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作戦会議



 〜その日の晩 愛角一皐家〜

 5人の有志が七畳一間に集った。その者たち…


ひとつ、『クーポン券の現金化(ザ・クーポン)』 「愛角(うすみ)一皐(かずさ)

ふたつ、『カメラ写りが悪い(ルージスカメラ)』  「欠重(かかさね)十瑠(みちる)

みっつ、『手アイロンがすごい(ルフカリニキ)』 「透鏡(すけみら)百真(はくま)

よっつ、『究極の冷え性アンチャー・ルナゾーア』    「白青赤(しらおか)千夜梨(ちより)

いつつ、『鳥の目(ヴォルデ・ツェロ)』       「龍冥寺(りゅうめいじ)万城(まんじょう)



「それで、やりてぇことは分かる。だが、どーするつもりだ?」


 口火を切ったのは十瑠だった。


「確かに、私達の目の前で…その」


 一瞬口をつぐんだ千夜梨に万城は何かを悟ったのか声をかけた。


「構わないよ」


「その、目の前で、5人の中で1番の力自慢の万城君が負けた…ちゃんとした作戦がないと、何も変わらないと思う」


「うん、僕も同感だね。でも、なんで夜に集合の合図を僕たちに送ったのか… 何か考えがあっての事だろ? リーダー」


 百真の目はまっすぐと俺を見ていた。


「あぁ、一応な。そしてそれをするにはみんなの意見とみんなの能力(ちから)が必要なんだ」


「ん? 能力…?」


 俺の言葉に一同首を傾けた。


「水を差すようで悪いが俺らの能力じゃ到底、風を操る金丸には勝てないと思うんだが…」


 俺はその言葉を待ったましたと言わんばかりにニヤリと笑った。


()()が知将、愛角一皐の魅せどころってやつさ」


 得意げに俺は頭を指でトントンと突いた。


「じゃあその知将ってもんの考えを聞こうじゃないか」


「まず、1番大切なのは金丸を誰が倒すのか。それは…」


「それは…?」


「俺だ」


「…は? 今は冗談を言ってる場合じゃねぇよ一皐!」


 一同は俺に疑いの目を向けている。


「冗談じゃぁない! ただ俺が勝つためには場所が大事になってくる」


「場所? 専用フィールドじゃないの?」


「あぁ、正直あそこでやっちゃあ誰も勝てねぇ」


「確かに… と、なればどこで?」


 急に体中の穴という穴から汗が吹き出してきた。緊張感がえぐい。なぜならここが今回の作戦の重要点だからだ!


「金丸に勝つための条件がある。

 1つは金丸が空を飛べないこと。空にいられては俺らじゃ手も足も出ねぇ。だから空が飛べない、いや、飛べる空がない、つまり天井のある室内で戦う事。それも低い天井。

 2つ目は俺の能力が存分に発揮できる所。つまり『金』がたくさんある事だ。

 そして3つ目、俺らにこれらの条件が当てはまる戦場の決定権が与えられること」


「なるほど、確かにそこまで好都合なら勝てるかも…! でもそんな場所があるの?」


「1つだけあるんだよ。そう、【金庫】って場所が!」


「金庫!?」


「俺の作戦はこうだ。金丸商事の莫大な財産が保管されている『金丸信用金庫』の最重要部の金庫部分に侵入する。騒ぎを聞いた金丸はただの強盗じゃなくて挑戦者だと思うだろう。随分と無礼な奴だってな。それに金庫の金が全てじゃなくても、大金には変わりない。警備員が一切機能しなくなれば金丸も動くだろう。そうすれば戦場の決定権はこっちになる!

そこで俺と金丸は一騎打ちになる。そして、勝つ!」


「そんなにうまくいくかな…?」


 4人は少し不安な気持ちもあったが戦わずに負けるよりはマシだと考えた。


「その道中、お前らの能力が必要になる!」


「私たちの…能力?」


「あぁ、1人ずつ説明しよう。お前らにしてほしい役割を…


十瑠、お前はカメラを操れ!  「は?」


百真、お前は熱を炎のように使え!  「え?」


千夜梨、お前は冷えを氷のように使え!  「はい?」


万城、お前は警備の把握といつもの怪力! 「あぁ」


 んな感じで、頼む!」


 俺は誠意を込めて手を合わせて膝をつけて頭を深く下げてお願いした。


「いや頼むって、無理でしょ!」


「俺らの能力、そんな便利なもんじゃねぇよ」


 案の定というか何というか、まぁ想定内の反応だ。


「いーや、大丈夫だ。今度はその説明をしよう

 まず、能力には大きく分けて二種類ある。それは、『自分を変化させる能力』と『他者を変化させる能力』。

自分を変化させる能力ってのは、百真の手アイロンだったり千夜梨の冷え性だったり万城の目だったり、そういった自分の体に影響する能力だ。この手の能力者は発想次第では無限の使い道がある。だからお前ら、特に百真と千夜梨はより強力な使い方ができるようになれ!」


「そ、そんなうまくいくかな…?」


 俺はふと十瑠の方を見た。十瑠は、遠くを見つめていた。


「十瑠…お前は…」


「いいよ、俺は警備員と戦う時に前線に立つ」


「お前には1番大事な役割がある」


「は? 俺の能力は何ににも使えないゴミ能力だ! カメラ写りが悪いとか何のメリットもない!」


「十瑠、お前の能力はそんなんじゃない」


「!? テメェ、俺の能力は俺が1番に分かっている!」


 ヒートアップする十瑠を3人は静かに見ていた。


「違う! お前の能力は… 『カメラを操る』能力だ」


「え、違う。違ぇよ!」


「違くない。

 ()()()()な能力は悪い形で力が現れる。俺の能力は不真面目だと一万円分のクーポン券が全部一円玉になって出てくる! これは他者を変化させる能力の特徴! お前も同じだ…」


「同じ、だと?」


「あぁ、お前は最初“カメラ写りが悪い”ということが続き、自分がその手の能力者だと思ったのかもしれない。だが! お前はそれからその能力を試していない。()()()に、能力を使ってねぇだろ?」


「そ、それは」


「良いな? 十瑠、お前にしかできない仕事がある」


 十瑠は下を向いていた。これまで十数年の能力に対しての嫌悪感。それが自分の()()()()が原因だったとは…。しかし、彼は前向きだった。


「オーケー! やってみっか!」


 親指を突き立てた十瑠の満面の笑みを月光が魅せた、満月の晩のことだった。

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