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「康祐クン?」
あたしはコーヒーをカップに注ぐとそれを何時ものように彼の待つリビングのガラステーブルの上にコトリと置いた。
でもあたしは何時ものように其処には腰を下ろさない。
ソファに座る彼を見下ろしていた。
「女じゃないよ?何言ってんの。大学ん時の潮田って奴だよ。前に話した事無かった?」
「そう。」
「あれ?香澄は、コーヒー飲まないの?」
冷静を保ちたい康祐クンはカップに手を伸ばす。
「康祐クン、あたし達今日で終わりにしない?」
極力何でもない世間話の様にあたしは言葉を口にした。
だからなのか彼も直ぐに返事を返さなかった。頭の中で言葉を整理したらしい。
「終わり?」
「あたしは貴方とフランスには行かない。もう二度と貴方とは会わない。」
「どういう事だよっ!!」
理解が終わったのか、彼はいきり立った。
「少なくても貴方はあたしを二度は裏切ってる。」
会社の後輩、庄野。そしてこの部屋に何度となく立ち居る康祐クンと同じ香水をつける誰か。
彼女が本命なのだろう。
彼女の為の、発砲水に彼女と飲む為の赤ワイン。
「半月前位かな、カフェで貴方と小嶋クンが話す傍にあたしも居たんだよ?」
「え?小嶋・・・?」
記憶を探り出そうとする彼を尻目にあたしは、リビングテーブルの椅子に掛けておいたコートを手に取る。
小さなバッグの中を探って、自分では一度も使わなかったこの部屋のスペアキーを取り出す。
それをテーブルに静かに置いてあたしは息を吐いた。
繋がりを断つ為の行為を行使出来た事であたしは安堵する。
記憶の糸を手繰り寄せたのか彼の顔は色を失くし始める。
「さようなら。」
ショートブーツに足を入れて金属製のドアを押し開ける。
背中でバタンと音がして、終わったのだと思う。
自らの意思で、自らの足で未来を歩き始めたのだと思う。




