あいさつ
「ただいまー」
二年前の誕生日に貰った青いスニーカーを雑に脱ぎ捨てると玄関からすぐ右のリビングに駆け込んだ。
大机の上に丁寧に置いてある広告チラシを挟んだ新聞紙を手に持つと、今度は2階の自分の部屋へと急いだ。
自室の勉強机に新聞紙だけを放り投げると広告チラシを白いカーペットの上に広げ、一枚一枚確認を始めた。
「 1、2、3… おっ!?ラッキー500円! 」
その広告チラシのうちクーポン券だけを切り離すと、そのクーポン券に手をかざした。
【面取り】
そう唱えるとあたりは一瞬光に包まれた。『牛丼チェーン店麻沼屋!牛スジ丼500円クーポン』と書かれたクーポン券はその一瞬で500円の硬貨へと変わっていた。他のクーポン券も同様、全てのクーポン券が現金へと変わっていた。
「…7…60。今日は1760円か! 大漁大漁。お小遣いゲット!」
俺の名前は愛角一皐。17歳で普通の高校二年生。
人の数だけ超能力が存在するこの世界で俺は
『クーポン券を現金化する能力』
を、授かった。
ちなみにその逆も可能。滅多に使わないけどね…
そして俺はこの能力を使って、毎日学校から帰宅したら広告チラシのクーポン券を現金にしてお小遣いを手に入れている。手に入る金額はまちまちだけど、それもガチャ要素!みたいに楽しんでいる…
え?炎を操ったり風を巻き起こしたり重力変えたり?
ないない。人の数だけ能力あんだから、全部が全部、君たちがバトル漫画とかでみる能力じゃないんだ。
もっとも俺は自分の能力はアタリだと思っている。
だってそうだろ?
『能力バトル』なんて起きない普通の世界で、炎なんかよりよっぽどクーポン券の能力の方が使えると思うな!
…いや、割とマジで!
そんな俺の物語が、翌朝、始まることになる…