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惰性だって何だって6年ってキャリアを積んだ会社もあたしに手を差し伸べない。
何ら取り柄もないあたしがこの就職難時代、どうしたら良い?
由梨ちゃんみたいにコンビニ?・・・向いてない。やる気も無い。興味も無い。
康祐クンとフランスで過ごす間に、彼も本当にあたしを必要としてくれるかもしれない。
うまく行けばそのままフランスに移住だってありえるかも・・・。
心の奥で思考する夢物語にあたしは鼻から笑いを洩らす。
康祐クンは間違いなく、2年のあたしの”通訳”が終わってあたしを厄介払いするだろう。
一緒に住んだらあぁだった、こうだったと性格の不一致を周囲に漏らせば良いのだ。
彼の経歴に傷がつく訳ではない。
端からその予定なのだろう。
馬鹿な女。
あっさりと彼の筋書き通りに退職願を書いた女・・・。
何も持ってないあたしがこれから生きてく為に、男に縋ろうとした事がそんなにいけない事だろうか。
「・・・あたしはただ・・・踏み外したくなかった。普通の道を普通に歩いて行きたかった。」
やっと喉の奥から出た答え。
「踏み外さないんじゃなくて、踏み出せないんじゃないの?・・・誰だって後悔はしたくない。」
「チロルの言う事は正当、正論だけど・・・綺麗事だと思う。」
「・・・そうだね。そうかもしれない。でもあたしは香澄の生き方に同調も同情もしない。
”こんなあたしはこんな風にしか生きれない”なんて思い込んでる人に、開くべき扉は現れない。」
ウーロン茶のグラスの中で氷が音を立てる。
周囲の喧騒が耳に戻って来た。
気付くとテーブルの上には適当につまめる料理が幾つか並んでいた。
「康祐クンが傍に居て必要とされてて・・・理由がどうであれ。・・・あたしの存在を
見つけられそうだった・・・。」
ユウがジョッキを又空けていて追加オーダーする。
チロルも巨峰サワーを空にして「同じものを」と店員に告げる。




