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「では、木曜日はミッシェルとは別の者が担当します。お時間は10時からです。」
あたしが申込変更書に記入後、新井さんが立ち上がった。
あたしも倣って立ち上がると彼女にお礼を述べる。
「素敵な2年間になると良いですね。」
身支度を整えミーティングルームを出ると、新井さんは既に大きなバッグを肩に下げ帰るところだった。
ビルのEV前であたし達は動く箱の到着を待った。
「大きな荷物ですね。」
沈黙を破ったのはあたしだった。
「あはは。ジャージとかタオルとかそういうの入ってるんです。あ、あたし実は役者の卵で。」
「。」
何だか唐突過ぎるほどの偶然にあたしは固まった。
「?え、何か・・・どうかしました?」
でもまさかそんな訳が・・・。
「あ。いえ・・・ごめんなさい。凄いなーと思って・・・。じゃぁこちらはバイトですか?」
「そうなんです。まだまだ食べていける程の者じゃないから。」
目の前でEVの扉が静かに開く。
彼女が階下のボタンを押した。
「野々原さんは4月からフランスに行くんですか?素敵でしょうねぇ。あたしヨーロッパには
行った事が無くて・・・。」
あたしははにかむ様に口元を綻ばせる。
1階に降りると米人と思しき男性が笑顔で新井さんにハグをする。
英語も日常会話程度なら理解のあるあたしは、彼女達の会話に聞き入ってしまった。
「千夜、今度の公演観に行くよ。英語のガイダンスはついてないの?」
「残念だけどそれは無いの。だけどウィルだったら解るわよ!解らないところは愛に聞けば
良いじゃない!」
「まぁそれもそうだね。チケット4枚買うから、支払いは明日で良いかい?」
「勿論。じゃぁ稽古に遅れるわ、又明日!」
・・・バイトというより、スクールの先生でも通る様な流暢な発音だった。




