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わたしのおじさん

 放課後、文化部の部室に入ると、そこには見知らぬ男性が座っていた。勇馬と美優が楽しそうにその男性と談笑している。

「え……誰?」

 真平が思わず足を止める。普段から賑やかな部室とはいえ、知らない大人がいるのはさすがに珍しい。

「パォ~!? 先生の知り合いですか~?」

シャオも驚きながら、そっと真平の後ろに隠れる。

 その男性は五十代くらいだろうか。ダンディなスーツ姿に、文化部のテーブルには、すでに美優の淹れた湯呑みが置かれ、まるでここが自分の居場所であるかのようにくつろいでいた。

「おぉ、君が真平くんかい、うちの姫は元気かい?」

 穏やかな笑顔を見せながら、そう尋ねる。

「姫……?」

 真平は戸惑いながらシャオのほうをちらりと見た。

(……もしかしてシャオの親族?)

 真平がちらりとシャオを見ると、彼女もきょとんとした顔で男性を見つめていた。

「パォ~!? 私のおじさんですか~?」シャオは驚きながら、男性をまじまじと見つめる。

「おじさん?」男性は不思議そうに首をかしげる。

「いや、だって うちの姫 って言ったら、シャオしかいないじゃん」

 真平は当然のようにそう言い、沙羅も「台湾財閥の お嬢様 なら 姫 って呼ばれてもおかしくないしな」と頷いた。

「パォ~♪ まさか 遠い親戚 ですか~!?」

シャオは急に緊張し、文化部全員が「まじで!?」と一斉にざわつく。

「いやいやいや、待て待て!」男性は慌てて手を振った。

「私は シャオちゃんのおじさん じゃないよ。私は琴美の おじ だよ」

「ええええええっ!? 琴美先輩の!?」シャオと真平は驚愕の声を上げた。

 その瞬間——

「基弘おじさ~~ん!!!」

 部室の扉が勢いよく開き、琴美が駆け込んできた。

「あっ、姫!」男性は満面の笑みで立ち上がる。

「え……? ええええ!? 琴美が 姫 なの!?!?」真平はさらに混乱した。

「いや、琴美の 姫 要素ってどこに……?」沙羅も困惑している。

「おじさ~ん! 何で文化部にいるのよ!?」琴美は男性の肩を軽く叩きながら、まるで子供の頃のように甘えた声を出した。

「こっちに仕事で来たついでに、 お転婆姫 の様子を見に来たんだよ」

「もう お転婆姫 は卒業したってば!」

「いやいや、お前が 卒業 できるわけないだろ?」

 琴美のおじさんはケラケラと笑いながら琴美の頭をポンポンと撫でる。

「昔から木登りばっかりして、倉庫に入り浸って、昭和の玩具を 宝物 みたいにしてたんだからな。まさに 姫 だよ、お転婆姫」

「おじさん! 変な話しないでってば!」

「……いや、ちょっと待て」真平はようやく状況を整理し、深刻な顔で琴美を見た。

「つまり琴美が 姫 で、さっきの うちの姫は元気かい? ってのは、お前のことを言ってたわけ?」

「そうだけど?」

「……いや、 シャオの財閥親族 かと思って、めちゃくちゃ緊張してたんだけど!!!」

「パォ~!? 私も 遠い親戚 だと思ってました~!」

 二人がそろって崩れ落ちる。

「なんで 文化部 でこんなミスコミュニケーションが起きるんだよ!?」

「いや、だって 姫 って聞いたら、普通 お嬢様 を思い浮かべるじゃん!」

「琴美先輩、お姫様っていうより 将軍 っぽいのに!」

「おい、シャオ!! それはどういう意味!!」

「ま、まあ、こうして元気そうで何よりだ」琴美のおじさんは満足げにお茶をすすった。

 琴美のおじさんは部室を見回し「おぉ、俺の愛機PC8801FR!ここで活躍してるんだ」と満足気にパソコンを眺める。

「倉庫にあるほとんどの昭和はおじさんの物だもの」琴美は胸をはって言い切る。

「はっはっはっはっは倉庫の肥やしになるより、こうして使ってもらえる方がよい」基弘おじさんは豪快に笑った。

「……ちょっと待て、琴美」

 真平が眉をひそめ、じっと琴美を見た。「つまり、あの倉庫にあるレトロな家電とか、パソコンとか、お前の コレクション じゃなくて——」

「——もともとは おじさんの ってことか?」

「そうよ!」

 琴美は誇らしげに胸を張った。「うちのおじさん、昔から ゲームオタク なの! だからあの倉庫は、いわば 私の聖地 なのよ!!」

「いや、お前の 聖地 じゃなくて おじさんの倉庫 だろ……!」真平はがっくりと肩を落とした。

「そうだったんですか~!」

 シャオは目を輝かせながら基弘おじさんを見つめた。「じゃあ、私たちが使ってる PC8801FR や ゲームウォッチ も、おじさんの 文化遺産 なんですね!」

「うむ、そういうことだ!」

 基弘おじさんは満足げに頷く。「あれもこれも、俺が若い頃に集めたものだが、今こうして若い世代が活用してくれているとは、感慨深いな!」

「はっはっはっはっは!」

基弘おじさんは豪快に笑いながら、テーブルに並べられたレトロな機器を眺めた。

「でもさぁ……」

 沙羅が腕を組みながら、おじさんと琴美を交互に見つめる。「こんな 昭和マニア の血筋なら、琴美が 昭和脳 になるのも納得って感じだな……」

「おい!! なによ 昭和脳 って!!!」琴美が勢いよく沙羅に食ってかかるが、沙羅は冷静に肩をすくめた。

「でも実際そうじゃん? だって 家系的に受け継がれた ってことだろ?」

「確かに……」

 美優はほわほわとお茶をすすりながら頷いた。「琴美先輩が 昭和 に詳しいのは、おじさんの影響だったんですね~♪」

「おぉぉ! 文化は 継承 されるものだからな!!」

 基弘おじさんは満面の笑みで頷いた。「しかし、まさか 文化部 という形で受け継がれるとは思わなかったな!」

 それから文化部のメンバーは、基弘おじさんから昭和の生の体験談をたっぷりと聞くことになった。みんなの昭和知識レベルが確実に上がった。

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