さぁページをめくりたまえ
週末の倉庫探索で発掘した 昭和の遺産 が、文化部の部室に勢揃いしていた。
机の上には 電子手帳やLSIゲーム、電子ブロック、レトロパソコンPC-6001など、昭和の技術の結晶が並ぶ。
そして、琴美の手には―― ゲームブックの山。
「みんなぁ!! 今日は ゲームブックの素晴らしさ を語るわよ!!」
琴美は 勢いよく立ち上がり、目をキラキラさせながら宣言した。
その熱量に、沙羅があきれ顔で腕を組む。
「はいはい、また 昭和布教タイム ね。」
「パォ~! ゲームブック とは 何か ぜひ知りたいです~!」シャオは興味津々。
「えへへ~、 読むゲーム ってどんな感じなんでしょうか~?」美優もほんわかした笑顔で聞いている。
「まあ、せっかく見つけたんだから やってみるのもアリ だな。」真平は机に肘をついて話を聞く体勢。
「僕も どういう仕組み か気になりますね。」勇馬は眼鏡をクイッと直した。
「よし!! じゃあ、 ゲームブックとは何か まず説明するわ!!」
琴美の ゲームブック講座 開幕!
琴美は 『ファイティング・ファンタジー』シリーズ の一冊を掲げた。
「まず、ゲームブックは 『選択肢』 によって物語が変わる小説 なの!!」
「例えば、この本には 『あなたは森に立っている。右の道に進むなら52ページ、左の道なら120ページ』 って書いてあるのよ!」
「パォ~!? つまり プレイヤーが選択 して進めるんですね!」
「そうよ! だから ゲーム機がなくてもRPGができる ってわけ!」
琴美は 興奮気味に ページをパラパラとめくる。
「さらに! 戦闘だってできるの!! サイコロを振って 敵の体力を削る っていうシステムもあるのよ!」
「えへへ~、 サイコロバトル もあるんですね~♪」
「そう!! だから 本の中で冒険できる ってのが ゲームブックの醍醐味 よ!!」
「でもさ、それって 失敗したらどうなるの?」沙羅が冷静に突っ込む。
「そりゃあ バッドエンド になるわよ!!」
「ってことは 死んだら最初からやり直し なのか?」真平が少し驚いた顔をする。
「もちろん! でも、 読者の選択 によって 完全に違うストーリー を楽しめるのが最高なのよ!!」
「パォ~! 無限に遊べる本 ですね~!!」
「そういうこと!! 昔のゲーマーは これでRPG気分を味わってた のよ!!」
「へぇ~、でも どこに行くか で物語が変わるのって面白いわね。」沙羅も少し興味を持ち始めた。
「でしょ!? しかも サイコロ次第で戦闘が白熱する から、運も大事なのよ!」琴美は 得意げに 本を開き、ページをめくる。
「それじゃあ、せっかくだし みんなプレイ してみない?」
琴美の提案にみんな賛同しそれぞれがゲームブックを手に取る。
真平→火吹山の魔法使い
沙羅→運命の森
シャオ→地獄の館
美優→バルサスの要塞
勇馬→サソリ沼の迷路
「みんな最初なんだから戦闘と運だめしは成功したことでいいわ」
「それじゃチートで無双じゃん」真平が意見するが、「甘いわね、それでクリア出来たらたいしたもんよ」琴美には妙な自身があった。
真平は火吹山の魔法使い手に取り
「さて、俺は 火吹山 に乗り込むわけか……」
本を開くと、さっそく 怪しげな洞窟 が目の前に広がる。
「 西に進む か、 東に進む か……うーん、こういう時は 西 だな。」
ページをめくると、そこには――
『ゴブリンが居眠りしている 運だめしをせよ』
「おいおい、さっそく運試しかよ!それにしてもクセのある挿絵だな」
「味があっていいでしょ、それ成功したことでいいわ」
しかし、琴美は ニヤリ と笑う。
「ふふ…… 火吹山 の真の恐怖は、こんなもんじゃないわよ。」
運命の森に挑戦中の沙羅は「私の冒険は魔法使いの塔からだわ…… え~~~いきなり買い物?ねぇこれ全部持ってることにしちゃダメ?」
「それはダメよ!金貨30枚から選んで」
「ふむ、名前とフーリングで選ぶか…」
沙羅は本をじっくり読み、慎重に選択肢を選んでいく。
「 西に進む か、 東に進む か…… 」
『助けを求める声がきこえる!』
「助けとくか、えっなんもなし…握手して終わり…えっ泥棒!はっ!」
沙羅は感情移入してハマりだしている。
「ふっふっふ…… 森の恐怖 はまだまだよ♪」琴美が楽しげに微笑む。
「パォ~!?おっかない絵です~!」地獄の館の挿絵に引き気味に読み始める。
最初のページを開くと、さっそく 不気味な館の扉 が目の前に――。
「えっと…… ノッカーを叩く か 家の周りを調べる か…… う~ん。」
シャオは悩んだ末、ノッカーを選ぶ。
『絵を調べる か そのまま主人を待つか』
「う~~~ん絵を調べてみましょう…絵がしゃべりましたホラー展開 です~~!!」
「ふっ、 地獄の館 はそんなに甘くないわよ?」琴美の不敵な笑みに、シャオは怯えながら震えていた。
「キャーーーーーーーーーーー!!!」バルサスの要塞をプレイ中の美優が突然悲鳴をあげた。
「どしたの?」「おっお化け…」真平がひろいあげページを確認すると画面の中央に首だけのモンスターが
「うわっこれは引くな…」「なによ!」琴美が確認すると「あぁ~ガンジーね、バルサスの要塞きっての難関よ」
その時「パォ~~~~~~~~~~~~~」とシャオの悲鳴があがる、「今度はおまえか」真平がページを確認すると迫力あるゾンビの挿絵。
「ふふふ……やっぱり 昭和のゲームブック の挿絵は リアルな恐怖 を描いてるのよねぇ~♪」
琴美は 満足げに 頷きながら、美優とシャオの慌てふためく様子を眺めていた。
「パォ~~~!! ゾンビ 近すぎます~~!!」
「…… ガンジー って、なんだか怖いですね~……。」美優はページをそっと閉じ、怯えたように微笑んでいる。
「いやいや、 ただの本 なんだから、そんな怖がることないだろ?」真平が冷静に言うが、琴美はすぐに指を立てて訂正する。
「甘いわね、真平!! ゲームブックの恐怖 は 想像力 で倍増するのよ!!」
「パォ~~~!? 想像力の恐怖 ですかぁ~~!!」シャオはページを開くのが怖くなり、机の上にそっと置いた。




