挿話16 「このは」から「ナツメ」への手紙
ナツメちゃんへ
このはです。
最近、あんまり会えなくてごめんね。
何度か遊びに来てくれてたのに、私が寝てたりして。なんだかこの頃、時間が過ぎるのがやたらと早いんだよね。一度寝たら、三日過ぎた後の夜だった、みたいなことも結構あるし。その間隔が段々長くなってるっていうか……
ナツメちゃんに言ったら、「歳を取ったら時間が過ぎるのが早いっていうけど、その歳でそれはどうなの?」って呆れられそうだけど。
次、いつ会えるか分からないから、こうやって手紙を書いてます。
……うん、本当は分かってるんだ。
多分、これが最後の手紙になるから、私がいなくなった後に届けてもらうよう、頼んでます。
あんまり、深刻な話をしたいわけじゃないんだけど……何はともかく、言っておかなきゃならないことがあるんだ。
ちょっと前に、「ファイアリーソウルヒーローズⅡ」の設定集&ファンブックの予約販売が始まったでしょ? すぐさま予約上限数に到達してて、私もナツメちゃんも買えなかったアレ。実はその後、ちょっとだけキャンセルが出てたんだ。私、予約取れたんだよ!
発売は来月になるらしいんだけど。その配送先を、ナツメちゃん宛にしたんだ。
私の代わりに受け取ってくれると嬉しい。
それでね、特典があるらしいんだけど。ファンブックの。
雅仁と守のツーショット写真! 良かったねナツメちゃん。あと、後出しで別の特典もつくことになったらしくて。やっぱりブロマイドらしいんだけど、やたら大人数で集合してるやつ。なんかね、その中心にいるのが、悪の組織ののじゃロリなの。それと、のじゃロリの部下たち。不思議じゃない? 今のところ、のじゃロリもその部下も、意味深に画面の端に映って、「くく……楽しみにしておるぞ、ヒーローども……」って言うばかりの出番だけど。話ももうそろそろ佳境なのにね。今後、何か秘密が明かされたりするのかな?
最終回、私も見たかったな。
私が、割と異世界転生ものが好きなの、ナツメちゃんも知ってると思うんだけど。
あれって、死んだ後に始まる話じゃない。
普通のハッピーエンドだと、「そして彼らは幸せに暮らしました」で終わるけれど、その先、確実に死に別れが待ってるわけで。どんな王子様もお姫様も結局は死んじゃう。そう言うと、身も蓋もないけど。
異世界転生だと、また巡り会えるんだよね。
元の世界の友人とか恋人とかと、転生してまた会えたりする。それが本当に羨ましいなって。いいなって。
ナツメちゃんは、金持ちで身分が高くて美人のご令嬢とかに生まれ変わって欲しいな! 悪役令嬢だとスタートダッシュして頑張らなくちゃいけないから、ちょっと脇役で、それでしれっと玉の輿とか乗っちゃうキャラがいいな。ご都合主義万歳! 現実世界で玉の輿とか言ってても痛いだけだけど、異世界なら許される気がするんだよね。ナツメちゃん、なんなら銀河帝国の皇妃とかどう? 目指せ、銀河で一番の玉の輿!
それで、もし、私の魂が異世界に行けずにウロウロしてたら、ナツメちゃんが引っ張ってね。
小さい頃、いつでも、私がウロウロして道に迷ったりしていたら、ナツメちゃんが手を引いて連れて行ってくれたこと、私は忘れないから。私、どんくさかったと思うけど、一緒にいてくれてありがとう。
それに私、ナツメちゃんにお別れは言いたくないんだ。
だからきっと、異世界で会おうね。




