甘~い迷惑
琴美が突然、部室のちゃぶ台をバンッと叩きながら立ち上がった。
「皆さん!明日はバレンタインデーです!」
「知ってるよ。」真平が淡々と返す。
「昭和のバレンタインを再現するために、今日は手作りチョコを作ります!」
「昭和も何も、手作りチョコは現代でも普通だろ。」沙羅がツッコミを入れるが、琴美は全く聞いていない。
琴美が持ち込んだ材料を見て、真平と沙羅は絶句した。
板チョコ、牛乳…そしてなぜか醤油と味噌まである。
「ちょっと待て!なんで味噌とか醤油があるんだ?」真平が尋ねると、琴美は自信満々で答える。
「昭和の人々は工夫を凝らしていたのよ!甘いだけのチョコじゃつまらないから、和のテイストを加えた新感覚チョコを作るの!」
「どう考えても地雷じゃん…」沙羅が呆れた表情を浮かべる。
琴美はまず鍋に板チョコを入れ、湯煎で溶かし始めた。ここまでは普通だが、そこに牛乳をドバッと入れ、さらに味噌をスプーン1杯投入。
「何してんだ!」真平が叫ぶと、琴美は「これが和風テイストよ!」と胸を張る。
「いや、もう失敗の匂いしかしないんだけど。」沙羅が鼻をつまむ。
続いて琴美は醤油を数滴垂らした。
「よし!これで絶対に美味しいチョコになるはず!」
鍋から立ち上る香ばしい(というより異様な)匂いに、真平と沙羅は顔をしかめた。
「琴美、味見してみろよ。」真平が恐る恐る言うと、琴美は「もちろん!」とスプーンを口に運んだ。
次の瞬間、琴美の顔が一気に青ざめる。
「……これは、深い味わいね!」
「嘘つけ!」沙羅と真平が声を揃えて叫ぶ。
なんとか固めたチョコは、形だけはまともに見えた。しかし、部室中に漂う異様な香りは隠しようがない。
「さあ!真平、試食してみて!」琴美がドヤ顔で差し出す。
「絶対嫌だ!」
「何言ってるのよ!バレンタインなんだから、女子が作ったチョコを食べるのが男の役目でしょ!」
「いやいや、これはもはや罰ゲームだろ!」真平が拒否すると、沙羅が「じゃあ、私が食べてあげるわ」と名乗り出た。
沙羅が一口食べると、途端に顔が引きつる。
「これ、チョコの味じゃない…味噌汁を固めた感じ。」
「そんなバレンタイン嫌すぎるだろ!」真平がツッコミを入れる。
「もういいわ!これが昭和の魂なの!」琴美が叫びながら、謎のチョコを自分で食べ始める。
「琴美、やめとけって!」真平が止めるが、琴美は「私は信じる!」と勢いよく口に運ぶ。
そして次の瞬間、彼女は喉を押さえながら悶絶した。
「信じた結果がこれかよ!」沙羅が大爆笑する。
翌日昼休みに琴美は真平に家の買い置きですと言わんばかりのチョコレート(板チョコ 売価二桁)をさぁ受け取れと言わんばかりのドヤ顔で渡した。
一方、沙羅も放課後をチョコを渡してきた。
「真平!じゃ~ん。はい、コレ。バレンタイン!!」
かわいらしい箱を受け取り開けてみると、そこには約直径12位の小さなチョコレートのホールケーキが収まっていた。上には板チョコがメッセージボードの役割をするようにクリームで「いつも、ありがとう」と記されていた。
「うわっ、奇麗なチョコレートケーキ!もしかして昼休み?」
「うん、これ受け取りに行ってた。真平にはずっと世話になってるもの、家の買い置きセール品二桁なんて絶対に渡せないわ」そういいながらゴミ箱の板チョコ包み紙をチラリその後勝ち誇ったようなドヤ顔を琴美に向けた。
「食べさせてあげる」と二人に琴美がすごい剣幕で部室を出て行く。
やがて大量のチョコレートを下げて戻ってくると炊事場へと消えた、チョコレートを鍋に放り込み火をかける
液状のチョコレートが大量に出来る、チョコレートドリンクと言ってマグカップに注ぎ真平に出す琴美、完全に引きつっている真平に唖然とする沙羅は悪態をつくのも忘れて引いており、琴美は目を輝かせて感想待ちしている。平静を装うのに全身系を集中させ、クピっと一口すする、真平は覚悟を決め一気にカップを傾ける。
(飲み込めない・・・顎がとかされるようだ)ほっぺが落ちるとよく言うがあの真逆だ、
「早く!」と琴美はマグカップをクイと押す、真平の喉から胃に大量のチョコレートが注がれる。
「まぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」
絶叫した真平はチョコレートを吐き出して気絶する、残った二人はチョコまみれ。
「いやん、べとべとする」
「このドアホ!!!」沙羅が絶叫した。