 再開早々、多数のフェミニストが白崎の投稿にかみつき、誹謗中傷まがいの発言を繰り返す姿は容易に想像がつく。


「……でも、白崎の強心臓なら、それも乗り越えられるんじゃなかろうか」


 白崎は、炎上している最中、自らのエゴサをするような強心臓を持っている。

 実は凹んでいたことも後に発覚したが、インフルエンサーの活動を続けたいという意思表示も見せていて、活動再開へ向けたモチベーションも高い。

 本人の意思は勿論聞くが、その程度の逆境なら時間の経過と共に乗り越えられるのではないだろうか。


 最後に……三つ目。

 正直、これが一番問題だと思っている。


「……白崎と私生活で絡む人は、彼女の活動再開を受け入れてくれるだろうか」


 白崎は悪意ある人間のせいで、実名と通っている高校という個人情報が流出してしまった。

 そして、学校そばに彼女のストーカーを呼び込む実害を生んでしまった。


 ……身バレした彼女がインフルエンサーとしての活動を続けることは、今後も今回同様の実害を、彼女が私生活で絡む人達に及ぼす可能性があるということに他ならない。

 

 ……部外者である彼女の友人達に、活動のために被害を被ってくれだなんて、とてもじゃないが彼女はお願い出来ないだろう。


 でも、今後も彼女がインフルエンサーとしての活動を続ける上で、周囲……特に、学校生活を共にするクラスメイトの協力は必要不可欠だ。


「……そもそもクラスメイトは今の白崎の現状を、どう思っているのだろう?」


 車窓から見える夜景を眺めながら、俺はぼんやりと思った。

2章完。

そろそろヒロインを自由にしたい。

ひたすら部屋にいられると話が膨らまないんや。。。


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真面目に考えとるなあ… しかし、後二話。どうなるんだろう。
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