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放課後ダイ乱闘

 翌日、大きめのマスクをして登校した琴美と沙羅は、お互いをちらっと見るものの、何も言わずにそっぽを向いた。真平はそんな二人を見て、思わずため息をついた。「お前ら、またなんかやらかしたのか?」と問いかけたが、二人とも顔を赤くして無言のまま教室へ向かった。


 昼休みになると、真平は旧校舎の日ノ本文化部の部室へ向かった。いつものように応接テーブルに座り、弁当を広げた。しばらくすると、部室の扉が開き、琴美が入ってきた。「真平、今日も部活だからね!」と宣言するように言うと、弁当を広げる真平の隣に座った。


「昨日は悪かったな、琴美」と真平が言うと、琴美は少し顔を赤らめながら「別にいいわよ」とぶっきらぼうに答えた。そんなやり取りをしているところに、今度は沙羅が入ってきた。


「やっほー、真平。琴美もいるんだね」と軽く手を振りながら沙羅が入ってきた。琴美は一瞬表情を硬くしたが、何とか気を取り直し、「あんた、まだ入部するつもりなの?」と冷たい声で言った。


 沙羅はにっこり笑いながら、「もちろんよ。昨日のことは謝るから、これからはちゃんとやるわ」と素直に頭を下げた。その姿を見て、琴美は少し驚いた様子で、「ふん、別に謝らなくてもいいわよ」と照れ隠しのようにそっぽを向いた。


「真平に言ったんですけど」琴美の額にピクリと反応があった


 昼休みの旧校舎の日ノ本文化部の部室は、何とも言えない緊張感が漂っていた。琴美と沙羅が顔を合わせるたびに小さな火花が散るようで、真平はその間に挟まれる形で、どこか落ち着かない表情を浮かべていた。少し悩んで口を開いた。


「2人とも放課後隣の元職員室行こ。倉庫みたいになってて昭和の面白いものがたくさんあるんだぜ」


 琴美と沙羅は真平の提案に驚いた表情を見せたが、すぐにお互いにちらっと視線を投げ合った。そして、琴美が少し不満そうに唇を尖らせて、「…別に行ってもいいけど、あんたがちゃんと案内してよね」と言った。一方で、沙羅は楽しげに「昭和の面白いものねぇ!楽しみにしてるわ」と、興味津々の様子を見せた。


 放課後、真平、琴美、沙羅の3人は旧校舎の隣の元職員室に向かった。そこは古びたドアや窓、積み重なったダンボールや書類があり、まさに倉庫のような雰囲気だった。埃っぽい匂いが漂い、どこか歴史の重みを感じさせる場所だ。


「ほら、見ろよ!」と真平が指さした先には、昭和時代のポスターや古い家電、紙芝居のセットまで残されていた。琴美は少し興味を引かれたように近寄って、古いラジオを手に取った。「これ、まだ動くのかな…」とつぶやきながら、どこか懐かしそうに眺めている。


 沙羅も負けじと、ボロボロの写真アルバムを見つけてページをめくっていた。「これ、たぶんこの学校の昔の生徒たちよね。みんな笑ってる…今とあんまり変わらないかも?」と、沙羅が笑いながら言うと、琴美も思わず微笑みを浮かべた。


「二人とも見ろコレ」真平はあるものを見せた。


「人生ゲーム」沙羅がつぶやく


 真平が手に取って見せたのは、昭和時代の「人生ゲーム」のボードだった。少し色あせていたが、ボードには懐かしい絵柄と古いスタイルのマスが並び、いかにも時代を感じさせる雰囲気が漂っている。


「これ、今でも遊べるのかな?」と沙羅がボードを見つめながらつぶやいた。琴美もそれを見て、少し興味を持った様子で「やってみる?どうせ暇だし」と言った。沙羅も「やるやる!」と乗り気になり、真平はボードを机の上に広げた。


 3人はボードゲームのルールを確認しながら、駒を並べてスタートの準備を整えた。始めはぎこちなかったものの、ゲームが進むにつれて徐々に熱が入り、琴美と沙羅も夢中で駒を進めていく。お互いの駒が進むたびに、笑ったり文句を言ったりと、賑やかな時間が流れた。


 真平は、険悪だった琴美と沙羅が笑い合いながら遊んでいる様子を見て、心の中でほっとしていた。やがて、二人はふとした瞬間に目を合わせ、照れくさそうに微笑んでいた。昭和の古びた元職員室で、少しずつ距離が縮まる琴美と沙羅を感じながら、真平も笑みを浮かべて駒を進めるのだった。


 だがゲームが終盤に差し掛かった時!


「あぁ~~~~!!!」琴美が悲鳴をあげた。ルーレットが9に止まりかけた時、沙羅が分かりやすいイカサマをした。


「なにすんのよ!バカ!!」と怒鳴ると。


 沙羅はなんのことやらとこれまたわかりやすいくらいにすっとぼける。「もぉ~~~」と琴美が勢いよく机に手をかけるとその反動でコマが思い切り崩れた。すると今度は沙羅が


「あぁ~~~~!!!」悲鳴をあげた。この時点で一番のお金持ちは彼女であった。


ゲームの終盤、予期せぬ大混乱が巻き起こり、部屋中に笑いと怒声が響いた。琴美と沙羅のコマが崩れ、お金の山がぐちゃぐちゃに散らばる。真平はその光景を見て、半分呆れながらも、思わず吹き出した。


「お前ら、ほんとに騒がしいな…」と苦笑しながらも、二人の姿を微笑ましく見守っていた。


「結局最後はコレにたどり着くのね」と琴美は両肩をグルグルと回しだした。沙羅は余裕しゃくしゃくの表情で指をならす。


「えぇ~~~またかいな」真平は必死に二人をなだめようとする。


「琴美、沙羅、ちょっと落ち着けって!」と真平が手を広げて二人の間に立ち塞がる。琴美は腕まくりしながら真平をにらみ、「あんた、これ見逃すつもりなの?」と強気な口調で詰め寄る。一方、沙羅は片眉を上げ、「何言ってるの?真平はただ公平に見てただけじゃない」と挑発的な笑みを浮かべた。




 切れた琴美は昨日とちがい利き腕からの渾身のストレートを沙羅も軽く構えストレートを、


「よせ!二人とも」真平が間に立ちふさがった。次の瞬間、顔面にきついストレートが当たる音が二つ同時に響いた。


「あぁぁ」頬と目に渾身のストレートをくらった真平はそのまま膝から崩れ落ちる。




「どうしよう・・・死んじゃったかな・・・」不安げな琴美に対して「そうなったら死体をどうするかだな」と冷静な沙羅。


「あぁ二人が協力して何かをしようとしてる」薄れゆく意識の中、真平はこれを機会に歩み寄ってくれればいいと思いながら試合終了のゴングが聞こえたような気がした。

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