エースの意地 vs チームの決断!
【4回表】
文化部が4-2とリードを広げたまま迎えた4回表。
しかし、ここにきて異変が――
2打席連続でヒットを打たれる。
「パォォォ……うぅ……」
シャオがマウンドでフラついている。
「シャオ!? 大丈夫か!?」
「パォォ……大丈夫、シャオはエースだから……!」
「いや、もう動きが明らかにおかしいぞ!?」
そう、シャオはこの決勝戦が今日4試合目の登板。
しかも、先ほどのサッカー部の“足の暴力”により、体力をゴリゴリに削られていた。
キャッチャーの真平が駆け寄る。
「シャオ、お前……もう限界だろ。ここは交代しろ。」
「パォォ……嫌だ!! わたしが投げる!!」
「でも、足がフラついてるじゃん!」
「わたし、文化部のエース!最後まで投げる!!!」
「いやいや、これは無理してるって!!」
シャオ、まさかのピッチャー交代拒否。
しかし――
「おい、マジでやばいって!!」
審判「試合を続行できますか?」
「パォォォ……うぅ……」
明らかに疲れがピークに達している。
「シャオ……本当にこのまま続けるつもり?」
「パォォ!! わたしが投げるの!!」
「いやいやいや、どう考えてもスタミナ切れてるでしょ!?」
「シャオ、プライド高すぎる……」
ここで、博美が冷静に口を開く。
「ふむ。無理を押して結果を出せるのならば、それも一つの選択肢ね。」
「博美先輩!? なんでそんな冷静なんですか!?」
「でも、負ける確率が高くなるなら、それはチームにとっての不利益。私は最適解を求める主義よ。」
「つまり、シャオは交代した方がいい、ってこと?」
「ええ。」
シャオ、めちゃくちゃ不満そう。
「パォォ……! でも、でも!! わたし……投げたい!!!」
「シャオ……わかるよ。お前がどれだけ頑張ってきたか。」
「パォ……」
「でもな、お前がバテバテでボールが甘くなったら、さらに打たれるぞ。」
「……!!」
「ここは勇退して勝利をつかもうぜ」
「パォォ………!」
「お前がエースなのは、誰も疑ってないさ。」
「……」
「文化部のために、頼む。」
シャオ、悔しそうに――
「……パォォォ……わかった……でも、勝ってね!!」
「もちろんだ!!」
こうして、ついにピッチャー交代決定!!
マウンドに立とうとした真平を、琴美が制した。
「待って、真平。ここは私に任せて!」
「は? 琴美、お前がピッチャーやるのか!?」
琴美は得意げに腕まくりをしながら答える。
「実はね、私……秘かに投手としての練習をしてきたのよ!」
「……え?いつ?」
「昨日の夜、家の庭で3球くらい!」
「それ完全に素人じゃん!!」
しかし琴美は自信満々にマウンドへ。
「キャッチャーは沙羅!お願い!」
「え、あたしキャッチャー!?まあいいけどさぁ……。」
沙羅がしぶしぶキャッチャーの装備をつけながら叫ぶ。
「おい琴美!変な球投げたら許さないからな!」
「安心して!伝説の魔球を見せてあげるわ!!」
「伝説って言葉の安売りすんな!!」
琴美、謎の動きで投球フォームに入る。
「いくわよ――これが昭和の名作、『巨人の星』で見た魔球フォームよ!!」
「明らかに変!!」
琴美は足を高々と振り上げ、大げさなフォームで投球!!
「それぇぇぇぇっ!!!」
スコンッ……
ボールは地面に落ちて、そのまま転がっていった。
「投げれてないぞ!!?」
審判「ボール!」
「ちょっと琴美!!真面目にやれ!!」
「いまのは予行練習よ!!本番はこれからよ!!」
仕切り直しで二球目――
「くらえぇぇっ!文化部究極奥義、『琴美スーパースライダー』!!」
投げた瞬間、ボールは勢いよく……
「うぎゃあああ!!」
キャッチャー沙羅のマスク直撃!!
「ちょっ……あんた何してんのよ!!!」
「ふむ……魔球は難しいわね……」
「それただの暴投だからね!?」
サッカー部ベンチは大爆笑。
「おいおい、なんだあの投手は!?ギャグ枠か?」
「あの文化部の女、勝手に自滅してくれてるぞ!」
サッカー部バッター、ニヤつきながら次の球を待つ。
「よし、次も頼むぜ、文化部の珍投手!」
琴美、ちょっとムッとして再び投球!!
「それぇぇ!!今度こそ真の魔球よ!!」
しかし、投球はど真ん中の棒球!!
「げぇぇぇ!!打たれた!!!」
しかも、ピッチャー琴美の真正面へ猛スピードの打球が飛ぶ!!
「ぎゃあああああ!!!」
琴美、驚異的な反射神経でキャッチ――ではなく、
反射的にしゃがみ込み、ボールをギリギリ回避。
「なに避けてんだよ!!!」
ボールはそのままセンター方向へ抜けるヒットに。
「シャオなら捕れたぞ!!」
サッカー部、ホームに二人帰って同点!!
ランナー2塁となった瞬間――
サードからシャオが勢いよく駆け出した!
「パォォォ!!!琴美先輩、やっぱり私が投げるぅぅ!!!」
「シャオ!?もう限界でしょ!?戻りなさい!!」
「いやだ!!琴美先輩が投げてたら負ける!!」
「そりゃそうだけど!!」
審判「ちょっと!?交代するなら早く決めて!!」
シャオ、必死にアピール。
「パォォォ!!!マウンド返してぇぇぇ!!」
真平と博美が慌ててシャオを抑える。
「落ち着けシャオ!!お前はもう限界だ!」
「ふむ、気迫だけは見事ね……。」
そんな混乱するマウンド上、突然博美が指示を出す。
「ふむ。こうなったら……沙羅と琴美のポジションを交代ね。」
「えっ!?何言ってんですか!?」
「琴美は制球がダメすぎるわ。でも沙羅ならキャッチャーの肩を生かして投げられるでしょう?」
「……あ、なるほど。」
琴美はキャッチャーへ。沙羅がピッチャーマウンドへ。
「さあ、あたしが締めるわよ!!」
沙羅、鉄板キャッチの腕力を生かしてマウンドに登場!
沙羅、ボールを握りしめると叫ぶ。
「ウチの店で培った鉄板仕込みの剛速球、くらいやがれ!!」
「どんな仕込みだよ!?」
沙羅、勢いよく投球!!
「ストライク!!!」
「おおっ!?」
まさかのシャオ並みの豪速球!?
「沙羅先輩、ピッチャー向きだったの!?」
沙羅、次も投球!!
「ストライクツー!!!」
「くそっ……速い!!これ、文化部のピッチャーじゃねぇ!!」
サッカー部、焦り始める。
沙羅、最後の一球を全力で投げ込む――!!
「磯貝亭名物、キャベツミキサー・ストレートだぁぁぁ!!!」
「技名ださい!!!」
「ストライクスリー!!アウトォォォォォ!!!」
沙羅の鉄板仕込みの豪速球で、次の打者をセカンドゴロからのダブルプレーでまさかの大ピンチを切り抜けた!!!




