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13/53

<13>

「では、木曜日はミッシェルとは別の者が担当します。お時間は10時からです。」

あたしが申込変更書に記入後、新井さんが立ち上がった。

あたしも倣って立ち上がると彼女にお礼を述べる。

「素敵な2年間になると良いですね。」


身支度を整えミーティングルームを出ると、新井さんは既に大きなバッグを肩に下げ帰るところだった。

ビルのEV前であたし達は動く箱の到着を待った。

「大きな荷物ですね。」

沈黙を破ったのはあたしだった。

「あはは。ジャージとかタオルとかそういうの入ってるんです。あ、あたし実は役者の卵で。」

「。」

何だか唐突過ぎるほどの偶然にあたしは固まった。

「?え、何か・・・どうかしました?」

でもまさかそんな訳が・・・。

「あ。いえ・・・ごめんなさい。凄いなーと思って・・・。じゃぁこちらはバイトですか?」

「そうなんです。まだまだ食べていける程の者じゃないから。」

目の前でEVの扉が静かに開く。

彼女が階下のボタンを押した。

「野々原さんは4月からフランスに行くんですか?素敵でしょうねぇ。あたしヨーロッパには

 行った事が無くて・・・。」

あたしははにかむ様に口元を綻ばせる。


1階に降りると米人と思しき男性が笑顔で新井さんにハグをする。

英語も日常会話程度なら理解のあるあたしは、彼女達の会話に聞き入ってしまった。


「千夜、今度の公演観に行くよ。英語のガイダンスはついてないの?」

「残念だけどそれは無いの。だけどウィルだったら解るわよ!解らないところは愛に聞けば

 良いじゃない!」

「まぁそれもそうだね。チケット4枚買うから、支払いは明日で良いかい?」

「勿論。じゃぁ稽古に遅れるわ、又明日!」


・・・バイトというより、スクールの先生でも通る様な流暢な発音だった。


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