エピローグ③
ルナを助けたことで世界にどんな変化が訪れたなんて分からない。
当然だ。俺は神様じゃないんだから。
それでも笑うルナやマリアを見て、助けてよかったと思う。
空は青い。雲は白い。虫が鳴き、鳥が羽ばたく。
俺にとってはただ当たり前の風景。
だが白波の騎士はその当たり前を愛おしいと感じていた。
ああ、そうか。本当に救われたかったのはアイツなのか。
俺のしてしまったことが許せなくて、でも裁いてくれる人も許してくれる人もいない。
途方もない罪悪感が心に沈殿したまま生きていく。
それはきっと底なし沼にはまっているような感覚だろう。
もう安心してほしい。お前は確かに救われたよ。
あの二人は笑っている。
必ずマリアの妹も見つけてあの笑顔の輪に入れてやる。
そう決意した途端、白波の残滓が笑ったように消えた気がした。
立ち止まって青空を見上げた。
「本当にありがとう。じゃあな」
傷つくのが怖いカイン・バル・ソルデン。
傷つけるのが怖いカイン・バル・ソルデン。
そんなお前が傷つきながら戦い続けて救った世界だ。
なら俺も覚悟を決めないといけないな。
「どうしたのカイン?」
突然立ち止まった俺を心配そうに見上げたマリアへ首を振る。
「いや、何でもない。それで次はどこにいくんだっけ?」
「はい! ルナの村へ二人を招待します!」
「だ、そうよ。私もそれがいいと思うわ。聞いた感じだと拝海者の教えが広まっている漁村みたいだもの、もしかすると妹の情報があるかもしれない。もっとも──」
「天使教のやつらが先回りして待ち伏せしているかもしれない、か」
マリアが首を縦に振る。
俺たちは名実ともに世界最大の宗教と敵対した。これからは逃亡生活だろう。
でも不思議と悲観はしなかった。
だって世界はまだ終わっていないのだから。
足を踏み出す。
その先には未来が広がっているだろう。




