倉庫で発見
部室の隣にある、使われなくなった元職員室。
数年前から倉庫代わりに使われているというその部屋には、昭和の文化を愛する日ノ本文化部が「何かお宝が眠っているかもしれない」と目をつけていた。埃だらけの扉の向こうに、どんな秘密が隠されているのか――想像するだけで胸が高鳴る。
放課後、薄暗くなりかけた廊下に、六人の足音が響く。
先頭を歩くのは、熱い昭和愛を持つ二年生の琴美。前回、学校の倉庫でマイコンBASICマガジンを見つけて以来、彼女の“昭和探究心”はさらに加速しているようだ。「みんな、今日はここを攻略するわよ! きっと昭和の宝物があるはず!」淡い蛍光灯の光の中、彼女が扉の前でくるりと振り返ると、後ろでは真平が半ば呆れたように肩をすくめている。「またかよ…前に宿直室を探検したときも散々だったじゃん。ほこりまみれになるのは勘弁してくれよ。」
「まぁ、何があるかはちょっと興味あるけど。危険な虫とか出てきたら嫌だけどね。」クールな表情で警戒を示すのは沙羅。しかし、彼女の言葉にはどこか楽しげな響きも含まれている。
一方、理詰めで動く勇馬はすでに周辺をリサーチ済みらしく、スマートフォンを片手に情報を確認中だ。「僕も軽く調べましたが、この部屋には古い文書や道具が放置されているらしいんです。昭和末期のパソコンが眠っているって噂もありましたし。」「パォ~! 探検ですね~! わくわくします~!」
日本語を勉強中の留学生、シャオが無邪気に声を上げる。見慣れぬ場所への好奇心でいっぱいなのだろう。
そして最後に、ほんわかした声で笑うのは美優。両手にはお茶の道具と少しのお菓子を抱えている。「えへへ~、疲れたときのためにお茶用意してきましたよ~。休憩もしながら探検しましょう~♪」
六人そろってドアの前に立つと、琴美がためらいなくノブを回した。ギギギ…と錆びついた音が響き、扉がゆっくりと開く。
室内は薄暗く、足元から立ちのぼるように埃が舞い上がる。
古い書類や箱が積まれ、かすかなカビ臭ささえ感じる。その光景に真平がげんなりした表情を浮かべる。
「懐中電灯ぐらい持ってこいよ…。うわ、やっぱホコリだらけじゃねえか。」
「ほら、文句言わない! これぞ昭和の香りよ!」
沙羅がマスクを持ってくればよかったと呟き、シャオは「パォ~、変な空気です~!」と笑いながら目をぱちぱち。
勇馬は壁に立てかけられた段ボールのラベルを読もうと近づく。
「昭和○○年…行事記録? どうやら学校の古い資料が入った箱ですね。」
奥へ進むと、段ボールや木箱が乱雑に積まれ、さらに不気味さが増す。
そのとき、勇馬が何かに気づいて足を止めた。箱の角から、半分かすれて「MSX」と書かれた文字がちらりと見える。「…これ、見てください。『MSX』って書いてあります。」
「え!? MSXって、昭和末期に流行ったパソコンだよね!?」琴美が目を輝かせ、真平は呆れ顔で「また昭和か…」と嘆くが、やっぱり興味はあるらしく、すぐにダンボールを手伝って運び出す。
「重いな…。中にパソコン本体が入ってるのか?」
「きゃっ、埃が…」
「パォ~! どんな形なんですか~?」
「えへへ~、早く開けましょうよ~♪」
勇馬が丁寧にガムテープをはがすと、中にはキーボード一体型のパソコン本体らしきもの、ケーブル類、さらに数本のゲームカートリッジが収まっていた。
倉庫で起動するのは危険なので、見つけた品々を部室に持ち帰り、埃を拭き取りながら動作テストをすることに。
学校に残されていた古いアナログテレビを探し出し、勇馬がケーブルを接続して電源を入れる。
1.スイッチオン
「お、インジケータが点いたぞ。」
「パォ~! 画面に何か出ますか~?」
「『MSX BASIC Ver.○○』って出てる。すごい、動いた!」
2.カートリッジ挿入
レトロゲームタイトルらしきロゴが表示され、思わず一同が歓声を上げる。
「うわぁ! めちゃくちゃ昭和っぽい音が鳴ってる!」
「意外とこういうのいいわね。シンプルだけど惹かれるわ。」
3.BASIC操作
勇馬が簡単なコードを入力し、画面に「HELLO MSX!」を連続表示 → シャオが「パォ~!」と大喜び。
真平が操作しようとするも、キー配置が慣れずに戸惑う。「なんだこのキー… Escキーとかないんだな。」
MSXが無事起動したことに感動したメンバー。とくに琴美は大興奮で、早速新企画を宣言。
「これは文化祭で“昭和レトロパソコン体験コーナー”をやるしかないでしょ! BASICのプログラムをみんなに打ち込んでもらって、ゲームも遊んでもらうの!」
「本気かよ…。でも、まぁ面白そうだな。」
「私もデザインやポスターづくりなら手伝うわ。」
「僕がメインでプログラミングしますね。マイコンBASICマガジンも参考になるはずです。」
「パォ~、私、キャラクターイラストを描きたいです~!」
「えへへ~、じゃあ私は効果音やBGM方面をお手伝いしますね~♪」
部室は新たな盛り上がりを見せ、誰もが昭和パソコン(MSX)の可能性に胸を弾ませる。
MSXで一旦ひと段落…と思いきや、琴美の目は再び倉庫の方向を見つめる。
「ねぇ、あの倉庫にはまだ開けてない箱がたくさんあったのよ。絶対にまだ何か眠ってるわ!」
「またかよ…。ま、仕方ないか。こうなったらとことん付き合うさ。」
「埃対策はちゃんとしましょうね。マスクとか手袋、忘れずに。」
「パォ~! もう一度探検しますか! わくわく!」
「えへへ~、じゃあお茶の用意しておきますね~♪」
「僕は新しいケーブルや周辺機器が見つかればいいなと思います。」
雑談しながらも、メンバーはにやりと笑う。MSXという一大発見から、また別の昭和遺産を見つける可能性がある――日ノ本文化部の“昭和への好奇心”は、とどまるところを知らない。




