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文化部、まさかの武道家育成部!?

 日が暮れる前に二人は帰宅した。沙羅は真平を自宅前で降ろすと、

「今日は付き合ってくれてアリガと♪」と爽やかな笑顔を見せた。

真平はサイドカーから降り、バイクのシートを軽く叩きながら肩をすくめる。

「まぁ、スリルはあったけどな……これで 戦士ツーリング も終わりか?」

「何言ってんの、また付き合ってもらうわよ?」沙羅はいたずらっぽく笑いながら、ヘルメットを脱ぐ。

「……はぁ。」真平はうんざりしたように額を押さえた。

「ふふっ、でも今日は楽しかったわ。 戦士の体 も、悪くないかもって思えたしね。」

沙羅はストレッチをするように腕を回し、自慢のシックスパックを撫でた。

「だからって 戦士 であり続ける必要はねぇんじゃねぇの?」真平が呆れながらツッコむ。

「え~? せっかくここまで鍛えられたんだし、これからも 強く美しく 生きるって決めたのよ。」沙羅は冗談めかして胸を張る。

「……俺も文化部でいろいろ振り回されてるけど、おまえほど 進化 したヤツは初めて見たわ。」

「まぁね♪」沙羅はウィンクをして、バイクを降りる。

「じゃ、あたしお店手伝わないといけないから、雑用係!」

「おい、せめて ツーリング仲間 とかにしてくれよ……。」

「じゃあ 戦士の相棒 ってことで!」

「なんか、グレードアップしてねぇか、それ?」

真平と沙羅は別れ、沙羅は自宅ガレージにサイドカーを押していく。

その夜——。

明日は日曜日。真平は今度こそ夜更かしライフを楽しもうと、スナック菓子とお茶の準備をした。

袋を開け、お気に入りのマグカップにお茶を注ぎ、ゲーム機に手をかけたその瞬間——

バンバンバン!!!

外のベランダから、何者かが乱暴に何かを叩いている音がする。

「……は?」

一瞬、昨夜の悪夢が蘇る。

——ベランダに立つ、夜の闇に溶け込んだ筋肉質な女戦士の姿……。

——そして、無言で服をめくり、自慢のシックスパックを見せつける恐怖……。

「いやいやいや、さすがにもう来ねぇだろ!!? 今日はツーリングで満足したはずだろ!?」

恐る恐るカーテンを少し開ける。

——いた。

満月に照らされた戦士・磯貝沙羅が、タンクトップ&ショートパンツ姿で立っていた。

「……な、なんで今夜もいるんだよぉぉぉ!!?」

「開けなさい、雑用係!!!」

バン!!!

ガラスを叩く音が響く。

真平は悲鳴を上げる寸前だったが、なんとか冷静さを保とうと深呼吸する。

「おい、待て待て待て!! もう夜遅いんだぞ!? 何しに来たんだよ!!?」

「これ見なさい!」

そう言って沙羅は腕を捲り上げ、見事な直角の二の腕を披露した。

「……いやいやいやいや!!!!!?」

真平は、思わずスナック菓子をぶちまけた。

「お前、また進化してんのかよ!!???」

タンクトップ姿の沙羅は誇らしげに逞しい二の腕を見せつけている。

いや、もうこれは筋肉の域を超えて“鍛え抜かれたアスリート”のそれである。

「どうよ!?」

「どうよじゃねぇよ!!!!」

真平は頭を抱え、全力で現実逃避を試みたが、目の前の光景が変わるわけもなく。

「さっきね、バイト終わりにお好み焼きの鉄板をどかそうとしたのよ。そしたら……」

「……そしたら?」

「鉄板が浮いたわ。」

「は???」

「片手で。」

「はぁぁぁぁ!?!?!?!?」

真平は思わずベランダの窓を全開にして叫んだ。

「なぁ、ちょっと待てよ……今なんつった……?」

「だから、片手で鉄板持ち上げたのよ。普通なら重くて持ち上げるのも一苦労なのに、なんか『あれ? 軽い?』って感じで……」

「……いや、お前、それもう文化部じゃねぇよ!!!」

「文化部じゃなかったら何よ?」

「完全に格闘系の漫画の ライバルキャラ じゃねぇか!!!?」

「……あっ。」

沙羅は何かを悟ったように自分の腕を見つめる。

そして、静かに真平を見据えた。

「……真平、私……どうすればいいと思う?」

「専門家に聞こう」

「専門家?」

「いるだろう、うちの部には秘密兵器が!」

「……シャオ!!!」

真平は即座にシャオに電話をかけた。

「パォ~♪ もしもし~? どうしましたか~?」

「シャオ!!! 今すぐ助けてくれ!!!」

「パォ!? 先輩、何があったんですか~?」

「うちの 戦士 がまた進化しちまったんだよ!!!」

「パォ~? 戦士の進化 ……?」

「もう文化部の枠超えて 格闘漫画のライバルキャラ になりつつあるんだよ!!!」

「パォ~♪ それは 文化部の誇り ですね~!」

「誇りとか言ってる場合じゃねぇんだよ!!! いいからなんとかしてくれ!!!」

「……うーん……」

シャオはしばらく考え込んだ後、少し興奮した声で答えた。

「パォ~♪ これは 気功 かもしれませんね~!」

「は?」

「沙羅先輩の筋肉は ただの筋肉 じゃなくて、ちゃんと 使い方 を覚えれば 伝説の武術家 になれるかもです~♪」

「明日俺んち来てくれ」藁にも縋る思いの真平はシャオにすがった。

しかし、そのとき——

バン!!!!!!ドアが勢いよく開いた。

「ちょっとぉぉぉぉ!!!! またうるさいんですけどぉぉぉぉぉ!!!!!?」

完全にブチ切れた伊勢野巫鈴が立っていた。

「お兄ちゃん!!! また 深夜の騒動 やってるの!? って、今度は何!?」

「いや、聞いてくれ巫鈴!! 俺はただ 普通に夜更かし しようとしてただけなんだ!!!」

「文化部は 武道部 じゃないのよ!!!!!!!」

巫鈴の絶叫が、夜の伊勢野家に響き渡った——。

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