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白波の騎士物語~滅ぼした世界を救う~  作者: 555
第三章 白波の騎士
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3-8 終わらない明日へ③

 血とはヴァンピレスたちにとって霊的な命、あるいはもっと根源的なもの。

 終世教は血を介して西の地ブラドオルに墜ちた血星──ヴァンピレスを生み出した「悪意ある血塊」の意思に触れようとした。その試行錯誤で副次的に生まれたものの一つが魔術「血濡れ火」である。


 そういった経緯から血濡れ火の炎は出血者の本質や強い意志が反映されるような効果があった。

 無力への怒りと明日への道を願う白波であれば破壊力。

 怒りと呪いに満ちた終世教の怪人たちであれば呪詛。

 そしてカインはというと──


「”血濡れ火”」


 白炎は昼光に負けそうなほど淡い白光を放ちながらもその勢いを増して重力場に広がり、全てを呑み込む超重力場が次第にその力を失っていく。

 アリアンロルデは呻き、だがすぐに激昂した。


「奇蹟の抹消……だと……ふざけるな!」


 天使教にとって悪夢のような力だ。

 それをヴァンピレスが持っている。

 そんなこと許せるはずもない。


「貴様はここで殺す! 貴様はこの世にいてはならないものだ」

「……いちいち人類の代表面していてうざってぇ」


 この世にいてはならないだとか。

 そういう「人類社会全部を見てます守ってます」という言い草がカインは気に入らなかった。

 ましてやそれを理由にマリアを、ルナを傷つけるなど。


「殺すだの、封印するだのそういうのはてめぇらが自分と違うものを認められねぇだけじゃねえか。

 手を取り合うこともできない無能が上から目線でごちゃごちゃ言うな」


 自分たちこそは世界の中心と考え、自分は正義の側であるという価値観。

 なんという傲慢な考えだろう。

 この世には友人でも鞭で叩かなければならない人間がいるというのに手を取り合える立場にいる人間がそれを放棄している。あまつさえそれが正義だと?


「反吐が出る」


 カインには怒りが湧いた。

 元を正せばアリアンロルデも世界終幕の原因の一つだ。

 よって容赦は必要ない。


血器(ブラッド)塗装(コーティング)


 白炎が剣に、鎧に全身に纏わりつく。

 その魔剣で残った重力場を斬り殺すとアリアンロルデへ向かって吶喊した。

 火だるまの姿と風を切る音が魔獣の咆哮のような不吉な音をたて恐怖を煽る。


 奇蹟を封じられたアリアンロルデとて予備の対策がないわけではない。

 懐から小さな石膏の像を出すと地面に放り投げた。

 そしてただ一言告げる。


「起きろ守護像(ガーゴイル)


 すると小さな白い像は瞬く間に巨大化し、起き上がった。

 石膏でできているにも拘らず筋肉隆々の像はまるで生きもののように動きだした。

 大きさはカインの二倍強。蝙蝠の翼、生殖器のない肉体、そして恐ろしき怪物の顔はカインを見下ろして唸り声を上げた。

 カインが懐へ走り出し──それよりも早くガーゴイルが拳を振り下ろした。

 巨体に似合わぬ迅さにカインは反応できなかったのか剛拳を受ける。

 空気が震えるほどの衝撃が走った。


「軽い」


 なんてことないというようにカインはびくともしない。

 反応できなかったのではない。する必要がなかったのだ。

 そうアリアンロルデが気付いた時にはガーゴイルの首が落ちていた。

 白騎士はそのままガーゴイルの脇を通り抜けてアリアンロルデへ接近し──


「馬鹿め」


 直後、白騎士は後ろから両肩を掴まれる。

 カインが視線を背後に向けるとそこには首なしのガーゴイルが肩を掴んでいた。

 石像は命を吹き込まれても石像だ。首を吹き飛ばしただけでは死にはしない。

 カインは抜け出そうと抵抗する。しかし万力のような力がガーゴイルの両手にかかっており力づくでは抜け出せなかった。引きずろうにも巨体は重く引きずることは難しい。


「ほう、どうやらその炎。熱はないようだな?」


 ガーゴイルの両手に焦げ一つつかないことを目ざとく見抜くとアリアンロルデは攻略法(ころしかた)を変えた。


「奇蹟が効かぬというならば魔術で殺してやる──"霜の柱"」


 空中の水分が凝集し、凍結し、丸太のような一本の氷柱を形成した。

 先が鋭く尖ったそれが勢いよくカインへと突き刺さる。


「それも効かねえよ……ゴホッ!」


 カインの炎は魔術すらも弾いた。

 否、正確には突き刺しても思ったように刺さらなかったという状態だ。

 まるで粘土に突き刺したように奥まで刺さらなかったのだ。

 効いてはいる。想像よりも遥かに通じない。


 ──なんだこれは。

 一瞬のうちにアリアンロルデは敵の正体を考える。

 まず強度の類ではないことは明らかだ。奇蹟の無効化、魔術の軽減……いやガーゴイルの拳も効いていなかった。

 もしや──ダメージ軽減。


「概念防御か!?」


 ”破壊”、あるいは”暴力”という概念に通じる現象(もの)に対する防御。

 それが形になったものがあの白い炎の正体だとアリアンロルデは看破した。


 概念防御は”聖なる盾”のような単なる障壁とは異なる高位の守りだ。

 攻略しようにも連戦で消耗したアリアンロルデには手札が少ない。

 だが”血”を介しているのであれば方法はある。


「"──神聖なる蒼き吐息をここに。

 其は清浄なる微風となり、全ての大気に満ち、

 雨となって全ての土と水に沁みとおる。

 認めよ。この地はすでに主の領土なり。この満天下に蕃神の居場所無し。

 崇めよ。汝は既にこの地にいる。

 主にまつろわぬならば汝に如何なる力も認めない"」


 アリアンロルデは次の手に映る。


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