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夢を買う



 〜力自慢大会から数日後 金丸商事にて〜

 

「チッ、くだらん。くだらねぇよ」


 いかにもな金と銀で装飾された背が2mほどの玉座に座す男、金丸商事社長「金丸(かなまる)億兆(おくよし)」。

薄暗い部屋には一つの小窓から指す一筋の月光が魅える。


「力自慢大会…応募者は後を絶たないが、どいつもこいつも雑魚ばかり。これでは()()がいつまで経っても進まねぇ」


 頭をかきむしり、膝を爪を立ててかく金丸。


「しかし、本当に()()をなさるつもりで?」


 この社長室にいる時は執事の大崎が唯一の話し相手であり、良き理解者である。


「当たり前だ、大崎。それとも何か文句があるのか?」


 機嫌の悪い金丸は大崎を睨みつけて言う。


「いえ、そう言うつもりは… ただ…」


「ただ…、なんだ?」


「…国を、支配するなんてとても… 現実的では」


 “国の支配” それは、金丸の『夢』


「クフフ、そうだろう。現実的じゃないって気持ちはよく分かる。だが、それを現実にするのが俺みたいな金持ちってもんさ。大崎…もう一度教えやろう。その()()を…」



「 力自慢大会の本当の目的。多額の賞金に能力バトルと名を冠することで優秀な能力者を集める。名の通りの「能力(ちから)自慢大会」さ。

この平和な世界じゃバトル能力は使えねぇ。だからこの大会を開くことで活き場が出来る。そこで集った能力者で武装組織をつくる…

この国の経済にウチも大きく関わっている。金に武力を手に入れた俺は、これまで以上に国に干渉できる。…国を支配できる…!」


 金丸は高々にその理想を語った。大崎は、その理想を一切否定してはならなかった。


「…なのに!!! …そうだ…!」


 社長室に金丸の声が響く。次いで何かを思いついたように不意に立ち上がった。


「どうかなさいましたか?」


「クフフ、良いことを思いついた。明日、いや時間が必要だ。決行は明後日にしよう」


「な、何をなさるつもりで…?」


「…そうとなれば、大崎! お前は明日仕事がある!」


「は、はい。しかし何を!?」


「…町を買うぞ。俺の夢への第一歩だ」


 暗黒の部屋が魅せる一筋の月光が、金丸億兆の不敵な笑みを照らす。



 〜翌日早朝 一皐達の高校 一皐達の教室〜


 朝のチャイムが鳴る。教室の扉が開く。いつものように先生が教卓に立つ。ホームルームが始まる。


   いつもの学校生活…。 いや? 違う…


     なんだ…?   この胸騒ぎ


 ギシギシと扉の鳴く声がした。見覚えのある1人の男性が入ってくる。「大崎(おおざき)黄正(おうしょう)」という名。


「金丸億兆の執事が何故ここに!?」


「今日は皆様にお伝えしたいことがあり来ました」


 ホームルームの始まりチャイムと共に大崎は口を開いた。


「皆様方の、この町を我が金丸商事が()()ことにしました」


「!?」


「この町は我が社長、金丸億兆様の夢を叶える第一歩として選ばれました。そこで、皆様方には明後日の0時までにこの町を出て行ってもらいます。それまでに()へ出なかった、つまりこの町に残っている『人』『物』等々は全て金丸億兆の私有物となります」


「「「は!? どういうことだよ!」」」


 クラスのみんなが騒ぐ。俺にはまだ、理解がよくできていない。


「た・だ・し! 1つだけ町を守る方法があります」


「え…? な、なんだよ! おしえてくれ!」


 僅かに魅せた希望は、やがて絶望へと変わる。


「それは、金丸億兆様と能力バトルをし勝利することです」


「…むりだ、不可能だ…」


 万城のことを知っていたクラスメイトの顔は全員曇っていた。


「ですから、簡単に言いますと皆さんには明日中にこの町から出て行ってもらいます。それが嫌なら金丸様と戦う。そのことを伝えに来た所存でございます」


「そ、そんなこと誰が許して…!」


「国とは…もう話をつけています」


「な、なに!?」


「アナタ方、貧乏人には大変苦しいことでしょうが…もう決まったこと、アレコレ言われてないでくださいね」


 空気が凍った。あんなにも温厚そうな、誠実そうな紳士が、俺らを冷たい目で見下している。


「そ、そんな…」


 支援金などは出ない。人口約8万人が一斉に引越しを余儀なくされる。金丸億兆と戦い勝つのもほぼ不可能。こんな理不尽が、罷り通るわけ…

みんなの心に絶望の渦が巻く。


 ブブッ、と4()()のスマートフォンのバイブレーションが鳴る。画面を見るとそこには「集合」の鶴の一声。

 そしてそれに応える、4人(みんな)のは回答(こたえ)は1つだった。


       「「「「了解」」」」


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