さよならと夏休み
蝉の声がにぎやかに響く中、1学期の終業式が無事に終わった。
体育館での全校集会を終えて、日ノ本文化部のメンバーたちは、部室に集まっていた。
「ついに夏休みだーっ!」
琴美がいつもの調子で叫ぶと、真平が机に突っ伏しながら呟く。
「やっとテストから解放された…。補習無しで済んでホントよかったわ。」
一方、シャオは窓から部室に差し込む日差しを見つめながら、満面の笑みを浮かべていた。
「パォ~! 日本の夏って、いよいよ始まる感じですね~! 私、花火大会も行きたいし、お祭りも見たいです~!」
「えへへ~、夏休みってたくさんお菓子作れるから楽しみです~♪」
美優はほんわか笑顔で、早速夏休みのスイーツプランを考えている様子。
勇馬はメガネをクイッと押し上げながら、手元のノートパソコンを操作している。
「僕は宿題を片付けつつ、夏休みにレトロPCの修理でもしようかと…。あと、新しい昭和クイズのデータ作りも進めたいですね。」
部員がそろわないことにイライラし出した琴美は「ねぇ沙羅は?」真平に聞いた。「沙羅なら駅」少し驚いた琴美は「なんでよ!」と問い詰める。
真平はシャオと向かい合ってアーケードテーブル筐体で遊びながら琴美の質問に答えていく。真平が転校すると言いかけた時。琴美は「なんですって!!」と大声をあげて部室を飛び出して行ってしまった。
「転校するクラスメートの見送りっていないよ!」真平たち日ノ本文化部もあわてて追いかける。
駅に到着すると、見送りを終えた沙羅のクラスメートたちがちらほらと駅前に散らばっていた。
沙羅はホーム近くのベンチで一人座っており、何かを考え込んでいるようだった。
「沙羅!」
琴美が真っ先に駆け寄る。息を切らせながらも、いきなり彼女に詰め寄った。
「いきなりいなくなるなんてひどいじゃない!そりゃあたしあんたのこと嫌いよ、デスノート手にいれたら真っ先に名前書いてやろうと思ってるし・・・けどけど・・・日ノ本文化部の仲間じゃない!!黙って行くなんてひどいわ!!!」琴美の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
それに対して沙羅は思いっきり「はぁ~~~~~~~~~~~~~」とため息をした。そこに真平を含む日ノ本文化部が到着した。
「琴美、おまえマラソン選手になれ…足速すぎだろ…」
真平は肩で息をしながら琴美に追いついた。
「パォ~! 琴美先輩、なんでそんなに速いんですか~?」
シャオも額に汗を浮かべながら、驚いた様子で尋ねる。
「だって沙羅がいなくなるなんて…そんなん耐えられるわけないじゃない!」
琴美は涙目で叫ぶと、再び沙羅に詰め寄る。
沙羅は肩をすくめながら、琴美に手を挙げて「ちょっと待ちなさい」と言った。
「まず、落ち着いて聞きなさいよ。誰が“私が”転校するって言ったの?」
「だって、駅で見送りとか…普通、自分が行くからだと思うじゃない!」
琴美が半泣きで抗議する中、真平が手を挙げて遮る。
「いやいや、俺言っただろ。沙羅じゃなくて“沙羅のクラスメート”が転校するんだって。」
「えっ…?」
琴美が目を丸くして、沙羅を見つめる。
沙羅はため息をつきながら言い放った。
「そうよ。私のクラスの子が引っ越すことになったの。それで見送りに来ただけ。」
「転校しないの?」「しないよ」「親の仕事の関係」「うちは自営業」
琴美の顔がみるみる真っ赤になっていく、そして「バカ~~~~~~~~~~~~」と真平に思い切りビンタした。
「なんで俺がぁ…」真平は頬を押さえながら、涙目で琴美を睨む。
「だって、あんたが言い方を曖昧にするからじゃない!」琴美は勢いよく反論し、まだ怒り心頭の様子だ。
「いやいや、ちゃんと言ったってば! お前が話を聞かずに飛び出してっただけだろ!」真平も必死に抗議するが、琴美は「そういう態度がムカつくのよ!」とさらに声を荒げる。
一方、沙羅は冷静そのもの。
「…で、結局どうするの? 駅まで全力疾走したおかげで、アンタたち汗だくだけど。」
沙羅が皮肉混じりに言うと、シャオが「パォ~! ホントに琴美先輩、すごい勢いでしたよ~!」と笑顔で補足。
「パォ~! それで琴美先輩、デスノートの話まで出したんですね~?」
シャオが無邪気に笑うと、琴美は「あれは勢いよ!」と赤面しながら叫ぶ。
「でも、琴美の言うこと、少しだけ分かるかも。」
美優がほんわか笑いながら、静かに言った。
「沙羅さんがいなくなるなんて、本当にびっくりしちゃいますよね~♪」
「私がいなくなるなんて、そんな予定ないから安心しなさいよ。」
沙羅が少し笑いながらも、琴美に視線を向ける。
「…でもまあ、“日ノ本文化部の仲間”って言ってくれるのは、ちょっと嬉しいわ。」
「でしょ!」
琴美は涙を拭いながら胸を張ると、沙羅が「ただし、デスノートの件は許さないからね」とチクリ。
「ごめんごめん! 冗談よ、冗談!」
琴美は慌てて手を振りながら、沙羅に近づく。
勇馬はメガネを押し上げながら、落ち着いた声で提案する。
「とりあえず、駅前で騒いでると目立つから、一旦どこかで休憩しましょうか。冷たい飲み物でも買って、落ち着いて話しましょう。」
「近いしあたしンち行こ、送別会も交えて」沙羅が琴美をちゃかす。「バカ~~~~~~~~~~~~」とまた真平にビンタした。
「また、なんでおれがぁ・・・」
蝉の声と共に、彼らの夏休みが始まる。
こうして、ドタバタの誤解騒動は笑い声と共に幕を閉じた。
日ノ本文化部のメンバーたちは、また新しい夏の冒険へと歩み出していく。




